その音は、王都の終わりの合図だった。西の空にはさらなる黒煙が立ち昇り、巨大な炎が、夜空を血の色に染め上げていく。
玉蓮は、血と煙の匂いが充満する街の中、逃げ惑う人の波に、たった一人、逆らうようにして走った。足元では籠や器が転がり、子の泣き声、女の悲鳴、男のうめきが渦のように重なる。誰もが「生」を求めて逃げる中、玉蓮だけが「死」を届けるために王宮へ向かう。
地獄だ。生きたまま焼かれ、踏みつけられ、切り刻まれる地獄。赫燕がその命を賭して口火を切り、崔瑾がその身を投じて守ろうとした地獄。そして、その全ての元凶が、嘲笑いながら待ち受ける蜘蛛の巣へ。
肺が焼け付くように痛い。足に感覚はない。やがて、その視界の先に巨大な影が浮かび上がった。玄済国の王宮。
そこは、外の喧騒が嘘のように、奇妙なほどに静かだった。あれほど厳重だった城門は開け放たれ、守る兵士の姿は一人もない。誰もが我先にと逃げ出したのだろう。空っぽの巨大な檻。
玉蓮は、長い回廊を一人進む。壁に描かれた極彩色の壁画が、炎に照らされ不気味に揺らめき、まるで亡霊のように彼女を見下ろしている。やがて辿り着いた玉座の間にも、人の気配はなかった。主のいない玉座を素通りし、玉蓮はそのさらに奥——最も深い闇が澱む場所へと歩を進めた。
玉蓮は、血と煙の匂いが充満する街の中、逃げ惑う人の波に、たった一人、逆らうようにして走った。足元では籠や器が転がり、子の泣き声、女の悲鳴、男のうめきが渦のように重なる。誰もが「生」を求めて逃げる中、玉蓮だけが「死」を届けるために王宮へ向かう。
地獄だ。生きたまま焼かれ、踏みつけられ、切り刻まれる地獄。赫燕がその命を賭して口火を切り、崔瑾がその身を投じて守ろうとした地獄。そして、その全ての元凶が、嘲笑いながら待ち受ける蜘蛛の巣へ。
肺が焼け付くように痛い。足に感覚はない。やがて、その視界の先に巨大な影が浮かび上がった。玄済国の王宮。
そこは、外の喧騒が嘘のように、奇妙なほどに静かだった。あれほど厳重だった城門は開け放たれ、守る兵士の姿は一人もない。誰もが我先にと逃げ出したのだろう。空っぽの巨大な檻。
玉蓮は、長い回廊を一人進む。壁に描かれた極彩色の壁画が、炎に照らされ不気味に揺らめき、まるで亡霊のように彼女を見下ろしている。やがて辿り着いた玉座の間にも、人の気配はなかった。主のいない玉座を素通りし、玉蓮はそのさらに奥——最も深い闇が澱む場所へと歩を進めた。

