「はぁ〜っ……」
まさか自分が朝っぱらから痴情のもつれ的なことを演じてしまうなんて……恥ずかしくて死ぬ。しかもカチンと来たとはいえ、あれは最低の発言だった。琥珀を、傷つけてしまった。
瑠璃は仕事中も憂鬱から抜け出せていなかった。そのせいか身体も怠い。
とはいえ内勤なので、パソコンの前に座っていれば仕事はできる。琥珀に『遊んでりゃいい大学生』とは言ったものの、二次性を理由に社会人としても出世コースから離れた事務方の業務しかできていない瑠璃だ。
昼間は講義と研究室で遊ぶ時間もないと聞いたことがあるし、琥珀のほうがよっぽど忙しくしているかもしれない。三回生ならもう就活が始まるのかと思えば、教授のすすめで大学院へ進むと聞いた。
文系の大学を卒業してオメガ歓迎の会社に努力もせず入社した瑠璃より、よっぽど優秀そうだ。瑠璃がアルファらしさを苦手としているのは、ただの劣等感かもしれない。どう頑張っても追い越せない。才能の違いを見せつけられる。
オメガでも成功している人はたくさんいるのだ。この劣等感は、過去の経験によるものだった。
二次性がわかって転校するまで、瑠璃は学校でイジメられていた。イジメの中心になっていた男は頭も顔もいいアルファだった。
家族は優しく支えてくれたけど、爪弾きにされていた記憶のせいでいざというとき自分に自信が持てない。就職活動も頑張れずずっと恋人もいなかったのは、ろくに努力もしていない自分のせいだと心の奥底では理解しているのに……
「唐種さん、お昼食べなかったでしょう。顔色よくないけど、大丈夫?」
上司が心配そうに眉をひそめこちらを見ていた。瑠璃のいる部署はオメガが多く、上司も部下の二次性を把握している。子育てを終えた歳上の同僚ばかりだが、偏見もなく休みも取りやすく本当に働きやすい職場だと思う。
「大丈夫です。この資料もうすぐできるんで、定時までに送りますね」
「体調悪かったら無理しないでね。季節の変わり目って、ホルモンバランス崩れやすいから」
「そうそう、瑠璃ちゃん彼氏もいないっていうから心配なのよぉ。こんなにかわいいのに!」
歳上の言葉は鵜呑みにしてはいけないと、瑠璃はとっくに学んでいる。同じ部署の中でも机を合わせた五人の島では、お互いの家族構成やプライベートまで知っているので話題に事欠かない。
会話の内容が最近多い子どもの風邪に移ったところで、瑠璃は飲み物を取りに行くため席を立った。今日はやけに喉が渇く。
まさか自分が朝っぱらから痴情のもつれ的なことを演じてしまうなんて……恥ずかしくて死ぬ。しかもカチンと来たとはいえ、あれは最低の発言だった。琥珀を、傷つけてしまった。
瑠璃は仕事中も憂鬱から抜け出せていなかった。そのせいか身体も怠い。
とはいえ内勤なので、パソコンの前に座っていれば仕事はできる。琥珀に『遊んでりゃいい大学生』とは言ったものの、二次性を理由に社会人としても出世コースから離れた事務方の業務しかできていない瑠璃だ。
昼間は講義と研究室で遊ぶ時間もないと聞いたことがあるし、琥珀のほうがよっぽど忙しくしているかもしれない。三回生ならもう就活が始まるのかと思えば、教授のすすめで大学院へ進むと聞いた。
文系の大学を卒業してオメガ歓迎の会社に努力もせず入社した瑠璃より、よっぽど優秀そうだ。瑠璃がアルファらしさを苦手としているのは、ただの劣等感かもしれない。どう頑張っても追い越せない。才能の違いを見せつけられる。
オメガでも成功している人はたくさんいるのだ。この劣等感は、過去の経験によるものだった。
二次性がわかって転校するまで、瑠璃は学校でイジメられていた。イジメの中心になっていた男は頭も顔もいいアルファだった。
家族は優しく支えてくれたけど、爪弾きにされていた記憶のせいでいざというとき自分に自信が持てない。就職活動も頑張れずずっと恋人もいなかったのは、ろくに努力もしていない自分のせいだと心の奥底では理解しているのに……
「唐種さん、お昼食べなかったでしょう。顔色よくないけど、大丈夫?」
上司が心配そうに眉をひそめこちらを見ていた。瑠璃のいる部署はオメガが多く、上司も部下の二次性を把握している。子育てを終えた歳上の同僚ばかりだが、偏見もなく休みも取りやすく本当に働きやすい職場だと思う。
「大丈夫です。この資料もうすぐできるんで、定時までに送りますね」
「体調悪かったら無理しないでね。季節の変わり目って、ホルモンバランス崩れやすいから」
「そうそう、瑠璃ちゃん彼氏もいないっていうから心配なのよぉ。こんなにかわいいのに!」
歳上の言葉は鵜呑みにしてはいけないと、瑠璃はとっくに学んでいる。同じ部署の中でも机を合わせた五人の島では、お互いの家族構成やプライベートまで知っているので話題に事欠かない。
会話の内容が最近多い子どもの風邪に移ったところで、瑠璃は飲み物を取りに行くため席を立った。今日はやけに喉が渇く。


