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扉を開き、書庫に入ると、墨の香りが鼻を抜ける。整然と並べられたそれは、まさに崔瑾という人そのものだった。奥の書棚には、軍の補給・調達記録や人事の異動記録、各地の情勢報告書が整然と並べられている。
玉蓮は、補給記録の中に目を通し始めた。帳簿には納入品の内容と単価、そして納品担当の名が記されている。その中に、異様に安価な兵装が連続して記されている箇所があった。
そこには、同じ名が何度も記されていた。玉蓮は指先でその名をなぞり、次に人事記録へと手を伸ばす。異動・左遷された兵部の官吏たちの中に、その名とつながる者の名前が何人も見つかる。
(この流れ……追われた者たちは、皆、何者かの意向で消されている。やはり周礼が——)
その時だった。書庫の静寂を破るかのように、外から微かな気配が玉蓮の意識を捉えた。玉蓮は素早く、音もなく、手にしていた記録を元の棚へと戻していく。
カタン、と背後でわずかに音がした時には、すでに誰かが立っていた。だが、その時、玉蓮の手に握られていたのは、恋愛を詠った詩集。まるで最初からその本を読んでいたかのように。
「何を、されているのですか」
書庫に響いたのは、凛とした阿扇の声。静かではあるが、その声には一切の揺れがなく、研ぎ澄まされた刃のように鋭い。
玉蓮は、ゆるやかに振り返る。完璧な優雅さを湛えた笑みと共に。あくまでも淑やかに、衣擦れの音さえ立てずに彼の前へと歩み寄る。
「阿扇」
阿扇の瞳は、敵を見定めるときのような鋭さを伴っている。書庫の重苦しい空気が、二人の間に張り詰めていた。
扉を開き、書庫に入ると、墨の香りが鼻を抜ける。整然と並べられたそれは、まさに崔瑾という人そのものだった。奥の書棚には、軍の補給・調達記録や人事の異動記録、各地の情勢報告書が整然と並べられている。
玉蓮は、補給記録の中に目を通し始めた。帳簿には納入品の内容と単価、そして納品担当の名が記されている。その中に、異様に安価な兵装が連続して記されている箇所があった。
そこには、同じ名が何度も記されていた。玉蓮は指先でその名をなぞり、次に人事記録へと手を伸ばす。異動・左遷された兵部の官吏たちの中に、その名とつながる者の名前が何人も見つかる。
(この流れ……追われた者たちは、皆、何者かの意向で消されている。やはり周礼が——)
その時だった。書庫の静寂を破るかのように、外から微かな気配が玉蓮の意識を捉えた。玉蓮は素早く、音もなく、手にしていた記録を元の棚へと戻していく。
カタン、と背後でわずかに音がした時には、すでに誰かが立っていた。だが、その時、玉蓮の手に握られていたのは、恋愛を詠った詩集。まるで最初からその本を読んでいたかのように。
「何を、されているのですか」
書庫に響いたのは、凛とした阿扇の声。静かではあるが、その声には一切の揺れがなく、研ぎ澄まされた刃のように鋭い。
玉蓮は、ゆるやかに振り返る。完璧な優雅さを湛えた笑みと共に。あくまでも淑やかに、衣擦れの音さえ立てずに彼の前へと歩み寄る。
「阿扇」
阿扇の瞳は、敵を見定めるときのような鋭さを伴っている。書庫の重苦しい空気が、二人の間に張り詰めていた。

