「お前の姉は嫁いだ先で、《《お役目》》も果たさずに死んだんですって」

 玉蓮の部屋に押しかけた腹違いの姉妹たちは、薄く笑いながら言った。

「母上がそう仰っていたの。玄済(げんさい)国の王妃様から、直接、文が届いたのよ。お前に一番に教えてあげようと思って」

「……う、うそだ」

 唇が震えた。叫んだつもりだった。けれど、喉の奥から漏れたのは、自分にさえ聞こえぬほど小さな、しぼんだ音。

 姉は、半月前に真っ赤な婚礼衣装を身にまとい、玄済(げんさい)国の王太子の元へと嫁いだはず。未来を約束された男の元へと嫁いだはずじゃないか。

 立ち上がろうとした足が、床に縫い付けられたように動かない。指先が冷たく、血の気が引いていく。

「……嘘をつくな!」

「嘘ではないわ。まさか、自分の姉がどこに嫁がされたか、まだ知らなかったの?」

 薄暗い部屋に響き渡る、からからと鈴を転がすような笑い声。

 ぐらりと揺らいだ自分の体を支えるように、玉蓮はその冷たい石の床に手をついた。床から這い上がる冷気、壁の隙間から吹き込む風。姉と暮らしてきた日々と同様に、それらが体温を奪っていく。