闇を抱く白菊—天命の盤—復讐姫は、殺戮将軍の腕の中で咲き誇る。

「……褒美は、わたくしですか?」

「そうだ。お前は白楊(はくよう)の華、どうやら月貌華(げつぼうか)らしいからな」

 眉を上げ、目を細めて、不敵に微笑む赫燕(かくえん)

「まあ。龍か鳳凰(ほうおう)かと(うた)われる将軍様にそうおっしゃっていただけるとは、光栄ですわ」

「“英雄”にふさわしい褒美だろう」

「“英雄”?」

 お互いの言葉遊びに、耐えきれずに二人の唇から笑みが溢れていく。

「くだらねえ。言わせておけ。俺は、ただお前が欲しいだけだ」

 そして、ゆっくりと唇が重なっていく。食まれるように何度も何度も繰り返される柔らかな感触。

 最初はそっと触れるだけだった唇が、次第に熱を帯び、深く絡み合っていく。やがて、もどかしさに耐えきれなくなり、形のいい唇を舌でつつけば、赫燕の唇の端が釣り上がる。次の瞬間には、空いた隙間から己の舌がそこに入り込み、湿った音が漏れ、舌が合わさる感触が全身を駆け巡った。

「んん……」

 赫燕の腕が玉蓮の腰に回され、ぐっと抱き寄せられる。玉蓮の腕もまた、赫燕の首に回され、その力強い身体に吸い寄せられるようにしがみついた。

「玉蓮……限界だ」

 無骨な指の背が玉蓮の頬を優しく撫で、深く昏い瞳が玉蓮を真っ直ぐに見つめる。赫燕の指が玉蓮の髪を()き、耳元で囁く。

「動き方は、教えただろ」

 赫燕の吐息と声が耳に触れて、玉蓮の身体を震わせた。赫燕の厚い胸元に手を当てれば、その熱が伝わってくる。美しい顔が不敵に微笑み、耳に声が届く。

「玉蓮」

 貫く熱が容赦無く体温を上げていくから、それに浮かされるように、頭の中も徐々に白くなっていく。思考が溶けて、ただ目の前の男の熱で満たされていく。二人の胸元、紫の石の揺らめきが仄暗い部屋の中で壁に反射して視界が瞬いた。