闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。



 玉蓮と盤を挟んでいた崔瑾(さいきん)の元に、阿扇(あせん)が訪れた。

「崔瑾様」

 阿扇(あせん)はただ音もなく頭を下げた。

阿扇(あせん)、あなたも打ちますか? 玉蓮殿の手はとても面白いのですよ」

 崔瑾はそう言って、玉蓮に目を向けた。玉蓮は、扇で口元を隠しつつも、にこやかに微笑んでいる。

「崔瑾殿は、先ほどからわたくしの手を(かわ)してばかり。わたくしでは、勝つのは難しそうです。阿扇(あせん)、あなたが代わりに——」

「結構です」

 玉蓮の言葉を遮るように、阿扇(あせん)はきっぱりと言い放った。崔瑾が玉蓮に視線を向けるが、そこにはただふわりと微笑む美しい顔があるだけ。

「崔瑾様、ご報告がございます」

 阿扇(あせん)の緑がかった瞳は、崔瑾ただ一人に注がれている。崔瑾は軽く頷き、盤に視線を落とした。

「では、書斎に場所を移しましょう。玉蓮殿、しばし失礼いたします」

 崔瑾がそう言って立ち上がると、阿扇(あせん)は一歩下がって崔瑾の後に続いた。