あの日から3日程経ち手紙が届いた。『拝啓、森大輝(もりたいき)様。この手紙には私が管理する館への招待状が同封されております。是非来ていただけば恋人にもう一度逢えますよ。来るか来ないかは貴方様のご判断にお任せ致します。貴方を救う人より』という内容だった。この手紙を見てまず、不思議や疑問以上に嬉しさが出てきた。夏華にもう一度逢える。この言葉は再び俺に生きる希望をくれた。すぐにそこに行こうと決意した。
そこから準備をしてその館に行った。館自体は洋館でかなり古そうな見た目だが、その周りにはつるや草などで覆われていた。いかにも訳ありな洋館だ。一瞬戸惑ったが、足を踏み入れた。あの人の言葉を信じて。
館の中はかなり豪華で真新しいものばかりだった。入ると直ぐ目に飛び込んできたのは、天井に吊るされた大きなシャンデリアや入り口の真横にある石像だ。高級ホテルの中みたいで、とても周りをつるや草で覆われていた館の内装だとは思えなかった。
「思い出の館へようこそおいでくださいました。森様。私が此処の主人です。私のことはどうぞご自由にお呼びください」
その男は想像通りの老人だった。それに来てみたは良いものの、男の言葉は胡散くさい。
「本当に死者と再会出来るのか?管理人」
「そうですか、貴方は"管理人"とお呼びになさるのですか。…、ええ、本当ですよ。今までこの館に入られた人達も最初は森様と同じく疑っておりましたが、最後の日には私に感謝を言って下さる人も中には居らっしゃいますので」
そんなことが起こりえるのかと不安だったが、一度足を踏み入れてしまった以上は仕方がなくて、覚悟を決めて足を一歩前に出した。
「…、貴方で最後ですか」
「そうらしいっすね。おーい、こっちすよ!」
制服を着た高校生2人組が居た。女の子が此方に手を振っている。男の子の方はメガネをかけたセンターパートで、インテリイケメンという印象だ。女の子は少し肌が焼けていて、前髪は眉毛の形が分かるくらいには短く、黒髪ボブの元気そうな少女という印象を受けた。
「…、初めまして。森大輝です」
「アタシは鈴木愛菜(すずきまな)っすよ。こっちの無愛想なのは武田幸樹(たけだこうき)先輩っす。よろしくっすね、大輝さん!」
「僕は無愛想なんかじゃない!」
元気そうな少女、愛菜さんは印象通りだった。正直なところこのタイプにはあまり良い思い出がない。こっちが話しかけても無視するけど向こうから話しかけられる時はグイグイと詰めてくる…。
「大輝さん!この人アタシが話しかけてあげてるのに『そうか…。』とか『良かったな…。』としか言わないんすよ!これ聞いてどうっすか!?」
高校生時代の思い出に浸っていると鈴木さんが話しかけてきた。顔を近くに寄せてくるので少し顔を引いた。女子をこんな間近で見る機会はそうそうなかったからだ。
「…、た、武田君は人と喋るのは苦手なんじゃないかな?」
「た、確かに森さんの言うとおりだけど!君に言われたくはない!」
俺はこんな可愛い子を前に緊張して、声が裏返ってしまった。鈴木さんがニヤニヤしながら此方を見てきた。そして彼女が何かを言おうとした瞬間に、武田君が言った。彼の声には少しの動揺があった。
「はぁ!?なんすかそれ!?ーー」
なんか、喧嘩が始まった。しかも俺が苦手な痴話喧嘩の部類だ。付き合っていると断定できたわけではないが、なんとなくそう思った。
その光景で俺は高校生の時の友人のカップルを思い出された。いつも喧嘩ばっかりしているが、互いに俺に話す内容は愚痴という名の惚気話。そんな彼らが憎くてうざかった。この2人からも同じ匂いがしたから、今すぐこの場から逃げたかった。
「どうしたんですか、大輝さん?」
「い、いや、なんでもないよ。あはは…」
そう苦し紛れに答えるので精一杯だった。
「皆さん、お話は済みましたか?」
話を途切らせまいとニコニコしながら管理人が直ぐに聞いてきた。その笑顔は何処か不気味で気持ち悪くて吐き気を催した。
「「はい」」
「うす」
俺らが一斉に答えると先程まで笑っていた管理人が真顔になった。たったそれだけでそれまで楽しげだった雰囲気が一変した。空気が冷たく喉を通らなかった。
「今から貴方達にはあるゲームをしてもらいます」
「どういうゲームなんだ?」
恐る恐る聞いた。こんな館に招待したんだ。死なないと出られないとか、精神崩壊しないと出られないとかそんなのを想像して体が強張み、生唾を飲んだ。
「ゲーム内容は単純です。今日から3日間誰にも殺されないように生き延びて下さい」
思ったより条件が緩くて安堵した。2人も安心したのか笑い合っている。
「ですが、そう簡単ではありません。この館には貴方達を殺すために様々な罠が仕掛けられていますので、気を付けて下さいね。…、因みに誰かを殺した場合は、大切な人と一緒に現世に戻れますよ」
空気が一気にピリついた。大切な人…。夏華…、夏華が戻ってくるのか…。なら、殺ってやる。夏華に会って話したいことが山程有るんだ!さっきの発言で2人も真剣な表情《かお》になった。どうやら殺る決意が出来たみたいだ。
「私に見せてください。貴方達《にんげん》の醜い欲望を!」
管理人は高らかに笑った。その笑い声は人間を弄ぶ悪魔の声に聞こえた。この時はまだこの館の恐ろしさを知らなかった。
そこから準備をしてその館に行った。館自体は洋館でかなり古そうな見た目だが、その周りにはつるや草などで覆われていた。いかにも訳ありな洋館だ。一瞬戸惑ったが、足を踏み入れた。あの人の言葉を信じて。
館の中はかなり豪華で真新しいものばかりだった。入ると直ぐ目に飛び込んできたのは、天井に吊るされた大きなシャンデリアや入り口の真横にある石像だ。高級ホテルの中みたいで、とても周りをつるや草で覆われていた館の内装だとは思えなかった。
「思い出の館へようこそおいでくださいました。森様。私が此処の主人です。私のことはどうぞご自由にお呼びください」
その男は想像通りの老人だった。それに来てみたは良いものの、男の言葉は胡散くさい。
「本当に死者と再会出来るのか?管理人」
「そうですか、貴方は"管理人"とお呼びになさるのですか。…、ええ、本当ですよ。今までこの館に入られた人達も最初は森様と同じく疑っておりましたが、最後の日には私に感謝を言って下さる人も中には居らっしゃいますので」
そんなことが起こりえるのかと不安だったが、一度足を踏み入れてしまった以上は仕方がなくて、覚悟を決めて足を一歩前に出した。
「…、貴方で最後ですか」
「そうらしいっすね。おーい、こっちすよ!」
制服を着た高校生2人組が居た。女の子が此方に手を振っている。男の子の方はメガネをかけたセンターパートで、インテリイケメンという印象だ。女の子は少し肌が焼けていて、前髪は眉毛の形が分かるくらいには短く、黒髪ボブの元気そうな少女という印象を受けた。
「…、初めまして。森大輝です」
「アタシは鈴木愛菜(すずきまな)っすよ。こっちの無愛想なのは武田幸樹(たけだこうき)先輩っす。よろしくっすね、大輝さん!」
「僕は無愛想なんかじゃない!」
元気そうな少女、愛菜さんは印象通りだった。正直なところこのタイプにはあまり良い思い出がない。こっちが話しかけても無視するけど向こうから話しかけられる時はグイグイと詰めてくる…。
「大輝さん!この人アタシが話しかけてあげてるのに『そうか…。』とか『良かったな…。』としか言わないんすよ!これ聞いてどうっすか!?」
高校生時代の思い出に浸っていると鈴木さんが話しかけてきた。顔を近くに寄せてくるので少し顔を引いた。女子をこんな間近で見る機会はそうそうなかったからだ。
「…、た、武田君は人と喋るのは苦手なんじゃないかな?」
「た、確かに森さんの言うとおりだけど!君に言われたくはない!」
俺はこんな可愛い子を前に緊張して、声が裏返ってしまった。鈴木さんがニヤニヤしながら此方を見てきた。そして彼女が何かを言おうとした瞬間に、武田君が言った。彼の声には少しの動揺があった。
「はぁ!?なんすかそれ!?ーー」
なんか、喧嘩が始まった。しかも俺が苦手な痴話喧嘩の部類だ。付き合っていると断定できたわけではないが、なんとなくそう思った。
その光景で俺は高校生の時の友人のカップルを思い出された。いつも喧嘩ばっかりしているが、互いに俺に話す内容は愚痴という名の惚気話。そんな彼らが憎くてうざかった。この2人からも同じ匂いがしたから、今すぐこの場から逃げたかった。
「どうしたんですか、大輝さん?」
「い、いや、なんでもないよ。あはは…」
そう苦し紛れに答えるので精一杯だった。
「皆さん、お話は済みましたか?」
話を途切らせまいとニコニコしながら管理人が直ぐに聞いてきた。その笑顔は何処か不気味で気持ち悪くて吐き気を催した。
「「はい」」
「うす」
俺らが一斉に答えると先程まで笑っていた管理人が真顔になった。たったそれだけでそれまで楽しげだった雰囲気が一変した。空気が冷たく喉を通らなかった。
「今から貴方達にはあるゲームをしてもらいます」
「どういうゲームなんだ?」
恐る恐る聞いた。こんな館に招待したんだ。死なないと出られないとか、精神崩壊しないと出られないとかそんなのを想像して体が強張み、生唾を飲んだ。
「ゲーム内容は単純です。今日から3日間誰にも殺されないように生き延びて下さい」
思ったより条件が緩くて安堵した。2人も安心したのか笑い合っている。
「ですが、そう簡単ではありません。この館には貴方達を殺すために様々な罠が仕掛けられていますので、気を付けて下さいね。…、因みに誰かを殺した場合は、大切な人と一緒に現世に戻れますよ」
空気が一気にピリついた。大切な人…。夏華…、夏華が戻ってくるのか…。なら、殺ってやる。夏華に会って話したいことが山程有るんだ!さっきの発言で2人も真剣な表情《かお》になった。どうやら殺る決意が出来たみたいだ。
「私に見せてください。貴方達《にんげん》の醜い欲望を!」
管理人は高らかに笑った。その笑い声は人間を弄ぶ悪魔の声に聞こえた。この時はまだこの館の恐ろしさを知らなかった。
