闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。

 それに気づきながらも、この石を外せない。

 隣に座る崔瑾(さいきん)の、あまりにも清廉(せいれん)な光を浴びれば浴びるほど、自らの胸に抱いた、この(くら)い石の熱が、まるで己の罪の在り処を告げるかのように、じりじりと肌を()いていく。

 玉蓮は、罪を隠すかのように、その胸元にそっと手を添えた。紫水晶の冷たさが、赫燕の熱を呼び覚ます。もう触れていないはずの指先の感覚が、肌の奥で(うず)く。

「……旦那様」

 隣に座る崔瑾(さいきん)を小さく呼べば、その視線がゆっくりとこちらに向けられる。

「人酔いを、したようです……少し、外を歩いてきます」

 意図せずに、言葉が途切れてしまう。喉が詰まって、ほんの少しだけ(あえ)ぐように息をする。

「……わかりました。翠花(スイファ)、供を」

 崔瑾(さいきん)は、ただ、短い言葉で側仕えの翠花(スイファ)に供を命じる。一礼し、その場を後にした玉蓮は、翠花(スイファ)に支えられながら広間を出た。