闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。

「旦那様はわたくしとの婚姻を、そんなにもお喜びくださっているのね。この顔をお気に召していただいて、何よりです。皆様も美しいけれど、わたくしほどではございませんものね」

「なっ」

「そのような信じがたい噂が出るほどに、旦那様がわたくしを思ってくださっているなんて、存じ上げなかったわ。ああ、早く屋敷に戻って旦那様をお待ちしなくては。皆様、素敵なお話を本当にありがとう。旦那様によくお伝えしますわね」

 玉蓮は、満面の笑みを浮かべ、鈴が鳴るような声で「ねえ、翠花(スイファ)」と呼びかけた。

 その声には、先ほどまでの冷たい響きは微塵もなく、まるで純真な少女のような無邪気さが溢れていた。翠花(スイファ)も翠花で、玉蓮の変化に戸惑うどころか、にっこりと笑みを返している。

「はい、奥様!」

 そんな二人の様子に、周囲の令嬢たちは一瞬、息を呑んだが、阿扇(あせん)はようやく終わったかと、ふう、と息を漏らした。

「玉蓮様、帰りましょ——」

 この場から一刻も早く立ち去りたいという思いが、口から自然とついて出た。