その指先が示した先を見て、玉蓮は眉根を寄せる。彼女のこれまでの学びでは、地の確保を優先する隅や辺が重要とされてきたからだ。それこそが勝利への道だと。
「……先生、ここでは勝てません。すぐに囲まれてしまいます」
玉蓮は素直な疑問を口にした。どう思考を巡らせても、中央の一手は悪手にしか思えない。
「この手は決して勝つための手ではない。地の利を求めるならば、隅や辺が正しい。だがな、玉蓮。周りがどれほど黒い石に囲まれようと。敵の猛攻を受け、四方から火が押し寄せても、この一点が燃え残れば、お前の色は消えない」
「わたくしの、色?」
「そうだ。決して、お前自身に《《負ける》》ことはないのだ」
玉蓮はゆっくりと顔を上げて、劉義の顔を見つめる。盤に向けられた彼の瞳は、まるで何もかもを見透かしているかのようだ。
そして、彼の視線の先を追うようにして、もう一度、盤の中央に視線を戻した。
「……玉蓮には……よく、わかりません」
ただその言葉が口をついて出る。劉義は優しく微笑んで、そして音もなく白石を天元に置く。
「ああ、まだそれで良い。いつかわかる時が来るだろう」
やがて、白石が盤を満たし、黒は消えていく。自らの黒石は、もはやどこにも活路を見出せない。玉蓮は、視線を上げることなく、か細い声で「……ありません」とだけ告げた。
盤上には、天元の一石と、それを守るかのように広がる白石の群れが残されていた。
「……先生、ここでは勝てません。すぐに囲まれてしまいます」
玉蓮は素直な疑問を口にした。どう思考を巡らせても、中央の一手は悪手にしか思えない。
「この手は決して勝つための手ではない。地の利を求めるならば、隅や辺が正しい。だがな、玉蓮。周りがどれほど黒い石に囲まれようと。敵の猛攻を受け、四方から火が押し寄せても、この一点が燃え残れば、お前の色は消えない」
「わたくしの、色?」
「そうだ。決して、お前自身に《《負ける》》ことはないのだ」
玉蓮はゆっくりと顔を上げて、劉義の顔を見つめる。盤に向けられた彼の瞳は、まるで何もかもを見透かしているかのようだ。
そして、彼の視線の先を追うようにして、もう一度、盤の中央に視線を戻した。
「……玉蓮には……よく、わかりません」
ただその言葉が口をついて出る。劉義は優しく微笑んで、そして音もなく白石を天元に置く。
「ああ、まだそれで良い。いつかわかる時が来るだろう」
やがて、白石が盤を満たし、黒は消えていく。自らの黒石は、もはやどこにも活路を見出せない。玉蓮は、視線を上げることなく、か細い声で「……ありません」とだけ告げた。
盤上には、天元の一石と、それを守るかのように広がる白石の群れが残されていた。

