復讐姫と二人の英雄 —殺戮将軍と天才軍師の執着。その天命の盤で美しく狂い咲く—

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 赫燕(かくえん)軍の紫紺(しこん)に金の飛龍を配した旗の向こう、広い平原を隔てた並走路上に、藍に白い『劉』の旗が風を裂いて(ひるがえ)る。遠目にも、あの家の気配は一目でわかる。

 会談の場へ向かう道中、その異様さは際立っていた。

 片側には、奪い取った敵国の武具を己風に仕立て直し、思い思いの装飾を施した、派手で、しかし実戦的な甲冑(かっちゅう)を纏う赫燕軍。

 獣の皮を肩にかけ、その体からは汗と土、そして渇いた血の匂いが混じり合って立ち上る。聞こえてくるのは、不揃いな足音と野卑な笑い声、そして不規則に打ち鳴らされる猛々しい金属音。

 対する向こう側には、磨き上げられ、寸分の違いなく統一された意匠(いしょう)甲冑(かっちゅう)を纏い、一糸乱れぬ規律で進む、劉永(りゅうえい)が率いる劉義(りゅうぎ)直属軍。そこから聞こえるのは、大地を等間隔で踏みしめる統率の取れた行軍の音と、拍子を刻むように重なる硬質な金属音だけだった。

 玉蓮は、赫燕の馬のすぐ後ろに付き従いながら、その二つの全く異なる「白楊(はくよう)軍」の間にいた。かつて自分がいたはずの世界。劉永率いる、光の下を歩む軍の整然とした姿。その行進を見るたびに、胸の奥に、忘れていたはずの何かが(うず)いた。

 だが、すぐ隣からは、赫燕軍の何ものにも縛られない、剥き出しの生命力が匂い立つ。その匂いを吸い込むと、不謹慎にも血が騒いだ。心音は彼らの不揃いな足拍子に同調しようと高鳴る。

 光と闇、そのどちらにも属せないまま、二つの軍勢の狭間にいる。