闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。

 拒絶の言葉とは裏腹に、その腕は玉蓮を逃がそうとはしない。命じる唇が、次の瞬間には玉蓮の全てを塞いでいる。思考が追いつかない。熱い舌が口内を蹂躙(じゅうりん)する感覚だけが、鮮烈な現実として脳を焼き尽くしていく。

「あっ……や、ぁ」

 赫燕の体は、己の言葉を裏切るように、玉蓮を寝台へと押し倒す。衣の下から滑り込んだ指が、玉蓮の肌を這い、熱い痕を残していく。

 玉蓮の喉からは、か細い(あえ)ぎが漏れ、彼の熱い吐息が首筋を撫でるたびに、全身が粟立つ。身体は、正直に、そして愚かなほど素直に、その熱を受け入れる準備を始めてしまう。

 つい先ほどまで受け入れていたその熱い体躯。再び受け入れれば、蜜を求める花のように開いていく。

「……玉蓮……は、」

 赫燕の熱が玉蓮の芯を捉え、互いの境界が溶け合うたびに、抗うことのできない悦びが貫いた。赫燕の荒い息遣いが耳元をくすぐり、熱い指先が肌を這う。そのたびに、玉蓮の身体はさらに熱を帯び、意識は朦朧(もうろう)としていく。

「玉蓮……ぎょく、れん」

 その低い声が玉蓮の心の臓に深く染み渡る。優しい声色で名前を呼ぶくせに、その瞳は、深く昏い光を宿している。彼に向けて手を伸ばしたいのに、大きなその手で押さえつけられる。

 赫燕の唇が、何度も何度も玉蓮の白い首筋を這い、吐息と共にその肌に鮮やかな跡を残していく。首筋を熱い舌がなぞり、甘く噛まれるたびに、玉蓮の体は震え、吐息が漏れた。

「……くな……っ」

 (あえ)ぎに混じって、懇願するような、命令するような、途切れた言葉が耳元で響いた。

(今……)

 赫燕の熱い眼差(まなざ)しが玉蓮の瞳を捉え、互いの呼吸が混じり合う。彼の重みが玉蓮の上にのしかかり、熱い雫が玉蓮の肌を滑り落ちる。それは赫燕の汗なのか、それとも玉蓮の涙なのか、もはや区別がつかなかった。