夕闇が迫る荒野を、崔瑾は無心に馬を駆っていた。疲弊しきった体に鞭を打ち、道を急ぐ。その耳に、地鳴りのような、低く唸る天の音が届く。
「……崔瑾様、これは」
背後から付き従う兵士が声を上げた、その瞬間。頬に、ぽつりと冷たい雫が触れた。
一滴。すぐに二滴。やがてそれは、大地を打つ無数の音へと変わる。
「雨です! 雨が……っ」
ともに走る兵士達から、爆発するような歓喜の声が上がった。見上げれば、天が泣き出したかのように、激しい雨が降り注いでいる。叩きつけるような雨粒が、視界を白く染め上げる。乾ききった大地は瞬く間に水を吸い込んでいく。舞い上がっていた土埃は湿り気に変わり、濡れた草木の匂いが立ちこめる。それは、この国が長らく忘れていた、生命の息吹を感じさせる香りだった。
歓声の中、崔瑾だけが口を結び、天を仰いだ。
今にも倒れそうな体に、雨が冷たく染み渡る。こびりついた返り血が洗い流されていくはずなのに、なぜか心の重さだけが泥のように沈殿していく。水を吸って重くなった衣が肌に張り付き、自由を奪う。馬の足はぬかるみに取られ、速度が落ちていく。
それでも。崔瑾は、馬を走らせ続けた。
「……崔瑾様、これは」
背後から付き従う兵士が声を上げた、その瞬間。頬に、ぽつりと冷たい雫が触れた。
一滴。すぐに二滴。やがてそれは、大地を打つ無数の音へと変わる。
「雨です! 雨が……っ」
ともに走る兵士達から、爆発するような歓喜の声が上がった。見上げれば、天が泣き出したかのように、激しい雨が降り注いでいる。叩きつけるような雨粒が、視界を白く染め上げる。乾ききった大地は瞬く間に水を吸い込んでいく。舞い上がっていた土埃は湿り気に変わり、濡れた草木の匂いが立ちこめる。それは、この国が長らく忘れていた、生命の息吹を感じさせる香りだった。
歓声の中、崔瑾だけが口を結び、天を仰いだ。
今にも倒れそうな体に、雨が冷たく染み渡る。こびりついた返り血が洗い流されていくはずなのに、なぜか心の重さだけが泥のように沈殿していく。水を吸って重くなった衣が肌に張り付き、自由を奪う。馬の足はぬかるみに取られ、速度が落ちていく。
それでも。崔瑾は、馬を走らせ続けた。

