玉蓮は、僅かに顎を上げ、その場の一切を見下ろすかの如く、傲然と視線を巡らせた。
口元には、薄っすらと嘲弄が浮かび、彼女たちの反応を面白がるかのように、さらに深くその弧を描く。それは、もはや悪戯めいた稚気あるものではなく、獲物を追い詰める捕食者のような、冷酷で研ぎ澄まされたものへと変貌していた。
「旦那様に嫁ぎたいと願う令嬢が多い、とか。仕方ないことですわ。旦那様はこの国の英雄。文武両道に秀で、見目麗しく、そして何よりもあんなにお優しい方ですものね」
阿扇が、小さく「玉蓮様」と呼ぶが、玉蓮は知らん顔。
「ですが、そのようなお話を声高になさるのは、いかがなものかと存じます。旦那様に嫁げなかった事実で、ご自身を貶めるだけ。敗者が何を吠えようと、それは戯言《ざれごと》に過ぎませんもの」
「——なんて人なの!」
一人の令嬢が、たまらず叫び声を上げるも、まるで耳に届いていないかのように、玉蓮は、自らの頬にそっと指を触れ、恍惚とした表情を浮かべた。
「旦那様はわたくしとの婚姻を、そんなにもお喜びくださっているのね。この顔をお気に召していただいて、何よりです。皆様も美しいけれど、わたくしほどではございませんものね」
「なっ」
「そのような信じがたい噂が出るほどに、旦那様がわたくしを思ってくださっているなんて、存じ上げなかったわ。ああ、早く屋敷に戻って旦那様をお待ちしなくては。皆様、素敵なお話を本当にありがとう。旦那様によくお伝えしますわね」
玉蓮は、満面の笑みを浮かべ、鈴が鳴るような声で「ねえ、翠花」と呼びかけた。
その声には、先ほどまでの冷たい響きは微塵もなく、まるで純真な少女のような無邪気さが溢れていた。翠花も翠花で、先ほどまでの怒りはどこへやら、玉蓮の変化に戸惑うどころか、にっこりと頷きを返している。
「はい、奥様!」
そんな二人の様子に、周囲の令嬢たちは一瞬、息を呑んだが、阿扇はようやく終わったかと、ふう、と息を漏らした。
「玉蓮様、帰りましょ——」
この場から一刻も早く立ち去りたいという思いが、口から自然とついて出た。
口元には、薄っすらと嘲弄が浮かび、彼女たちの反応を面白がるかのように、さらに深くその弧を描く。それは、もはや悪戯めいた稚気あるものではなく、獲物を追い詰める捕食者のような、冷酷で研ぎ澄まされたものへと変貌していた。
「旦那様に嫁ぎたいと願う令嬢が多い、とか。仕方ないことですわ。旦那様はこの国の英雄。文武両道に秀で、見目麗しく、そして何よりもあんなにお優しい方ですものね」
阿扇が、小さく「玉蓮様」と呼ぶが、玉蓮は知らん顔。
「ですが、そのようなお話を声高になさるのは、いかがなものかと存じます。旦那様に嫁げなかった事実で、ご自身を貶めるだけ。敗者が何を吠えようと、それは戯言《ざれごと》に過ぎませんもの」
「——なんて人なの!」
一人の令嬢が、たまらず叫び声を上げるも、まるで耳に届いていないかのように、玉蓮は、自らの頬にそっと指を触れ、恍惚とした表情を浮かべた。
「旦那様はわたくしとの婚姻を、そんなにもお喜びくださっているのね。この顔をお気に召していただいて、何よりです。皆様も美しいけれど、わたくしほどではございませんものね」
「なっ」
「そのような信じがたい噂が出るほどに、旦那様がわたくしを思ってくださっているなんて、存じ上げなかったわ。ああ、早く屋敷に戻って旦那様をお待ちしなくては。皆様、素敵なお話を本当にありがとう。旦那様によくお伝えしますわね」
玉蓮は、満面の笑みを浮かべ、鈴が鳴るような声で「ねえ、翠花」と呼びかけた。
その声には、先ほどまでの冷たい響きは微塵もなく、まるで純真な少女のような無邪気さが溢れていた。翠花も翠花で、先ほどまでの怒りはどこへやら、玉蓮の変化に戸惑うどころか、にっこりと頷きを返している。
「はい、奥様!」
そんな二人の様子に、周囲の令嬢たちは一瞬、息を呑んだが、阿扇はようやく終わったかと、ふう、と息を漏らした。
「玉蓮様、帰りましょ——」
この場から一刻も早く立ち去りたいという思いが、口から自然とついて出た。

