◇◇◇ 朱飛 ◇◇◇

朱飛が、彼女を天幕へと送り届けている間も、玉蓮は口を開くことなく、朱飛に寄り添うように歩いていた。

天幕の入り口で、そっと玉蓮の肩から手を離せば、玉蓮は振り返ることなく天幕の中へと消えていく。

残された朱飛は、夜空を見上げ、消え去った(あるじ)の、あの深淵なる闇を思う。そして、今しがた天幕に消えた、姫の姿を。光を求めるどころか、より深い闇へと、自ら飛び込もうとしている。まるで、互いを焼き尽くすことだけを宿命づけられた、二つの炎。

月が一瞬、厚い雲にさえぎられ、闇がすべてを覆い尽くした。