「今朝はその豊かな水源から採れた甘い水が手に入ったと侍女が言っておりました。茶を飲みましょう。いい茶葉も手に入れたのです」
その何気ない一言が、それまで張り詰めていた空気をやわらかくほどいていく。
「論じ合いもほどほどにせねば」
「あ、わたくしが」
玉蓮が立ちあがろうとすると、崔瑾はにこやかに首を振った。
「私は、茶を淹れるのが好きなのですよ。よろしければ、お付き合い願えますか」
柔らかく弧を描く唇と細められた瞳。赫燕の、全てを焼き尽くすような熱とは違う、抗いがたい力。心の内に張り付いていた氷の膜が、崩れる音もなく、底からじんわりと温もりに染まり始めた。
——まだ、心を許したわけではない。けれど確かに、何かが、ほんのわずかに動いた。

