◇◇◇
数年が過ぎた。白楊の都、雛許にある劉家の屋敷で、玉蓮は、かつてないほど温かく安らかな日々を送っていた。
窓の外には、手入れの行き届いた美しい庭園が広がる。木々は季節の移ろいと共にその色合いを繊細に変え、玉蓮の目を楽しませた。春には若葉が萌え、夏には深緑が目に眩しく、秋には錦のような紅葉が庭を彩り、そして冬には雪が世界を白く染める。
それらすべてが、玉蓮にとっては初めて心から享受できる、真の安らぎの風景だった。
玉蓮の腹部はふっくらと大きく膨らんでいる。もうすぐ新しい命が誕生するのだ。そのお腹を、劉永が慈しむように、そして愛おしそうにそっと撫でる。その体温は腹の奥に届き、いまも胸に残る二つの冷たい石の記憶を、柔らかな陽だまりへと変えていった。
「もうすぐだね」
劉永の声は、喜びと期待に満ちていた。
「はい」
玉蓮は深く頷いた。その口元に浮かぶ微笑みは、心からの、偽りのない輝きに満ちている。劉永は、玉蓮の肩をそっと抱きながら、何かを思い出したように微かに息を吐いた。
「……玉蓮、これを」
劉永が、一つの古い木箱を玉蓮の前に置いた。その木箱は、長い時を経たかのように表面に艶が生まれ、角は丸く研磨されていた。
「これは……?」
玉蓮は、箱を見つめた。劉永は木箱に視線を落とし、柔らかく微笑んだ。
「朱飛殿の数少ない遺品の中から見つかったものだ……君のためのものだろう」
劉永の言葉に、玉蓮の心の臓が小さく跳ねた。
蓋を上げると、そこにあったのは、一羽の木の鳥。
玉蓮は息を呑んだ。半身は姉が彫ったあの古い木の色。そして、もう半身は、朱飛が彫ったであろう、新しい木の色。砕けた木片を継ぎ合わせ、懸命に空を飛ぼうとする一羽の鳥。姉が与えてくれた光と、朱飛が不器用に守ってくれた闇の中の優しさ。その両方を、その小さな身に宿していた。
数年が過ぎた。白楊の都、雛許にある劉家の屋敷で、玉蓮は、かつてないほど温かく安らかな日々を送っていた。
窓の外には、手入れの行き届いた美しい庭園が広がる。木々は季節の移ろいと共にその色合いを繊細に変え、玉蓮の目を楽しませた。春には若葉が萌え、夏には深緑が目に眩しく、秋には錦のような紅葉が庭を彩り、そして冬には雪が世界を白く染める。
それらすべてが、玉蓮にとっては初めて心から享受できる、真の安らぎの風景だった。
玉蓮の腹部はふっくらと大きく膨らんでいる。もうすぐ新しい命が誕生するのだ。そのお腹を、劉永が慈しむように、そして愛おしそうにそっと撫でる。その体温は腹の奥に届き、いまも胸に残る二つの冷たい石の記憶を、柔らかな陽だまりへと変えていった。
「もうすぐだね」
劉永の声は、喜びと期待に満ちていた。
「はい」
玉蓮は深く頷いた。その口元に浮かぶ微笑みは、心からの、偽りのない輝きに満ちている。劉永は、玉蓮の肩をそっと抱きながら、何かを思い出したように微かに息を吐いた。
「……玉蓮、これを」
劉永が、一つの古い木箱を玉蓮の前に置いた。その木箱は、長い時を経たかのように表面に艶が生まれ、角は丸く研磨されていた。
「これは……?」
玉蓮は、箱を見つめた。劉永は木箱に視線を落とし、柔らかく微笑んだ。
「朱飛殿の数少ない遺品の中から見つかったものだ……君のためのものだろう」
劉永の言葉に、玉蓮の心の臓が小さく跳ねた。
蓋を上げると、そこにあったのは、一羽の木の鳥。
玉蓮は息を呑んだ。半身は姉が彫ったあの古い木の色。そして、もう半身は、朱飛が彫ったであろう、新しい木の色。砕けた木片を継ぎ合わせ、懸命に空を飛ぼうとする一羽の鳥。姉が与えてくれた光と、朱飛が不器用に守ってくれた闇の中の優しさ。その両方を、その小さな身に宿していた。

