挑発的な刹の言葉に、牙門と迅が額に青筋を立てている。子睿が口元に笑みを浮かべ、朱飛だけが静かな瞳を焚き火に向けていた。

「刹、やめとけ。お前が(あお)ってどうする」

朱飛の声は、普段よりもさらに抑揚がなかった。

「なんだよ、朱飛だって女に困ってないじゃん」

「え、いや、俺は別に」

刹に言い返されて、すぐさま静かになる朱飛。その言い合いに、やれやれとでも言いたげに子睿(しえい)が首を横に振る。

「いいですか。皆さんは、所詮、似たり寄ったり。目くそ鼻くそです」

子睿の容赦ない言葉に、牙門(がもん)が「ひでえな」と嘆く。

「お頭は特別なのですよ。うちの大王様でさえもお頭の才だけでなく、その見目に惚れ込んでるという噂ですからね。だから、うちは特別な軍なのです」

子睿の言葉を聞いて、その場にいた全員が、いまだ女たちに囲まれている赫燕(かくえん)に視線を向けた。

「まあ、あれこそ精悍(せいかん)な顔立ちってやつだからなー。女が放っておかねーわ」

迅の言葉に、玉蓮は、ぎゅっと唇を噛み、眉間に深い(しわ)を刻んだ。そして、再び石を投げる。

「玉蓮! おまえっ、この」

朱飛が小さくため息をついて、ゆっくりと立ち上がり、表情を変えることなく、玉蓮が迅に向かって投げた次の石を寸前で掴み取った。

「あっ!」

玉蓮は、はっとして、視線を彷徨(さまよ)わせる。