闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。


 崔瑾は短く、鼻で笑った。

「穢れ、ですか。……実に便利な言い訳だ」

「その記録を、書き写してまいりました。こちらを」

 崔瑾は差し出された写しに視線を落とした。

「公式には『焼死』とされています。ですが処刑された宦官が崔王后様を呪っていたとして、当時焼け死んだ者たちは全て『穢れ』として寺へ送っておりました」

 崔瑾の目が、ある箇所に留まった。どう考えても数が合わないのだ。

「……阿扇、ここの人夫の数を見てください。運び出されたはずの遺体の数に対して、人夫が少なすぎる。これでは、亡骸を運ぶどころか、空の荷車を引くのが精一杯のはずだ」

 崔瑾は唇を手で覆った。やはり太后が隠したいのは、偽造の印ではない。あの日、あの場所で、生きた人間がどう死んだか、その一点だ。

「埋葬せずに……す、捨てたというのですか。そんな、そんなことが……人として、そんな」

「それをするのが周礼と太后です。阿扇……(しょう)尚書(しょうしょ)を訪ねてください。周礼が当時、実際に遺体をどこへ運ばせたのか。その『荷車』を追う必要があります。戸部の奥底に眠る、二十年前の裏の記録を。彼ならば、見つけ出せるはずだ」

「……は。ですが崔瑾様、蕭尚書を動かせば、太后派にこちらの動きを悟られる恐れが」

「わかっています。ですが、今は一刻を争う。……彼に伝えてください。『王家の血を引く者として、真実を求める』と」

「……承知いたしました。すぐに動きます」

 夜更け、(ろう)の角に微かな伽羅の残り香が漂った。この香りは後宮の最奥でしか焚かれない——太后(たいこう)の手の者か。

(急がねば)

 崔瑾は机を一度、叩いた。