崔瑾の臣たちは玉蓮を背後に守りながら、円陣を組んで出口へと向かう。剣と剣がぶつかり合う甲高い音が室内に満ち、血飛沫が闇の中に舞い上がった。通路の壁には刀傷が刻まれ、床には鮮血が花のように咲き乱れる。
その最も激しい戦場となっている正門の前。ひときわ大きな雄叫びを上げて、敵兵をなぎ倒している男がいた。馬斗琉だ。手首には縄痕が食い込み、拷問を受けた体は傷だらけだ。だが、彼は丸太のような腕で門を押し返し、敵の侵入を一身に食い止めていた。
「——馬斗琉ッ!」
玉蓮の叫び声に、馬斗琉が振り返り、血だらけの顔でニカっと笑った。
「玉蓮様、どうかご無事で! 馬斗琉はこの命を燃やし尽くし、盾となりましょう!」
いつもの豪快な笑い声。だが、その体にはすでに無数の矢と槍が突き刺さっている。
「阿扇、玉蓮様をお連れしろ! 行けッ! 崔瑾様の、光を、絶やすなァァッ!」
「——頼んだ、馬斗琉!」
阿扇が玉蓮の肩を力強く引き寄せ、強引に走らせる。
「玉蓮様、止まらずに!」
「いや! 馬斗琉ッ!!」
「あいつの覚悟を無駄にされるな! 北へ抜けるぞ!」
玉蓮が闇の中へ駆け抜ける背に、馬斗琉の最後の咆哮が響いた。一度だけ振り返った視界の先、燃え上がる炎の中、無数の刃を受けながらも、なお仁王のように立ち尽くす鬼神の姿が見えた。敵兵たちが、その死してなお倒れぬ威容に、恐怖して立ちすくんでいる。
「——ああッ!」
玉蓮は、滲んでいく視界をそのままに、これでもかと目を開いて眼前の敵を切り倒していく。胸が熱い。鼓動が早い。息が切れる。それでも剣を振る。
(——止まるな! 死ぬな! 何一つ——無駄にするな!!)
ある者は腕を斬られ、またある者は腹を刺されながらも、決してひるまない。倒れても、倒れても、彼らは再び立ち上がり、玉蓮の道を開く。
彼らの屍を道として、玉蓮は混乱の極みにある屋敷を脱出した。闇の中、ふと屋敷へ目を向ければ、そこには紅蓮の炎に包まれ、崩落していく邸宅の姿があった。
二人で過ごした桃の木の庭も、書斎に残る白檀の穏やかな残り香も。崔瑾と過ごした日々が、黒煙に呑まれ、灰へと変わっていく。
(——旦那様)
玉蓮は血と涙を拭い、前を向いた。
その最も激しい戦場となっている正門の前。ひときわ大きな雄叫びを上げて、敵兵をなぎ倒している男がいた。馬斗琉だ。手首には縄痕が食い込み、拷問を受けた体は傷だらけだ。だが、彼は丸太のような腕で門を押し返し、敵の侵入を一身に食い止めていた。
「——馬斗琉ッ!」
玉蓮の叫び声に、馬斗琉が振り返り、血だらけの顔でニカっと笑った。
「玉蓮様、どうかご無事で! 馬斗琉はこの命を燃やし尽くし、盾となりましょう!」
いつもの豪快な笑い声。だが、その体にはすでに無数の矢と槍が突き刺さっている。
「阿扇、玉蓮様をお連れしろ! 行けッ! 崔瑾様の、光を、絶やすなァァッ!」
「——頼んだ、馬斗琉!」
阿扇が玉蓮の肩を力強く引き寄せ、強引に走らせる。
「玉蓮様、止まらずに!」
「いや! 馬斗琉ッ!!」
「あいつの覚悟を無駄にされるな! 北へ抜けるぞ!」
玉蓮が闇の中へ駆け抜ける背に、馬斗琉の最後の咆哮が響いた。一度だけ振り返った視界の先、燃え上がる炎の中、無数の刃を受けながらも、なお仁王のように立ち尽くす鬼神の姿が見えた。敵兵たちが、その死してなお倒れぬ威容に、恐怖して立ちすくんでいる。
「——ああッ!」
玉蓮は、滲んでいく視界をそのままに、これでもかと目を開いて眼前の敵を切り倒していく。胸が熱い。鼓動が早い。息が切れる。それでも剣を振る。
(——止まるな! 死ぬな! 何一つ——無駄にするな!!)
ある者は腕を斬られ、またある者は腹を刺されながらも、決してひるまない。倒れても、倒れても、彼らは再び立ち上がり、玉蓮の道を開く。
彼らの屍を道として、玉蓮は混乱の極みにある屋敷を脱出した。闇の中、ふと屋敷へ目を向ければ、そこには紅蓮の炎に包まれ、崩落していく邸宅の姿があった。
二人で過ごした桃の木の庭も、書斎に残る白檀の穏やかな残り香も。崔瑾と過ごした日々が、黒煙に呑まれ、灰へと変わっていく。
(——旦那様)
玉蓮は血と涙を拭い、前を向いた。

