◇
城門を抜けると、世界の色彩が変わった。
整然とした石畳の道は、やがて轍の刻まれた土の道となり、赫燕軍の屯所が近づくにつれ、空気は血と鉄の香りを帯びていく。
辿り着いた先、紫紺地に金の飛龍の旗がいくつも翻るそこは、軍の駐屯地というより、野獣の群れが蠢く巣のようだった。
規則も規律もない。けたたましい酒盛りの声と乾いた賭博の札の音。もうもうと立ち上る土埃と男たちの汗、そして決して消えることのない微かな血の臭いとが混じり合う。
あちこちで兵士たちが笑い声を上げながら武器の手入れに興じ、その顔に刻まれた深い傷跡と、獲物を探す狼のような瞳が、見る者に声なき威圧をかけてくる。
その荒々しい獣たちの群れの中に、玉蓮はただ静かに立っていた。
薄紫の衣を纏った自分が、この土埃に塗れた世界で、ひどく浮き上がっているのがわかった。無数の視線が、まるで粘り気のある手のように、衣の上から肌の輪郭をなぞっていく。
城門を抜けると、世界の色彩が変わった。
整然とした石畳の道は、やがて轍の刻まれた土の道となり、赫燕軍の屯所が近づくにつれ、空気は血と鉄の香りを帯びていく。
辿り着いた先、紫紺地に金の飛龍の旗がいくつも翻るそこは、軍の駐屯地というより、野獣の群れが蠢く巣のようだった。
規則も規律もない。けたたましい酒盛りの声と乾いた賭博の札の音。もうもうと立ち上る土埃と男たちの汗、そして決して消えることのない微かな血の臭いとが混じり合う。
あちこちで兵士たちが笑い声を上げながら武器の手入れに興じ、その顔に刻まれた深い傷跡と、獲物を探す狼のような瞳が、見る者に声なき威圧をかけてくる。
その荒々しい獣たちの群れの中に、玉蓮はただ静かに立っていた。
薄紫の衣を纏った自分が、この土埃に塗れた世界で、ひどく浮き上がっているのがわかった。無数の視線が、まるで粘り気のある手のように、衣の上から肌の輪郭をなぞっていく。

