◇◇◇ 赫燕 ◇◇◇
◇
天幕の中は、不思議なほどの静寂に包まれていた。遠くでかすかに聞こえる風の音だけが、世界の存在を教えてくれるかのようだった。
赫燕が、重い瞼をゆっくりと開く。最初に感じたのは、自らの胸の上にある柔らかな重みと微かな温もり。見れば、そこには玉蓮の安らかな寝顔があった。
彼女の頬が胸の上にあり、赫燕が呼吸するその動きに合わせて小さな頭が上下している。そして、その白い指先は、己が常に首から下げている、二つの紫水晶にそっと触れていた。
赫燕は、ただ黙ってその光景を見つめた。
彼女のあどけない寝顔。長い睫毛が、白い頬に影を落とし、わずかに開かれた唇からは、穏やかな寝息が聞こえる。
昨夜、自らの闇に引きずり込み、激しく求めた女と、同一人物とは思えないほどの、無垢な姿だった。あの情熱的な瞳も、苦しげに歪んだ表情も、今はどこにもない。ただ、安らかな寝息を繰り返す、純粋な魂がそこにあった。
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天幕の中は、不思議なほどの静寂に包まれていた。遠くでかすかに聞こえる風の音だけが、世界の存在を教えてくれるかのようだった。
赫燕が、重い瞼をゆっくりと開く。最初に感じたのは、自らの胸の上にある柔らかな重みと微かな温もり。見れば、そこには玉蓮の安らかな寝顔があった。
彼女の頬が胸の上にあり、赫燕が呼吸するその動きに合わせて小さな頭が上下している。そして、その白い指先は、己が常に首から下げている、二つの紫水晶にそっと触れていた。
赫燕は、ただ黙ってその光景を見つめた。
彼女のあどけない寝顔。長い睫毛が、白い頬に影を落とし、わずかに開かれた唇からは、穏やかな寝息が聞こえる。
昨夜、自らの闇に引きずり込み、激しく求めた女と、同一人物とは思えないほどの、無垢な姿だった。あの情熱的な瞳も、苦しげに歪んだ表情も、今はどこにもない。ただ、安らかな寝息を繰り返す、純粋な魂がそこにあった。

