闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。

「皆さん、水と食べ物にはご注意を。何が盛られているかわかったものではありません。食料は後方から大量に送られています」

「はいよー!」

 金色の髪を揺らし、(せつ)が無邪気に笑って元気よく手を挙げた。その横では、(じん)牙門(がもん)に顔を向け、悪戯っぽい笑みを浮かべている。

「牙門、だってよ!」

 (じん)は、まるで子供のように口の端を吊り上げて、牙門を指差した。その仕草に、牙門(がもん)はむっとした表情を隠さない。

「なんでお前は、いつも俺だけに言うんだよ! 俺だって城内の食いもんには手をつけてねえだろうが」

「お前は食い意地が張ってるからなー」

「ああん!? お前のとこのが——」

「牙門、うるさい。耳壊れる」

(せつ)、てめえ!」

 牙門(がもん)(せつ)に向かって馬の前足を上げた。(せつ)の馬は、その威嚇をものともせずに、ひらりとかわす。(せつ)は、まるで遊びを楽しむかのように牙門(がもん)の周りを駆け巡り、牙門(がもん)は苛立ちを募らせて追いかける。

 その様子を見て、(じん)が腹を抱えて笑っている。いつもの光景だ。兵士たちは、この三人のやり取りにはすっかり慣れきっていた。彼らにとって、これは日々の息抜きのようなもの。最初は緊張していた新兵たちでさえも、今では笑い声をあげながら彼らの茶番を眺めている。