「婚姻を結ぶ、と?」
ゆらり、ゆらりと揺れる扇の上、太后の深淵な眼差しが崔瑾を射抜いている。
「は。王の安全、公主の保護のため。そして和睦の揺るぎない証として、王族に連なる崔家の大都督・崔瑾が婚姻を結びまする」
「どの縁談にも首を縦に振らなかったそなたが、な……これまで一度として、王室から持ちかけられた縁談にさえ興味を示さなかった崔瑾殿が、公主を娶るか」
太后の声は、徐々に温度を失っていく。
これまで縁談を断り続けてきたのは、いつ寝首をかかれてもおかしくない立場だからだ。内から、外から狙われる崔家にとって、安易な婚姻は自らの首を絞める縄になりかねない。だが、有力な王族や貴族との断り続ける崔瑾は、そのまま、王家にとっては、御しがたい一族であることの証でもあった。
「……一体何を、狙っている?」
「臣下として、当然に王家の安泰を願っております」
「二心はないと誓えような、崔瑾殿」
太后の瞳が細められる。その目は、人の心の底を見透かすかのような冷徹さを湛えている。
「無論にございます。この婚姻に、もし万が一、王家に対する不遜な意図や、私的な野心が隠されていたなら、この崔瑾、命をもって償う所存です」
崔瑾は頭を深く垂れたまま、淀みなく述べた。
「大都督の正室か……」
太后は独り言のように呟き、再び妖艶に微笑んだ。
「それも良い。崔瑾殿、そなたの覚悟、しかと見届けさせてもらった。では、公主の安全をそなたに託す。くれぐれも抜かりなきようにな」
——通った!
悟られるな、そう思いながらも、前で重ねた拳に力が入る。安堵の息が漏れそうになるのを袖で隠して素早く飲み込んだ。
「太后様、ありがたく。私の首にかけて、公主をお守りするとともに、王に危険が及ばぬように管理いたします。この崔瑾、必ずやその責を全ういたします」
ゆらり、ゆらりと揺れる扇の上、太后の深淵な眼差しが崔瑾を射抜いている。
「は。王の安全、公主の保護のため。そして和睦の揺るぎない証として、王族に連なる崔家の大都督・崔瑾が婚姻を結びまする」
「どの縁談にも首を縦に振らなかったそなたが、な……これまで一度として、王室から持ちかけられた縁談にさえ興味を示さなかった崔瑾殿が、公主を娶るか」
太后の声は、徐々に温度を失っていく。
これまで縁談を断り続けてきたのは、いつ寝首をかかれてもおかしくない立場だからだ。内から、外から狙われる崔家にとって、安易な婚姻は自らの首を絞める縄になりかねない。だが、有力な王族や貴族との断り続ける崔瑾は、そのまま、王家にとっては、御しがたい一族であることの証でもあった。
「……一体何を、狙っている?」
「臣下として、当然に王家の安泰を願っております」
「二心はないと誓えような、崔瑾殿」
太后の瞳が細められる。その目は、人の心の底を見透かすかのような冷徹さを湛えている。
「無論にございます。この婚姻に、もし万が一、王家に対する不遜な意図や、私的な野心が隠されていたなら、この崔瑾、命をもって償う所存です」
崔瑾は頭を深く垂れたまま、淀みなく述べた。
「大都督の正室か……」
太后は独り言のように呟き、再び妖艶に微笑んだ。
「それも良い。崔瑾殿、そなたの覚悟、しかと見届けさせてもらった。では、公主の安全をそなたに託す。くれぐれも抜かりなきようにな」
——通った!
悟られるな、そう思いながらも、前で重ねた拳に力が入る。安堵の息が漏れそうになるのを袖で隠して素早く飲み込んだ。
「太后様、ありがたく。私の首にかけて、公主をお守りするとともに、王に危険が及ばぬように管理いたします。この崔瑾、必ずやその責を全ういたします」

