下卑(げび)た口笛の音がどこかから聞こえ、品定めするような囁き声がさざ波のように広がるが、その視線の奥には、彼女が何者であるかを探るような、獣の警戒心もまた光っているようだった。

玉蓮がその無数の視線に射抜かれ、立ち尽くしていると、すっと一人の男が隣に立った。音も、気配もなく。

「……姫さんか」

低く、響きのある声が鼓膜を震わせた。夜風の匂いを帯びた男は、その髪の半分を固く編み上げ、半分を風に遊ばせている。

無表情な顔からは、一切の感情が読み取れない。だが、その瞳は夜の湖のように静かで深く、周囲の獣じみた男たちとは明らかに、異質だということだけはわかった。

そして、左の耳朶(みみたぶ)には、白楊(はくよう)国では見かけない意匠(いしょう)を施した古びた銀の耳飾りが一つ、鈍い光を放っていた。

朱飛(しゅひ)だ。お頭が待っている」

男はそれだけを告げると、迷うことなく(きびす)を返す。

朱飛(しゅひ)が歩みを進める道は、まるで巨大な岩を避けて流れる川のように、自然と開けていく。粗暴な男たちは、彼にだけは畏怖(いふ)の目を向け、道を譲った。

夕闇の中、彼女はただ、その広い背中だけを見つめて進んだ。