闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。



 夜更けの書斎では、蝋燭(ろうそく)の灯りだけが、壁の影を揺らしている。玉蓮はそっと扉を開け、茶の香りをかすかに漂わせながら、書斎を進む。

 難しい顔で書状を読んでいた崔瑾(さいきん)は、ふ、と顔を上げ、わずかに目を見開いた。

「玉蓮殿……どうかなさいましたか」

 玉蓮は、静かに彼の前に茶器を置く。

「……旦那様、あまりご無理をなさいませんように」

 崔瑾の唇がわずかに震え、喉が動く。それと同時に、玉蓮の胸に小さな鈍痛が走る。崔瑾が何かを言いかけて、しかし、言葉を見つけられないかのように、ただ黙ってこちらを見つめている。

 その、いつもは静かな湖面のようだった瞳が、今、激しく揺らいでいた。