暗がりに座り込んだ玉蓮は、膝を抱えた。どれほど頭を振っても、赫燕(かくえん)(まと)わりつく女たちの声だけが耳に届く。

玉蓮は、地面の小石を手当たり次第に拾い上げ、遠くの栗色の髪に向かって投げつけた。

「いて、いて! 何すんだ玉蓮、お前! 石を投げんな!」

(じん)が遠くから叫ぶ。その横で、牙門(がもん)がガハハと大きな声で笑い、迅を指差した。

「お前の栗みてーな色の髪は、いい的だな」

「お前の坊主頭じゃ、石も跳ね返っちまうからな」

「このやろォ! 迅、てめえ!」

再び始まった牙門と迅の小競り合い。この男たちは本当に声が大きいのだ。どれだけ距離をとっても、耳に届く、よくとおる声。

(せつ)が大袈裟にため息をついて、玉蓮に視線を投げた。

「玉蓮、こいつらがうるさくなるだけじゃん。何してんだよ!」

「そうだ! 俺じゃなくて、(せつ)の金髪に投げればいいだろー」

迅の言葉に、刹の金色の髪がぴくりと揺れる。

「玉蓮は、可愛い顔の俺には投げないって」

「はあ!?」

それまで言い合っていた二人の声が、まるで雷鳴のように響き渡る。そんな様子もお構いなしに、刹は悪戯っぽく笑いながら、酒を口に運ぶと、ふふん、と鼻を鳴らす。

「お頭だけじゃない、俺にだって女は寄ってくるんだよ。お前らと違ってな」

「なんだとぉ!」