朱飛はまっすぐに玉蓮の方へ歩み寄り、その頭にこつんと自身の指をぶつける。

「いたい」

そして、そのまま何の躊躇(ちゅうちょ)もなく玉蓮の隣に腰を下ろした。玉蓮は、朱飛の指が当たった額を撫でる。

「迅に八つ当たりをするな。何を怒っている」

周囲の闇に溶け込むような朱飛の静かな声。玉蓮は顔を背けて、頬をさらに膨らませ、地面の小石を弄ぶ。

何を怒っているのか、何がそんなに苛立たしいのか、自分でもわからないのだ。でも、心が落ち着かなくて、忙しなくて、そのままにはどうしてもできない。

(あの男が、まるで王のように振る舞うからだ。だから——)

血に塗れた敵将の顔も、込み上げてきた酸っぱい匂いも、響き渡る悲鳴も、全てが玉蓮にとっては、あまりにも大きなことなのに。あの男は少しも意に介していない。

「……なんでもありません」

「……そうか。まだ、子供だったな」

「子供ではありません。十六になりました」

「十分子供だろ」

「違います!」

ふ、と朱飛が笑みをこぼす。

朱飛の笑みから逃れるように、玉蓮は膝を抱える腕にぐっと力を込めた。耳の縁が、じんと熱くなる。地面の小石の数を数えるふりをして、彼の視線から必死に顔を隠した。