獰猛な笑みを浮かべて、ゆらりと剣を構え直した。腕をぬるりと返り血が伝っていく。疲労で鉛のように重いはずの体が、最後の炎を燃やすように動く。
玄済兵の容赦ない猛攻を紙一重で捌きながら、敵を屠る。少しずつ手足の感覚は麻痺し始め、剣を握る手は意思に反して小刻みに震える。額からは冷たい汗がとめどなく流れ落ち、視界は霞み、思考は鈍る。もはや自分の意思で動いているという感覚さえ希薄になり、ただ本能と鍛えた肉体が、自動的に動き続けているかのようだった。
次の瞬間。夜風を裂く鋭い音と共に、一本の矢が音もなく忍び寄り、玉蓮の胸元へ吸い込まれるように飛来した。矢を切ろうとした剣が空を切る。
「くっ!」
「玉蓮!!!」
(当たる——!)
——ゴンッ!
胸元で何かが砕け散る、鈍い衝撃が走った。恐る恐る、そこを見れば、懐に忍ばせていた、木の鳥が矢を受け止め、完全に割れていた。
「……あ、姉上、朱飛」
玉蓮は、砕けて割れたその残骸を左手で押さえた。
「ちっ、外れたか。まあ、あとは護衛と女だけだ」
玄済兵の一人が、嘲るように言った。
「おい。もう矢はやめろ。これ以上、顔も身体も傷つけんな。生け捕りだ」
別の兵士が獲物を前にした猟犬のように興奮した声で周りの兵士に告げる。彼らの視線が、玉蓮に集中する。捕らわれれば、恥辱に塗れた未来が待っている。敵の手に堕ちる前に——
「玉蓮、最後まで足掻け。ただ……」
「わかってる」

