闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。


 牙門(がもん)が勢いよく歩み寄ってくると、ぶっきらぼうに、干し肉の詰まった袋を押し付ける。

「腹が減ったら、戦はできねえからな」

 その無骨な優しさに、玉蓮はただ、こくりと頷く。(せつ)は、玉蓮の肩を強く掴み、「みっともなく死ぬんじゃねえぞ」と大きな目を潤ませながら言った。子睿(しえい)は、静かに「ご武運を」と頭を下げ、(じん)は、やれやれと首を振りながら、

「達者でな。お前がいなくなると、お頭の機嫌をとるのがまた面倒になる」

 そう悪態をつく。それに思わず笑っていると、朱飛(しゅひ)が一人、彼女の前に進み出た。彼は、何も言わない。ただ、その夜の湖のように静かな瞳で、じっと見つめている。その眼差しに、玉蓮は思わず視線を逸らしそうになった。玉蓮に頬に触れようとした手が、触れることなくその肌をなぞるように動く。それに応えるように、頭を傾ければ、痛ましく微笑む朱飛の顔がさらに歪められた。

 そして、部屋の隅で一人酒を飲んでいた赫燕(かくえん)が静かに立ち上がった瞬間、部屋の空気が一変した。彼の前にすっと道ができる。赫燕は、ただ黙って玉蓮の目の前まで歩み寄り、美しく着飾った玉蓮を見つめた。その漆黒の瞳は、決して逸らされることはない。彼の視線が、まるで体の芯を直接掴むかのように、玉蓮を射抜く。