闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。

 全てが結びついた瞬間、(きら)びやかであったはずの宴の灯りが滲んだ。誰かの笑い声が、急に遠くなる。喉の奥で息が詰まり、指の間から零れた滴が、(ほう)の上で黒く広がる。

 それでも、笑わねばならなかった。今、この場の誰よりも。急速に冷えていく指先を感じながら。

 崔瑾(さいきん)の視線に応えるように、赫燕(かくえん)は、遠くから崔瑾(さいきん)の顔とその隣に座る玉蓮を見て、ただ残酷なまでに愉しげな笑みを浮かべた。そして、ゆっくりと酒杯をまるで勝利を祝うかのように、こちらに向かって掲げてみせる。

「っ——!」

 崔瑾(さいきん)は、杯を口に運ぶ。酒は、もはや味も熱も感じない。ただ、胸の奥にあったはずの、硬い芯のようなものが、音もなく砂のように崩れ落ちていく。

 手の甲に白く浮いた筋が視界に入り、それをどうにか袖の影に隠した。