『……っあ。あつい……ね、もっとぉ……』

 身体が熱くて仕方がなかった。浅ましい欲望が次から次へと湧いてきて、思考を(もや)のように覆ってしまう。
 いつもならひとりでふうふう苦しみながら過ごす発情期だ。しかしこの夢の中には相手がいた。

 知らない人だ。汗で濡れた前髪を掻き上げた顔は驚くほど精悍で、キリッとした眉と目元が印象的だ。しかしその目尻は赤く染まり、興奮の色を見せている。
 
 仰向けになった瑠璃が手を伸ばすと、望み通り身体を寄せてくれる。その首筋に顔を寄せて、フェロモンをすんすん嗅がせてもらった。
 落ち着くようで、興奮する。身体がくったりと脱力して、気持ちよさにとろりと蕩ける。

 そのとき、尻の中で何かが動いた。途端に感じたことのないほど強い快感が全身を突き抜け、びくんっと身体が跳ねた。

『んあ! ああっ……』

 長い指が瑠璃の中を刺激していた。オメガなのに怖くて、そこにはなにも入れたことがないのに……気持ちよくて、もっともっとと強請ってしまう。

『ん、きもちぃ……ね。きて……? それ、欲しいっ……こは……』



 ――ドクンッ! と心臓が強く跳ね、瑠璃は目を覚ました。

「ッはぁ、っはぁ。はー……」

 全力疾走したあとみたいに呼吸が荒れ、心臓がドクドクと強く拍動している。身体の中心がぎゅっと主張していて、あられもない夢のお陰で勃っている自覚があった。

「……なに、いまの」

 夢の残滓が身体に残り、全身の感覚が鋭敏になっている気がする。映像だけは鮮明に思い出せる。やけにリアルで……あの顔。

(めっちゃくちゃかっこよかったぁ。なーんか、どっかで見たことある気がするんだけど……どこだろ?)

 記憶には引っかかるのに、知り合いにあんなイケメンはいない。
 ぼんやりとその顔を思い浮かべながら、はあっと熱い息をはき、瑠璃は自分の下肢へと手を伸ばした。まだ夜中なのに、目が冴えてしまった。この熱をどうにかしないと、眠気はやってきそうにないのだ。