季節も秋に移り変わり我が校は文化祭の時期に突入した。ただいま文化祭の準備真っ只中だ。クラスの出し物はお化け屋敷。僕は文化委員という事もありクラスの出し物のリーダーも任されていた。
「ねぇ、砂山くん。衣装作りの素材が足りなくなっちゃったんだけど追加の買い出し頼める?」
「うん。まだ予算内だから大丈夫だよ。他にも何か足りない物があったら遠慮なく言ってね。今日買ってくる」
そうクラスの人たちに声をかけてみると意外と物が足りてなかったみたいで膨大な量を頼まれてしまった。やっぱり気持ち多めに買っておけば良かったかな?
さてと。今日は買い出ししてから帰ろうかな。
「凪」
「悠、どうしたの?」
「今から買い出しだろ?俺も行く」
「え?いやでも申し訳ないし、1人でも大丈夫だよ」
「だって凪、リーダーの仕事でいろいろ大変だろ?だから何か手伝わせてほしい。凪の負担を少しでも軽くしたいから俺にも分けて」
「そっか。ありがとう。じゃあお願いしようかな」
買い出しのため帰り道にあるショッピングモールに寄った。ここはいろんな物が一手に揃うから普段からよく来ていた。
「買うもの何?」
「これ」
そういって僕はメモを悠に見せた。すると悠はスマホで何かを打ち込み始めた。そして数分のうちに悠から連絡が来た。
「凪はそれ買ってきて。後は俺が買ってくるから」
スマホを見てみると悠が買うものリストをまとめて送ってくれていた。しかし...
「え。でもこれじゃあ悠の方が量多くない?」
明らかに悠の買い出しの量が圧倒的に多かった。それに僕のは三階建てのショッピングモールのうち一階だけで済むものばかりだ。せっかく手伝ってくれてるのにこれじゃ申し訳なさすぎる。
「俺は大丈夫。凪のはここの一階だけで済む物まとめたから後は任せて。終わったらまたここ集合で」
「分かった。ありがとう!」
悠にお礼を言ってそれぞれ買い物へと向かった。
買い物を済ませた僕は一人考え事をしながら集合場所に向かっていた。
最近悠といると自分の気持ちがおかしいんだよなぁ。この前は悠に好かれてる人が羨ましいなんて思っちゃったし、何気ない事でもドキドキしちゃうし。ただの友達にこんな感情普通抱くのかな?
「ねぇねぇ。君一人?」
考え事をしながら歩いてたら人通りの少ない場所に来ていたみたいだ。声のした方を見るとガラの悪い二人組の男が立っていた。
「えっと..いや友達と来てて。なので失礼します!」
逃げようとした時ガシッと腕を掴まれた。力が強すぎて振りほどく事も出来なかった。
「ちょっと待ってよ。俺たち今持ち合わせが無くてさ。金貸してくれない?」
「君可愛い顔してるね。良かったら俺らと遊ばね?」
「あの困ります。僕急いでるんで!」
何度振りほどこうとしても力で勝てない。怖くて足が竦む。
(悠、助けて!)
そう心の中で叫んだ時...
「何してんの?」
聞き覚えのある声。でもいつもより声が低い気がする。
「悠!」
「誰だてめぇ」
「凪に触んな。今すぐ失せろ」
そう言って僕の腕を掴んでいた男の人の手を乱雑に振りほどいて僕を庇うように前に立った。今まで聞いた事ないくらい低い声で顔も眉間にシワがよっていてめちゃくちゃ怒っている事が伝わってきた。こんな悠の顔初めて見た。
「はぁ?舐めてんのかこのクソガキ!」
ガラの悪い二人組の男は悠に殴りかかっていた。でも悠に返り討ちにされ手も足も及ばず逃げ帰っていた。
(悠、つよ!)
そう関心していたがすぐ我に戻って悠の元に駆け寄った。
「ごめん悠!考え事してたらつい...」
どうにか悠に謝罪と感謝を伝えようとしたらその前に悠に抱きしめられていた。
「ごめん凪。俺がもっと早く駆けつけてれば...一人にしなければ...こんな怖い思いさせなくてすんだのに...!守れたのに...!ほんとごめん」
何も悪くないのに僕以上に謝ってくる悠に愛おしさが募っていく。
「謝らないでよ。むしろ謝らなきゃならないのは僕の方なのに。ごめんね悠。助けに来てくれてありがとう。怖かったけど悠が来てくれて安心した」
「うん。凪に何も無くて良かった」
抱きしめてくれる悠の力が強くなり、その温かさに安心感を覚える。僕に何かあった時いつもこうして抱きしめてくれるんだよな。この愛おしさをどう表現したらいいのか分からないけど出来ればずっとこのままでいたいなんて思ってしまう。
その後準備も順調に進み今日は衣装班が作った衣装を合わせる日。そして僕はというと空き教室で一人着替えていたのだが後ろにある紐を締められず絶賛困っています。
(誰か外にいないかな?)
そう思って教室を出ようとした時ちょうどナナミが教室に入ってきた。
「あれ?凪も衣装合わせ?」
「うん。丁度いいところに!ナナミ後ろの紐縛ってくれない?」
「うん、いいよ」
「ありがとう」
「凪似合うね」
「ほんと?サイズもぴったりだしこれでいいかな。ナナミはこれから?」
「そう。私の班もやっと仕事が一段落したから」
「そっか。お疲れ様。ナナミ達の班には結構な仕事頼んじゃってごめんね」
「全然。むしろ凪の方が大変でしょ?もし何かあったらいつでも言ってね!」
「助かるよ〜」
ナナミと文化祭の事について話しながら衣装を脱ぎ教室を後にした。
教室に戻る途中賑やかな声にふと足が止まった。声のする教室を見てみると悠がまたも女子に囲まれていた。
「桐谷くんかっこいいね〜」
「ほんとほんと!」
「似合いすぎ!」
悠の事を褒めながら悠に触れたり距離感が近い女子たち。衣装班の子達だ。それを見て僕は無意識に手を力強く握っていた。
「悠に近づかないで欲しい」
ふと出た言葉に自分でびっくりする。
(僕...今なんて言った?こんなのいつもの事なのに...なんでこんなにモヤモヤするんだろう?)
今は悠に会いたくない。気づかれる前に早足で教室を後にした。
モヤモヤは残ったままあっという間に文化祭当日を迎えた。一般のお客さんも入るため大盛り上がりだった。
「ひとまず休憩!皆お疲れ様!」
「凪おつかれ」
「ナナミお疲れ様。どうだった?」
「めっちゃ楽しかったよ!脅かす側ってやった事なかったけどお客さんに楽しんでもらえて満足そうに帰っていくのを見るのすごい嬉しかった」
「分かる!なんかやりがいあるよね!ナナミはこの後休みだよね?文化祭楽しんでね!」
「ありがとう。凪は休みじゃないの?」
「受付の子で休みが出ちゃったから代わりに受付に残る事にしたんだ」
「そうなんだ。せっかくの文化祭なのに勿体ない」
「だね〜。でも僕が決めたことだし問題ない!」
心配してくれてるナナミにグッドポーズをした。これもリーダーとしての責務だし!
「そっか。無理しないでね」
「うん」
ナナミと別れた後無意識に悠の姿を探した。教室の隅で女の子達に囲まれている。あのテストの日以来悠は僕以外の人とも話すようになった。悠もお化けのコスプレをしているが似合ってるわカッコよすぎるわで謎にキラキラして見えた。
(悠は本当に何着ても似合うからずるいよなぁ)
そんな事を思いながらボーッとしているとお化け屋敷のセットの一部が急に崩れてきた。
「え?」
目を瞑って衝撃に備えたが思っていたより痛みを感じなかった。おそるおそる目を開けると僕を庇ったのか目の前に悠がいた。
「悠!大丈夫?」
「うん。平気。凪は怪我してない?」
「僕は大丈夫だよ。てか腕見せて!」
僕を庇った時腕でセットを押さえたのだろう、案の定悠の腕は赤く腫れていた。そんな、僕のせいで。今にも泣きそうになっていると悠が「そんな顔すんなよ。お前のせいじゃねぇから」と言って優しく頭を撫でてきた。こんな時まで優しくするなんて僕に甘すぎるよ...
「ひとまず保健室行こう」
「大袈裟。これくらい大丈夫だって」
「ダメだよ!ちゃんと診てもらってきて!」
「...分かった」
僕の圧に負けたのか素直に保健室に向かった悠。その間悠はクラスの人達に土下座並に謝られていたが「気にすんな」と微笑んでいた。
午後も変わらず受付と教室内の見回りなど慌ただしくしていると悠が帰ってきた。
「悠!大丈夫?」
「大丈夫。湿布も貼ってもらったし安静にしてれば平気だって」
「そっか。良かった」
僕のせいで悠が怪我でもしたら一生自分を恨んでいたに違いない。
「凪は午後は休みじゃなかったっけ?」
「あ、うん。その予定だったんだけど、人手不足で急遽手伝う事にしたんだ。悠は文化祭でも回ってゆっくり休んでてよ」
「そうなんだ。じゃあ俺も残る」
「え?別に大丈夫なのに」
「ここ座ってていい?さっきクラスの奴から聞いたんだけど俺は客寄せにもなるらしいからそれが本当ならもっと繁盛すると思う。それにただ俺が凪といたいだけなんだけど...ダメ?」
「別にダメじゃないけど...。じゃあ受付手伝ってもらおうかな?」
「おっけ」
こうして二人で受付をする事になった。
ていうか悠、さっきサラッとかっこいい事言わなかった...?『ただ俺が凪といたいだけ』ってどういう?悠の言葉が脳内を駆け巡っていた僕は一人受付どころではなかった。
悠も何事もなく帰ってきて文化祭も無事大成功で終わった。今は後夜祭中、皆お互いの頑張りを祝し盛大に賑わっていた。そんな中僕は一人になりたくて近くの階段の踊り場に来ていた。
結局悠には怪我させちゃうし、助けられてばかりだし情けない。
「凪、こんなとこで何してんの?」
「悠、ちょっと考え事」
「何?悩みでもあんの?俺で良かったら聞くけど」
「え〜っと。そんな大したことじゃないから大丈夫!」
気まずくてつい目を逸らしてしまった。悠の事で悩んでます、なんて本人に言えるわけない。
「そ。まぁ言いたくないなら無理に聞かない。でもしんどくなったらちゃんと頼れよ。いつでも聞くから」
「うん。ありがとう」
「そういえば、はいこれ」
そう言って悠は僕の頭に何かを付けた。それは文化祭で使うかもと買っておいた猫のカチューシャだった。
「ふふっ。可愛い」
「....!バカにしてる...?」
照れ隠しで聞いてみた。
「いや、ほんとに思ってる。すげぇ似合ってて可愛い」
「....あ、ありがとう」
あぁ、本当に僕はこの笑顔に弱い。心臓の音が悠にも聞こえそうなくらい大きく高鳴っていた。
「てか顔赤くね?やっぱ具合でも悪い?」
そう言いながら悠は顔を近づけてきた。それが余計に僕の心臓を跳ね上がらせた。
「ち、違うよ!なんでもない...」
「そう?あ、凪これあげる」
「これって...」
そう言って渡されたのは他のクラスで売られていたチーズボールだった。
「凪チーズ好きでしょ?だから喜んでくれるかなって保健室行った帰りに買ってきといた」
「いいの!すっごい嬉しい!ありがとう悠!」
なかなか文化祭を周れなかったから嬉しさについ顔が綻んでしまう。そんな僕を見てなんだか悠は嬉しそうだった。
「やっと笑った」
「え?」
「いや、ずっと元気なかったから買ってきて正解だったなぁって思って。凪を笑顔にできて良かった。凪が笑うと俺も嬉しいから」
「...それは僕もだよ。悠が笑ってると僕も嬉しい!」
「そっか。こういう事は両想いになれるのにな...」
「ん?何か言った?」
「なんでもねぇよ」
最後ボソッと言われた言葉は聞き取れなかった。顔を逸らした悠を横目にチーズボールを頬張る。
いろんな事があったけど楽しかった文化祭。そして今までにないくらいドキドキさせられた日。僕の親友はどこまでもずるい人だ。
「ねぇ、砂山くん。衣装作りの素材が足りなくなっちゃったんだけど追加の買い出し頼める?」
「うん。まだ予算内だから大丈夫だよ。他にも何か足りない物があったら遠慮なく言ってね。今日買ってくる」
そうクラスの人たちに声をかけてみると意外と物が足りてなかったみたいで膨大な量を頼まれてしまった。やっぱり気持ち多めに買っておけば良かったかな?
さてと。今日は買い出ししてから帰ろうかな。
「凪」
「悠、どうしたの?」
「今から買い出しだろ?俺も行く」
「え?いやでも申し訳ないし、1人でも大丈夫だよ」
「だって凪、リーダーの仕事でいろいろ大変だろ?だから何か手伝わせてほしい。凪の負担を少しでも軽くしたいから俺にも分けて」
「そっか。ありがとう。じゃあお願いしようかな」
買い出しのため帰り道にあるショッピングモールに寄った。ここはいろんな物が一手に揃うから普段からよく来ていた。
「買うもの何?」
「これ」
そういって僕はメモを悠に見せた。すると悠はスマホで何かを打ち込み始めた。そして数分のうちに悠から連絡が来た。
「凪はそれ買ってきて。後は俺が買ってくるから」
スマホを見てみると悠が買うものリストをまとめて送ってくれていた。しかし...
「え。でもこれじゃあ悠の方が量多くない?」
明らかに悠の買い出しの量が圧倒的に多かった。それに僕のは三階建てのショッピングモールのうち一階だけで済むものばかりだ。せっかく手伝ってくれてるのにこれじゃ申し訳なさすぎる。
「俺は大丈夫。凪のはここの一階だけで済む物まとめたから後は任せて。終わったらまたここ集合で」
「分かった。ありがとう!」
悠にお礼を言ってそれぞれ買い物へと向かった。
買い物を済ませた僕は一人考え事をしながら集合場所に向かっていた。
最近悠といると自分の気持ちがおかしいんだよなぁ。この前は悠に好かれてる人が羨ましいなんて思っちゃったし、何気ない事でもドキドキしちゃうし。ただの友達にこんな感情普通抱くのかな?
「ねぇねぇ。君一人?」
考え事をしながら歩いてたら人通りの少ない場所に来ていたみたいだ。声のした方を見るとガラの悪い二人組の男が立っていた。
「えっと..いや友達と来てて。なので失礼します!」
逃げようとした時ガシッと腕を掴まれた。力が強すぎて振りほどく事も出来なかった。
「ちょっと待ってよ。俺たち今持ち合わせが無くてさ。金貸してくれない?」
「君可愛い顔してるね。良かったら俺らと遊ばね?」
「あの困ります。僕急いでるんで!」
何度振りほどこうとしても力で勝てない。怖くて足が竦む。
(悠、助けて!)
そう心の中で叫んだ時...
「何してんの?」
聞き覚えのある声。でもいつもより声が低い気がする。
「悠!」
「誰だてめぇ」
「凪に触んな。今すぐ失せろ」
そう言って僕の腕を掴んでいた男の人の手を乱雑に振りほどいて僕を庇うように前に立った。今まで聞いた事ないくらい低い声で顔も眉間にシワがよっていてめちゃくちゃ怒っている事が伝わってきた。こんな悠の顔初めて見た。
「はぁ?舐めてんのかこのクソガキ!」
ガラの悪い二人組の男は悠に殴りかかっていた。でも悠に返り討ちにされ手も足も及ばず逃げ帰っていた。
(悠、つよ!)
そう関心していたがすぐ我に戻って悠の元に駆け寄った。
「ごめん悠!考え事してたらつい...」
どうにか悠に謝罪と感謝を伝えようとしたらその前に悠に抱きしめられていた。
「ごめん凪。俺がもっと早く駆けつけてれば...一人にしなければ...こんな怖い思いさせなくてすんだのに...!守れたのに...!ほんとごめん」
何も悪くないのに僕以上に謝ってくる悠に愛おしさが募っていく。
「謝らないでよ。むしろ謝らなきゃならないのは僕の方なのに。ごめんね悠。助けに来てくれてありがとう。怖かったけど悠が来てくれて安心した」
「うん。凪に何も無くて良かった」
抱きしめてくれる悠の力が強くなり、その温かさに安心感を覚える。僕に何かあった時いつもこうして抱きしめてくれるんだよな。この愛おしさをどう表現したらいいのか分からないけど出来ればずっとこのままでいたいなんて思ってしまう。
その後準備も順調に進み今日は衣装班が作った衣装を合わせる日。そして僕はというと空き教室で一人着替えていたのだが後ろにある紐を締められず絶賛困っています。
(誰か外にいないかな?)
そう思って教室を出ようとした時ちょうどナナミが教室に入ってきた。
「あれ?凪も衣装合わせ?」
「うん。丁度いいところに!ナナミ後ろの紐縛ってくれない?」
「うん、いいよ」
「ありがとう」
「凪似合うね」
「ほんと?サイズもぴったりだしこれでいいかな。ナナミはこれから?」
「そう。私の班もやっと仕事が一段落したから」
「そっか。お疲れ様。ナナミ達の班には結構な仕事頼んじゃってごめんね」
「全然。むしろ凪の方が大変でしょ?もし何かあったらいつでも言ってね!」
「助かるよ〜」
ナナミと文化祭の事について話しながら衣装を脱ぎ教室を後にした。
教室に戻る途中賑やかな声にふと足が止まった。声のする教室を見てみると悠がまたも女子に囲まれていた。
「桐谷くんかっこいいね〜」
「ほんとほんと!」
「似合いすぎ!」
悠の事を褒めながら悠に触れたり距離感が近い女子たち。衣装班の子達だ。それを見て僕は無意識に手を力強く握っていた。
「悠に近づかないで欲しい」
ふと出た言葉に自分でびっくりする。
(僕...今なんて言った?こんなのいつもの事なのに...なんでこんなにモヤモヤするんだろう?)
今は悠に会いたくない。気づかれる前に早足で教室を後にした。
モヤモヤは残ったままあっという間に文化祭当日を迎えた。一般のお客さんも入るため大盛り上がりだった。
「ひとまず休憩!皆お疲れ様!」
「凪おつかれ」
「ナナミお疲れ様。どうだった?」
「めっちゃ楽しかったよ!脅かす側ってやった事なかったけどお客さんに楽しんでもらえて満足そうに帰っていくのを見るのすごい嬉しかった」
「分かる!なんかやりがいあるよね!ナナミはこの後休みだよね?文化祭楽しんでね!」
「ありがとう。凪は休みじゃないの?」
「受付の子で休みが出ちゃったから代わりに受付に残る事にしたんだ」
「そうなんだ。せっかくの文化祭なのに勿体ない」
「だね〜。でも僕が決めたことだし問題ない!」
心配してくれてるナナミにグッドポーズをした。これもリーダーとしての責務だし!
「そっか。無理しないでね」
「うん」
ナナミと別れた後無意識に悠の姿を探した。教室の隅で女の子達に囲まれている。あのテストの日以来悠は僕以外の人とも話すようになった。悠もお化けのコスプレをしているが似合ってるわカッコよすぎるわで謎にキラキラして見えた。
(悠は本当に何着ても似合うからずるいよなぁ)
そんな事を思いながらボーッとしているとお化け屋敷のセットの一部が急に崩れてきた。
「え?」
目を瞑って衝撃に備えたが思っていたより痛みを感じなかった。おそるおそる目を開けると僕を庇ったのか目の前に悠がいた。
「悠!大丈夫?」
「うん。平気。凪は怪我してない?」
「僕は大丈夫だよ。てか腕見せて!」
僕を庇った時腕でセットを押さえたのだろう、案の定悠の腕は赤く腫れていた。そんな、僕のせいで。今にも泣きそうになっていると悠が「そんな顔すんなよ。お前のせいじゃねぇから」と言って優しく頭を撫でてきた。こんな時まで優しくするなんて僕に甘すぎるよ...
「ひとまず保健室行こう」
「大袈裟。これくらい大丈夫だって」
「ダメだよ!ちゃんと診てもらってきて!」
「...分かった」
僕の圧に負けたのか素直に保健室に向かった悠。その間悠はクラスの人達に土下座並に謝られていたが「気にすんな」と微笑んでいた。
午後も変わらず受付と教室内の見回りなど慌ただしくしていると悠が帰ってきた。
「悠!大丈夫?」
「大丈夫。湿布も貼ってもらったし安静にしてれば平気だって」
「そっか。良かった」
僕のせいで悠が怪我でもしたら一生自分を恨んでいたに違いない。
「凪は午後は休みじゃなかったっけ?」
「あ、うん。その予定だったんだけど、人手不足で急遽手伝う事にしたんだ。悠は文化祭でも回ってゆっくり休んでてよ」
「そうなんだ。じゃあ俺も残る」
「え?別に大丈夫なのに」
「ここ座ってていい?さっきクラスの奴から聞いたんだけど俺は客寄せにもなるらしいからそれが本当ならもっと繁盛すると思う。それにただ俺が凪といたいだけなんだけど...ダメ?」
「別にダメじゃないけど...。じゃあ受付手伝ってもらおうかな?」
「おっけ」
こうして二人で受付をする事になった。
ていうか悠、さっきサラッとかっこいい事言わなかった...?『ただ俺が凪といたいだけ』ってどういう?悠の言葉が脳内を駆け巡っていた僕は一人受付どころではなかった。
悠も何事もなく帰ってきて文化祭も無事大成功で終わった。今は後夜祭中、皆お互いの頑張りを祝し盛大に賑わっていた。そんな中僕は一人になりたくて近くの階段の踊り場に来ていた。
結局悠には怪我させちゃうし、助けられてばかりだし情けない。
「凪、こんなとこで何してんの?」
「悠、ちょっと考え事」
「何?悩みでもあんの?俺で良かったら聞くけど」
「え〜っと。そんな大したことじゃないから大丈夫!」
気まずくてつい目を逸らしてしまった。悠の事で悩んでます、なんて本人に言えるわけない。
「そ。まぁ言いたくないなら無理に聞かない。でもしんどくなったらちゃんと頼れよ。いつでも聞くから」
「うん。ありがとう」
「そういえば、はいこれ」
そう言って悠は僕の頭に何かを付けた。それは文化祭で使うかもと買っておいた猫のカチューシャだった。
「ふふっ。可愛い」
「....!バカにしてる...?」
照れ隠しで聞いてみた。
「いや、ほんとに思ってる。すげぇ似合ってて可愛い」
「....あ、ありがとう」
あぁ、本当に僕はこの笑顔に弱い。心臓の音が悠にも聞こえそうなくらい大きく高鳴っていた。
「てか顔赤くね?やっぱ具合でも悪い?」
そう言いながら悠は顔を近づけてきた。それが余計に僕の心臓を跳ね上がらせた。
「ち、違うよ!なんでもない...」
「そう?あ、凪これあげる」
「これって...」
そう言って渡されたのは他のクラスで売られていたチーズボールだった。
「凪チーズ好きでしょ?だから喜んでくれるかなって保健室行った帰りに買ってきといた」
「いいの!すっごい嬉しい!ありがとう悠!」
なかなか文化祭を周れなかったから嬉しさについ顔が綻んでしまう。そんな僕を見てなんだか悠は嬉しそうだった。
「やっと笑った」
「え?」
「いや、ずっと元気なかったから買ってきて正解だったなぁって思って。凪を笑顔にできて良かった。凪が笑うと俺も嬉しいから」
「...それは僕もだよ。悠が笑ってると僕も嬉しい!」
「そっか。こういう事は両想いになれるのにな...」
「ん?何か言った?」
「なんでもねぇよ」
最後ボソッと言われた言葉は聞き取れなかった。顔を逸らした悠を横目にチーズボールを頬張る。
いろんな事があったけど楽しかった文化祭。そして今までにないくらいドキドキさせられた日。僕の親友はどこまでもずるい人だ。
