胸元で何かが砕け散る、鈍い衝撃が走った。恐る恐る、そこを見れば、懐に忍ばせていた、木の守り鳥が矢を受け止め、無残に砕けていた。
「……あ、姉上」
玉蓮は、砕けて割れたその残骸を左手で押さえた。
「ちっ、外れたか。まあ、あとは護衛と女だけだ」
玄済兵の一人が、嘲るように言った。
「おい。もう矢はやめろ。これ以上、顔も身体も傷つけんな。生け捕りだ」
別の兵士が獲物を前にした猟犬のように興奮した声で周りの兵士に告げる。彼らの視線が、玉蓮に集中する。捕らわれれば、恥辱に塗れた未来が待っている。敵の手に堕ちる前に——
「玉蓮、最後まで足掻け。だが……」
「わかってる」
肩に深々と刺さった矢の痛みは、すでに感覚の彼方へと消え去っていった。剣を握りしめているはずの右手にも、その確かな重みはもはや伝わってこない。視界は濃い霧に覆われたように、もはや影のみを映している。それほどに、死が、目の前にある。
「姉上……」
玉蓮が死を覚悟して、そう呟いた刹那——
「——どけ、雑魚ども」
聞き慣れた低い声が、玄済兵の後方から響き渡った。
振り下ろされる敵兵の剣が、ゆっくりと弧を描く。飛散する血煙が、空中で静止する。その、あまりに緩慢な地獄絵図の中を、ただ一人。違う時間の理で動いているかのように、漆黒の竜巻が凄まじい勢いで駆け抜けていく。
彼が振るうのは、柄頭に龍の彫刻と紫水晶が嵌め込まれた大剣。
それが一閃を放つたびに、風が逆巻くような音が唸り、玄済兵の首が宙を舞い、鮮血が飛び散る。返り血を浴びた紫水晶が、妖しく、美しく煌めいた。まるで、地獄の炎を纏ったように。
あっという間に周りの敵を斬り伏せると、馬が玉蓮の目の前でぴたりと止まった。漆黒の瞳が玉蓮を捉えている。
——赫燕。
「……あ、姉上」
玉蓮は、砕けて割れたその残骸を左手で押さえた。
「ちっ、外れたか。まあ、あとは護衛と女だけだ」
玄済兵の一人が、嘲るように言った。
「おい。もう矢はやめろ。これ以上、顔も身体も傷つけんな。生け捕りだ」
別の兵士が獲物を前にした猟犬のように興奮した声で周りの兵士に告げる。彼らの視線が、玉蓮に集中する。捕らわれれば、恥辱に塗れた未来が待っている。敵の手に堕ちる前に——
「玉蓮、最後まで足掻け。だが……」
「わかってる」
肩に深々と刺さった矢の痛みは、すでに感覚の彼方へと消え去っていった。剣を握りしめているはずの右手にも、その確かな重みはもはや伝わってこない。視界は濃い霧に覆われたように、もはや影のみを映している。それほどに、死が、目の前にある。
「姉上……」
玉蓮が死を覚悟して、そう呟いた刹那——
「——どけ、雑魚ども」
聞き慣れた低い声が、玄済兵の後方から響き渡った。
振り下ろされる敵兵の剣が、ゆっくりと弧を描く。飛散する血煙が、空中で静止する。その、あまりに緩慢な地獄絵図の中を、ただ一人。違う時間の理で動いているかのように、漆黒の竜巻が凄まじい勢いで駆け抜けていく。
彼が振るうのは、柄頭に龍の彫刻と紫水晶が嵌め込まれた大剣。
それが一閃を放つたびに、風が逆巻くような音が唸り、玄済兵の首が宙を舞い、鮮血が飛び散る。返り血を浴びた紫水晶が、妖しく、美しく煌めいた。まるで、地獄の炎を纏ったように。
あっという間に周りの敵を斬り伏せると、馬が玉蓮の目の前でぴたりと止まった。漆黒の瞳が玉蓮を捉えている。
——赫燕。

