闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。

「ふむ……興味は尽きません。が、教えていただかずとも結構です。この謎解きもまた、愉快なことかと」

 子睿(しえい)は臆することなく、真っ直ぐに赫燕(かくえん)を見つめ返した。赫燕は、静かに笑みを浮かべる。

()りたいもんを()り行く。だが——死ぬかもしんねえぞ」

 赫燕(かくえん)の声が、いつもより一層静かに、強く、その場に落ちる。しかし、子睿(しえい)も、その場にいる側近の誰一人として、眉一つ動かさない。

「どうあっても、お頭についていくだけです。どうせ我々の目的は、一つでしょう」

「そうだぜ、お頭ァ」

「今更、ついてくんなとかナシっすよー」

「お頭がそんなこと言うはずないじゃん! 俺たちのこと大好きですもんね!」

 赫燕(かくえん)は、皆を見回し、そして再び静かに笑った。

「お前たちは、本当に阿呆ばかりだな」

「嬉しいなら、嬉しいって言ってくれても、いいんですよ」

 勝ち誇ったような笑みを向ける朱飛(しゅひ)を睨めば、動じることなく肩をすくめ、赫燕(かくえん)の視線から逃れるように、ふらりとその場を離れていった。


 赫燕(かくえん)は、眼下に広がる焦土(しょうど)と化した大地を、容赦なく踏み荒らしながら進む。緑豊かになるはずだった世界は、今や炎と煙に覆われ、生命の痕跡さえも消え去ろうとしている。その荒れ果てた光景を前に、赫燕(かくえん)の胸に、これまで抱いたことのない奇妙な感情が芽生え始めていた。