◇◇◇
馬車の窓から、見慣れた景色が近づいてくる。玄済国に贈られる時、罪人のようにこの地を去った時とは違う、華やかな歓迎の行列。城門の外から響く太鼓の音が、皮膚ではなく胸の奥に鈍く響いた。
あの時はなかった花の香りが、やけに鼻につく。まるで過去を隠すための仮面のように。
記憶が——赫燕の肌を焼くような熱、不遜な瞳——それらが、肌の内側をゆっくりと焼いていくような音がする。ジジジ、と。微かに、でも確かに。
ふと、隣に座る夫の穏やかな温もりが肩に触れた。この温かさに、どれほど救われてきたことだろう。
——なのに、なぜ。
それを感じれば感じるほど、白楊の地を踏むごとに、あの男の荒々しい熱だけが、この体を内側から焦がしていく。玉蓮は、その熱を振り切る術もなく、ただ、紫水晶に触れるように胸に手を置いて、静かに目を閉じた。
馬車の窓から、見慣れた景色が近づいてくる。玄済国に贈られる時、罪人のようにこの地を去った時とは違う、華やかな歓迎の行列。城門の外から響く太鼓の音が、皮膚ではなく胸の奥に鈍く響いた。
あの時はなかった花の香りが、やけに鼻につく。まるで過去を隠すための仮面のように。
記憶が——赫燕の肌を焼くような熱、不遜な瞳——それらが、肌の内側をゆっくりと焼いていくような音がする。ジジジ、と。微かに、でも確かに。
ふと、隣に座る夫の穏やかな温もりが肩に触れた。この温かさに、どれほど救われてきたことだろう。
——なのに、なぜ。
それを感じれば感じるほど、白楊の地を踏むごとに、あの男の荒々しい熱だけが、この体を内側から焦がしていく。玉蓮は、その熱を振り切る術もなく、ただ、紫水晶に触れるように胸に手を置いて、静かに目を閉じた。

