文化祭が終わり受験一色になり始める高校三年生。悠は今、東京の大学に受験に行っている。今がチャンスと思いあの噂以来、悠へのよく分からない気持ちについて啓太に相談中。
「最近悠といるとドキドキしたりモヤモヤする事が多くなってさ。今までこんな事なかったのに。今じゃまともに悠の顔も見れない時もあるんだ。なんでかな?一緒にいすぎておかしくなっちゃったかな?」
「.....まじで分かんないの?」
机に突っ伏して相談している僕を呆れた顔で見てくる啓太。分からないから相談してるんだよ。
「ほんとお前って鈍感極めてるよなぁ〜。そこまでいって分からないって。桐谷も大変だなぁ」
「なんで悠?今大変なのは僕の方じゃない?」
啓太が何を言いたいのかさっぱり分からない。僕ってそんなに鈍感...?
「まぁいずれ嫌でも分かるよ。それに関しては俺は何も出来ないから今はもう少し悩んでな。それに気づいた時、お前はどんな答え出すんだろうな?桐谷みたいにはなるなよ」
「うぅ〜」
不敵な笑みを浮かべる啓太を横目に混乱していた僕は唸っていた。
さっき言われた啓太の言葉の意味を考えてしまう。悠みたいにはってどういう意味だったんだろう?僕のこの気持ちがどんな物でも僕が悠みたいになれる訳ないのに。そんな事を考えながら歩いていると後ろから啓太に突進された。
「凪!コレ見て」
「び、びっくりした!なに?」
そう言って啓太が見せてきたのは児童掲示板だった。そこには写真と共に一つの投稿があった。それは悠が年上っぽい女の人と仲良く歩いている写真だった。
「ちょうど桐谷が受験に行った日に投稿されたもので生徒の中だと桐谷は年上好きだから誰とも付き合わないんじゃないか?とか結婚の約束してるだとかって噂されてる」
「うーん。悠が年上好きかは分からないけど僕この人知ってるよ」
「え!まじ、誰?」
「えっと...悠と僕の知り合い?」
悠は中学の時から児童養護施設にいる。この事は言わないでほしいと本人から言われているため誤魔化すしかなかった。でもこの写真に映っている人は悠のいる施設を営んでる咲希さんだ。きっと買い物帰りに誰かに撮られたのだろう。
忘れた頃にやってくる悠に対する妙な噂。悠が受験から帰ってくるまでになんとかしなきゃ!
「心当たりか〜。特にないかな?」
放課後、この噂の事をナナミに相談していた。悠の噂が流れる時は大抵『ナナミと仲良くしてる、付き合ってるかもしれないから』という理由で妬んだ男子が関わってくる。だからナナミに話を聞くことが何かヒントになると思った。
「あ!でも関係あるか分からないけど、この前悠に告白の練習付き合ってもらってたんだ。その時他の子に聞かれてたみたいでまた勘違いしてる子がいるの」
「なるほど...」
じゃあその勘違いしてる人の中に投稿をした人がいる?
「てか、告白の練習!ナナミ好きな人いたの?」
ずっと悠の事で頭がいっぱいで聞き流していたが冷静に考えるとびっくりした。
「え、今更?いるよ。近々告白したいんだぁ」
「そうなんだ。頑張ってね!」
「ありがとう」
そう言って微笑むナナミは少し落ち込んでいるように見えた。
告白かぁ〜。上手くいくといいなぁ。
『俺にとっての1番はずっと凪だけ』
「....!」
なんで今悠の事思い出すんだ...!火照った顔と頭に浮かんだ悠を忘れるため頭を振った。その時...
「今井さん。今大丈夫?」
「あ、佐藤くん。どうしたの?」
「これ委員会のポスターの紙。来週までに提出してって」
「分かった。わざわざごめんね」
「ううん、大丈夫。あ、今日一緒に帰れそう?」
「あ〜ごめん。今日は友達の相談乗ってて。ね、凪!」
「う、うん!」
「そっか。じゃあまた後で」
急に声をかけられてびっくりした。ナナミの横にいる男子に視線を向けるとなぜか睨まれているような気がした。気のせいかな?
「さっきの人誰?」
「隣のクラスの佐藤くん。委員会が一緒で話すようになったんだ。あ、でもこの前告白されたわ。まぁ断っちゃったんだけど。今は友達として仲良くしてるよ」
「へ〜。今もナナミの事好きなのかな?
「どうなんだろう?でも好きな人の事はずっと聞かれるかな!」
「そうなんだ。ねぇ、ナナミ。少し協力して欲しいんだけど」
「だいぶ帰りが遅くなっちゃったなぁ。」
ナナミに協力を依頼してから数日後。進路の事もあり学校で作業をしていたら下校時刻を過ぎていた。一緒にいた啓太とナナミとは学校で別れ一人帰路についていた。
「あの〜」
帰り道見知らぬ女性に声をかけられた。大学生くらいだろうか?
「はい?」
「さっき足怪我しちゃって。少し肩を貸して貰えませんか?」
「いいですよ。どこに行くんですか?」
「ちょっとそこまで」
そう微笑む彼女。行き先が分からぬまま肩を貸すことにした。そして着いた先はまさかの...
「ホテル...?」
「ごめんなさい。中で待ち合わせしてて。そこまで誘導お願いしたいんですけど、ダメですか?」
「....分かりました」
ダメだと分かっていても困ってる人を置いてけぼりにするのは気が引けたので渋々了承してホテル内までついていった。頼まれたら断れない性格なんとかしなきゃ。
翌朝。
悠今日帰ってくるんだよなぁ。悠が隣にいないのは違和感すごいしやっぱり寂しい。帰ってきたら労ってあげよう!そんな事を思いながら登校していると後ろから声をかけられた。
「凪!コレ!」
息を切らしながら走ってきたナナミが見せてきたのはまた写真と一つの投稿。それは僕が女性とホテルに入る所を写真に収めた物だった。
「昨日の...」
「心当たりある?」
「うん。多分、彼の仕業だね。放課後話してみる」
もしかしたら僕の直感が当たってるかも。ひとまず話してみよう。
そして放課後
「話って何?」
僕は体育倉庫前に佐藤くんを呼び出していた。
「これ投稿したのは君?もしそうなら今すぐ消して欲しいんだけど」
「なんで俺が?」
「君はナナミの事が好きだって聞いて、僕とナナミが一緒にいた時も睨まれた気がしたんだ。だから悠とナナミの事も勘違いしたんじゃないかと思ってナナミに協力してもらって僕と付き合ってるって嘘をついてもらったんだよ。そしたら今度は悠じゃなくて僕の噂が流れた。だからもしかしたらって思ったんだ」
「それだけ?そんなの他の人も聞いてたかも知れないだろ?」
「ナナミは君と二人で帰った時に話したって言ってた。この事は君以外に話してないよ」
「....だ、だからって俺が投稿した証拠にはならないだろ?」
やっぱりダメか。決定的な証拠がないと消してもらえないらしい。一体どうしたら...?
「証拠なら全部話してもらった」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには悠と一人の女性の姿があった。
「あ、貴方昨日の!」
「あ!昨日はごめんね嘘ついちゃって。その人に頼まれてたのよ。彼に会わせてくれるって言うから協力したんだけど彼の気迫に押されちゃって...」
彼女は悠の中学の先輩だったらしい。その頃から悠が気になっていて、佐藤くんは彼女を悠に会わせる代わりに僕を嵌める作戦に協力させたという。口止めはされていたらしいが悠の圧に負けたとか...。
「凪くんだっけ?君の話をした途端急に顔色が変わってさ。ちょっと怖かったかなぁ」
「話は全部聞いた。それに写真の根源も調べさせてもらった。これお前のアカウントだろ?」
「なんでそれを!」
「少しツテがあって。これくらいすぐ調べられる。これでも言い逃れする気か?今すぐ全部消せ」
佐藤くんも悠の圧に気圧されたのだろう。素直に従っていた。そんな佐藤くんの胸ぐらを急に悠が掴みだした。
「悠!」
「もしまた凪に同じような事したら、今度はただじゃ済まさない」
あ、まただ。買い出しの日と同じく本気で激怒している時の悠。なんで僕の事になるとそんなに怒ってくれるんだろう?
「チッ。お前らに今井さんは渡さないからな!」
ナナミは別に誰のものでもないだろ。それにこんな事しても何も変わらないのに。言いそうになった言葉を飲み込み悠を見る。少し落ち着いたのかいつもの悠に戻っていた。
「凪、帰ろ」
そう優しく微笑んでいた。
「悠、さっきのアカウントのやつどうやったの?」
「あ〜、実は咲希さんの旦那さんがハッカーの人でそういうの得意なんだよ。さっきの女の人から話聞いてすぐに調べてもらったら出てきた。あ、もちろん旦那さんは犯罪者とかそういうんじゃないから」
「なるほどね。仕事早いね」
「優秀な人だから」
「てか、なんでここに?今日帰ってきたんだよね?」
「うん。駅に着いたら彼女に話しかけられて。凪の話聞いたらいても立ってもいられなくて。なんであんな変な事言われてたわけ?」
「それは...」
なんて言ったらちゃんと悠に伝わるのかな?考えても混乱するだけだからただ伝えたい事を言葉にしていた。
「悠を守りたかったから。悠の変な噂が流れたらまた昔みたいに悠が傷つくかもしれない。また目の敵にされるかもしれない。そう思ったら嫌で、ナナミに協力してもらいながらなんとか自分の力で解決しようと思ったんだ」
僕の拙い言葉を悠は頷きながら聞いている。話しながら僕の心臓はうるさいくらいに鳴っていた。
「僕はいつも悠に守られてばかりで、何も返せてない。だから今回は僕が悠を守るんだって...!そう思ったのに...」
結局今回も悠に助けられた。感情が高まって言葉を紡げず伝えたい事もまともに伝えられなかった。そんな時頭を優しくポンポンと叩かれた。
「凪がいつも俺のためって言っていろいろしてくれるのはすげぇ嬉しい。でも俺のためにってした事で凪が傷ついたり泣いたりしてんのは嫌なんだよ。俺が知らない所で傷つかれてんのはもっと嫌だ。だからあんま無茶すんな」
悠の優しさに涙が出そうになる。
「それに俺はあの日からいつも凪に救われてる。こうしてお前が隣に傍にいて笑ってくれてる。それだけで充分助けられてる。だから何も返せてないなんて思うなよ。俺の方こそ貰ってばかりなんだから。いつもありがとう」
なんで、なんでこんな時まで優しくするの?ずるいよ。ずっと聞きたくても困らせたくなくて胸の奥底にしまっていた想いが溢れてくる。気づけば前を歩く悠の腕を掴んでいた。
「凪?」
「悠は...僕の事が好きなの?」
『桐谷悠と砂山凪は付き合っている』その噂を聞いて以来ずっとありえないと打ち消してきた思い。自意識過剰なのは分かっているけどもしかしたらなんて思ってしまった。
「.....うん好きだよ。でもそれは...凪と、同じ意味だから」
言葉を詰まらせながら言い放った悠の言葉。その時の悠は何か隠しているような表情をしていたが僕はそこまで考える余裕がなくなっていた。
「そ、そうだよね!ごめんね変な事聞いて!何言ってんだ僕...あ、僕急用を思い出したから先帰るね!あ、受験お疲れ様!」
そう言い残し逃げるように走り去った。あぁ、最悪。こんなタイミングで自覚するなんて。今度は我慢出来ず涙が止まらなかった。
『好きだよ』『それは...凪と、同じ意味で』
悠の言葉が頭で永遠にリピートされる。
僕と同じ意味でってなんだよ。僕は悠の事友達以上に好きなのに...!
友情から恋へ変わった特別の意味。そして始まる前から終わった恋。いろんな想いに胸を痛めながら僕は本当の気持ちを自覚した。
「最近悠といるとドキドキしたりモヤモヤする事が多くなってさ。今までこんな事なかったのに。今じゃまともに悠の顔も見れない時もあるんだ。なんでかな?一緒にいすぎておかしくなっちゃったかな?」
「.....まじで分かんないの?」
机に突っ伏して相談している僕を呆れた顔で見てくる啓太。分からないから相談してるんだよ。
「ほんとお前って鈍感極めてるよなぁ〜。そこまでいって分からないって。桐谷も大変だなぁ」
「なんで悠?今大変なのは僕の方じゃない?」
啓太が何を言いたいのかさっぱり分からない。僕ってそんなに鈍感...?
「まぁいずれ嫌でも分かるよ。それに関しては俺は何も出来ないから今はもう少し悩んでな。それに気づいた時、お前はどんな答え出すんだろうな?桐谷みたいにはなるなよ」
「うぅ〜」
不敵な笑みを浮かべる啓太を横目に混乱していた僕は唸っていた。
さっき言われた啓太の言葉の意味を考えてしまう。悠みたいにはってどういう意味だったんだろう?僕のこの気持ちがどんな物でも僕が悠みたいになれる訳ないのに。そんな事を考えながら歩いていると後ろから啓太に突進された。
「凪!コレ見て」
「び、びっくりした!なに?」
そう言って啓太が見せてきたのは児童掲示板だった。そこには写真と共に一つの投稿があった。それは悠が年上っぽい女の人と仲良く歩いている写真だった。
「ちょうど桐谷が受験に行った日に投稿されたもので生徒の中だと桐谷は年上好きだから誰とも付き合わないんじゃないか?とか結婚の約束してるだとかって噂されてる」
「うーん。悠が年上好きかは分からないけど僕この人知ってるよ」
「え!まじ、誰?」
「えっと...悠と僕の知り合い?」
悠は中学の時から児童養護施設にいる。この事は言わないでほしいと本人から言われているため誤魔化すしかなかった。でもこの写真に映っている人は悠のいる施設を営んでる咲希さんだ。きっと買い物帰りに誰かに撮られたのだろう。
忘れた頃にやってくる悠に対する妙な噂。悠が受験から帰ってくるまでになんとかしなきゃ!
「心当たりか〜。特にないかな?」
放課後、この噂の事をナナミに相談していた。悠の噂が流れる時は大抵『ナナミと仲良くしてる、付き合ってるかもしれないから』という理由で妬んだ男子が関わってくる。だからナナミに話を聞くことが何かヒントになると思った。
「あ!でも関係あるか分からないけど、この前悠に告白の練習付き合ってもらってたんだ。その時他の子に聞かれてたみたいでまた勘違いしてる子がいるの」
「なるほど...」
じゃあその勘違いしてる人の中に投稿をした人がいる?
「てか、告白の練習!ナナミ好きな人いたの?」
ずっと悠の事で頭がいっぱいで聞き流していたが冷静に考えるとびっくりした。
「え、今更?いるよ。近々告白したいんだぁ」
「そうなんだ。頑張ってね!」
「ありがとう」
そう言って微笑むナナミは少し落ち込んでいるように見えた。
告白かぁ〜。上手くいくといいなぁ。
『俺にとっての1番はずっと凪だけ』
「....!」
なんで今悠の事思い出すんだ...!火照った顔と頭に浮かんだ悠を忘れるため頭を振った。その時...
「今井さん。今大丈夫?」
「あ、佐藤くん。どうしたの?」
「これ委員会のポスターの紙。来週までに提出してって」
「分かった。わざわざごめんね」
「ううん、大丈夫。あ、今日一緒に帰れそう?」
「あ〜ごめん。今日は友達の相談乗ってて。ね、凪!」
「う、うん!」
「そっか。じゃあまた後で」
急に声をかけられてびっくりした。ナナミの横にいる男子に視線を向けるとなぜか睨まれているような気がした。気のせいかな?
「さっきの人誰?」
「隣のクラスの佐藤くん。委員会が一緒で話すようになったんだ。あ、でもこの前告白されたわ。まぁ断っちゃったんだけど。今は友達として仲良くしてるよ」
「へ〜。今もナナミの事好きなのかな?
「どうなんだろう?でも好きな人の事はずっと聞かれるかな!」
「そうなんだ。ねぇ、ナナミ。少し協力して欲しいんだけど」
「だいぶ帰りが遅くなっちゃったなぁ。」
ナナミに協力を依頼してから数日後。進路の事もあり学校で作業をしていたら下校時刻を過ぎていた。一緒にいた啓太とナナミとは学校で別れ一人帰路についていた。
「あの〜」
帰り道見知らぬ女性に声をかけられた。大学生くらいだろうか?
「はい?」
「さっき足怪我しちゃって。少し肩を貸して貰えませんか?」
「いいですよ。どこに行くんですか?」
「ちょっとそこまで」
そう微笑む彼女。行き先が分からぬまま肩を貸すことにした。そして着いた先はまさかの...
「ホテル...?」
「ごめんなさい。中で待ち合わせしてて。そこまで誘導お願いしたいんですけど、ダメですか?」
「....分かりました」
ダメだと分かっていても困ってる人を置いてけぼりにするのは気が引けたので渋々了承してホテル内までついていった。頼まれたら断れない性格なんとかしなきゃ。
翌朝。
悠今日帰ってくるんだよなぁ。悠が隣にいないのは違和感すごいしやっぱり寂しい。帰ってきたら労ってあげよう!そんな事を思いながら登校していると後ろから声をかけられた。
「凪!コレ!」
息を切らしながら走ってきたナナミが見せてきたのはまた写真と一つの投稿。それは僕が女性とホテルに入る所を写真に収めた物だった。
「昨日の...」
「心当たりある?」
「うん。多分、彼の仕業だね。放課後話してみる」
もしかしたら僕の直感が当たってるかも。ひとまず話してみよう。
そして放課後
「話って何?」
僕は体育倉庫前に佐藤くんを呼び出していた。
「これ投稿したのは君?もしそうなら今すぐ消して欲しいんだけど」
「なんで俺が?」
「君はナナミの事が好きだって聞いて、僕とナナミが一緒にいた時も睨まれた気がしたんだ。だから悠とナナミの事も勘違いしたんじゃないかと思ってナナミに協力してもらって僕と付き合ってるって嘘をついてもらったんだよ。そしたら今度は悠じゃなくて僕の噂が流れた。だからもしかしたらって思ったんだ」
「それだけ?そんなの他の人も聞いてたかも知れないだろ?」
「ナナミは君と二人で帰った時に話したって言ってた。この事は君以外に話してないよ」
「....だ、だからって俺が投稿した証拠にはならないだろ?」
やっぱりダメか。決定的な証拠がないと消してもらえないらしい。一体どうしたら...?
「証拠なら全部話してもらった」
聞き覚えのある声に振り返るとそこには悠と一人の女性の姿があった。
「あ、貴方昨日の!」
「あ!昨日はごめんね嘘ついちゃって。その人に頼まれてたのよ。彼に会わせてくれるって言うから協力したんだけど彼の気迫に押されちゃって...」
彼女は悠の中学の先輩だったらしい。その頃から悠が気になっていて、佐藤くんは彼女を悠に会わせる代わりに僕を嵌める作戦に協力させたという。口止めはされていたらしいが悠の圧に負けたとか...。
「凪くんだっけ?君の話をした途端急に顔色が変わってさ。ちょっと怖かったかなぁ」
「話は全部聞いた。それに写真の根源も調べさせてもらった。これお前のアカウントだろ?」
「なんでそれを!」
「少しツテがあって。これくらいすぐ調べられる。これでも言い逃れする気か?今すぐ全部消せ」
佐藤くんも悠の圧に気圧されたのだろう。素直に従っていた。そんな佐藤くんの胸ぐらを急に悠が掴みだした。
「悠!」
「もしまた凪に同じような事したら、今度はただじゃ済まさない」
あ、まただ。買い出しの日と同じく本気で激怒している時の悠。なんで僕の事になるとそんなに怒ってくれるんだろう?
「チッ。お前らに今井さんは渡さないからな!」
ナナミは別に誰のものでもないだろ。それにこんな事しても何も変わらないのに。言いそうになった言葉を飲み込み悠を見る。少し落ち着いたのかいつもの悠に戻っていた。
「凪、帰ろ」
そう優しく微笑んでいた。
「悠、さっきのアカウントのやつどうやったの?」
「あ〜、実は咲希さんの旦那さんがハッカーの人でそういうの得意なんだよ。さっきの女の人から話聞いてすぐに調べてもらったら出てきた。あ、もちろん旦那さんは犯罪者とかそういうんじゃないから」
「なるほどね。仕事早いね」
「優秀な人だから」
「てか、なんでここに?今日帰ってきたんだよね?」
「うん。駅に着いたら彼女に話しかけられて。凪の話聞いたらいても立ってもいられなくて。なんであんな変な事言われてたわけ?」
「それは...」
なんて言ったらちゃんと悠に伝わるのかな?考えても混乱するだけだからただ伝えたい事を言葉にしていた。
「悠を守りたかったから。悠の変な噂が流れたらまた昔みたいに悠が傷つくかもしれない。また目の敵にされるかもしれない。そう思ったら嫌で、ナナミに協力してもらいながらなんとか自分の力で解決しようと思ったんだ」
僕の拙い言葉を悠は頷きながら聞いている。話しながら僕の心臓はうるさいくらいに鳴っていた。
「僕はいつも悠に守られてばかりで、何も返せてない。だから今回は僕が悠を守るんだって...!そう思ったのに...」
結局今回も悠に助けられた。感情が高まって言葉を紡げず伝えたい事もまともに伝えられなかった。そんな時頭を優しくポンポンと叩かれた。
「凪がいつも俺のためって言っていろいろしてくれるのはすげぇ嬉しい。でも俺のためにってした事で凪が傷ついたり泣いたりしてんのは嫌なんだよ。俺が知らない所で傷つかれてんのはもっと嫌だ。だからあんま無茶すんな」
悠の優しさに涙が出そうになる。
「それに俺はあの日からいつも凪に救われてる。こうしてお前が隣に傍にいて笑ってくれてる。それだけで充分助けられてる。だから何も返せてないなんて思うなよ。俺の方こそ貰ってばかりなんだから。いつもありがとう」
なんで、なんでこんな時まで優しくするの?ずるいよ。ずっと聞きたくても困らせたくなくて胸の奥底にしまっていた想いが溢れてくる。気づけば前を歩く悠の腕を掴んでいた。
「凪?」
「悠は...僕の事が好きなの?」
『桐谷悠と砂山凪は付き合っている』その噂を聞いて以来ずっとありえないと打ち消してきた思い。自意識過剰なのは分かっているけどもしかしたらなんて思ってしまった。
「.....うん好きだよ。でもそれは...凪と、同じ意味だから」
言葉を詰まらせながら言い放った悠の言葉。その時の悠は何か隠しているような表情をしていたが僕はそこまで考える余裕がなくなっていた。
「そ、そうだよね!ごめんね変な事聞いて!何言ってんだ僕...あ、僕急用を思い出したから先帰るね!あ、受験お疲れ様!」
そう言い残し逃げるように走り去った。あぁ、最悪。こんなタイミングで自覚するなんて。今度は我慢出来ず涙が止まらなかった。
『好きだよ』『それは...凪と、同じ意味で』
悠の言葉が頭で永遠にリピートされる。
僕と同じ意味でってなんだよ。僕は悠の事友達以上に好きなのに...!
友情から恋へ変わった特別の意味。そして始まる前から終わった恋。いろんな想いに胸を痛めながら僕は本当の気持ちを自覚した。
