◇◇◇
昼下がり。赫燕の天幕は、荒々しい熱気で満ちていた。床に敷かれた麻の上に幹部たちが車座になって陣取っている。
彼らが興じているのは、もちろん賭博。金銭や財宝を賭けて、互いの虚勢と運とを試す、この軍の日常的な光景。
「おい、牙門! また、イカサマしやがったな!」
「なんだと! 証拠もねえのに、喚くんじゃねえ!」
牙門と迅が今にも掴みかからんばかりの勢いで、言い争っている。
「どっちもどっちだろ」
その横では、朱飛が面倒くさそうに口を開き、酒を呷る。対照的に、子睿は扇子で口元を隠し、その瞳だけを細めて楽しげに微笑んでいる。
牙門と迅の言い争いも、朱飛の無関心も、子睿の悪趣味な微笑みも、全てはいつものこと。これこそが赫燕軍。
「……相変わらずですね」
手に持った地図の土埃を払いながら、誰にともなく小さく呟く。玉蓮は、その喧騒から少し離れた場所、天幕の隅で地図の整理を進めていた。広げられた地図の上には、これから進むべき道のり、敵の陣地、そして潜在的な危険地帯が細かく書き込まれている。
昼下がり。赫燕の天幕は、荒々しい熱気で満ちていた。床に敷かれた麻の上に幹部たちが車座になって陣取っている。
彼らが興じているのは、もちろん賭博。金銭や財宝を賭けて、互いの虚勢と運とを試す、この軍の日常的な光景。
「おい、牙門! また、イカサマしやがったな!」
「なんだと! 証拠もねえのに、喚くんじゃねえ!」
牙門と迅が今にも掴みかからんばかりの勢いで、言い争っている。
「どっちもどっちだろ」
その横では、朱飛が面倒くさそうに口を開き、酒を呷る。対照的に、子睿は扇子で口元を隠し、その瞳だけを細めて楽しげに微笑んでいる。
牙門と迅の言い争いも、朱飛の無関心も、子睿の悪趣味な微笑みも、全てはいつものこと。これこそが赫燕軍。
「……相変わらずですね」
手に持った地図の土埃を払いながら、誰にともなく小さく呟く。玉蓮は、その喧騒から少し離れた場所、天幕の隅で地図の整理を進めていた。広げられた地図の上には、これから進むべき道のり、敵の陣地、そして潜在的な危険地帯が細かく書き込まれている。

