闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。



 崔瑾は、その玉座の前で、手始めにある真実を明らかにしようとしていた。朝議が始まり、崔瑾が証拠の書を提示した瞬間、大臣たちの間には緊張と好奇の入り混じった空気が走った。

「周礼の一族が、国境の兵士たちに送られるはずの武具を横領し、代わりに、使い物にならぬ粗悪品を納入していた証拠でございます。このために、どれほどの兵が犬死にさせられたことか。これは国を内側から(むしば)む大罪にございます」

 朝議(ちょうぎ)の間には、驚きと動揺なのか、ざわめきが広がる。周礼は一瞬、その蛇のような顔を引き()らせたが、すぐにいつもの粘つくような笑みを浮かべ、涼しい顔を貼り付けた。

「おや、崔瑾殿。それは人聞きの悪い。戦で兵が死ぬのは当然のこと。この戦乱の世、誰もが承知していることですぞ」

 問題など存在していないかのような軽薄な響き。周礼は崔瑾の視線を避けて、居並ぶ大臣たちに視線を送る。

「粗悪品とは失礼な。武器を新調し、国庫も潤っているではないですか」

「軍のものに手を出したというのか。吏部尚書の権限に兵部が含まれるとでも?」

「私が直接取引などした記録などないでしょう。兵部の張将軍が取引をしているはず。何より、国の高貴な方のご意向でもあるのです」

「何を——」

「この商いが、国を豊かにし、ひいては大王様の御威光を輝かせる一助《いちじょ》ともなり得るのです。もっと広い視野でことを見られることをおすすめしますぞ」

「……崔瑾、周礼は我ら王族のために身を粉にして働いておる。お前は国庫を潤すという考えがどうも足らん。軍に金をつぎ込みおって」

「大王、武器がなければ戦えませぬ」

「王族の権威が薄まれば、それこそ国威に関わるであろう。大都督・崔瑾。大国といえど金は無尽蔵に湧いてくるものではないのだ。金の遣い方は、私と母上に任せよ」

 崔瑾は眉を(ひそ)めた。周礼という蛇の首が、この国の、最も(くら)い闇へと繋がっている。背筋がぞわりと粟立ち、視界の端が微かに揺れる。足元の床が、波打つように重く沈んでいく。