◇◇◇
夕闇が辺りを覆い始める頃、外で風が唸りを上げ始め、嵐の到来を告げていた。雨を含んだ湿った土の匂いが、赫燕の天幕の中にも立ち込めている。
赫燕と玉蓮の二人の目の前には、大きな地図。そして、赫燕が広げられた地図の一点を、指でとんと叩く。
「玉蓮。この城を兵をほとんど失わず手に入れる方法がある。わかるか?」
玉蓮は、劉義の教えを思い出しながら、慎重に策を巡らせる。
「……兵糧攻めにし、内部からの降伏を待つのが、最も被害が少ないかと存じます」
「劉義のじじいに教わった正攻法を聞きに呼んだんじゃねえぞ。そのやり方で、奪えるかよ」
赫燕は、心底つまらなそうに、ふっと息を漏らした。その侮蔑的な息遣いに、玉蓮の奥歯が、ぎり、と鳴った。布越しに懐の鳥に触れかけて、そのまま拳を握りしめる。
「お前は本当にあいつそっくりだな。頭かてえっつーか」
「先生をそんな風に言われるのは、心外です」
彼女は一度、強く目を閉じ、浮かび上がる師の顔を振り払って、目の前の男の呼吸を真似るように、ゆっくりと息を吐いた。
夕闇が辺りを覆い始める頃、外で風が唸りを上げ始め、嵐の到来を告げていた。雨を含んだ湿った土の匂いが、赫燕の天幕の中にも立ち込めている。
赫燕と玉蓮の二人の目の前には、大きな地図。そして、赫燕が広げられた地図の一点を、指でとんと叩く。
「玉蓮。この城を兵をほとんど失わず手に入れる方法がある。わかるか?」
玉蓮は、劉義の教えを思い出しながら、慎重に策を巡らせる。
「……兵糧攻めにし、内部からの降伏を待つのが、最も被害が少ないかと存じます」
「劉義のじじいに教わった正攻法を聞きに呼んだんじゃねえぞ。そのやり方で、奪えるかよ」
赫燕は、心底つまらなそうに、ふっと息を漏らした。その侮蔑的な息遣いに、玉蓮の奥歯が、ぎり、と鳴った。布越しに懐の鳥に触れかけて、そのまま拳を握りしめる。
「お前は本当にあいつそっくりだな。頭かてえっつーか」
「先生をそんな風に言われるのは、心外です」
彼女は一度、強く目を閉じ、浮かび上がる師の顔を振り払って、目の前の男の呼吸を真似るように、ゆっくりと息を吐いた。

