テストが無事に終わり今日はテスト返却の日。
「テストどうだった?」
「出来たとは思う。でも前回のトラウマが...!」
前回の中間では絶対赤点回避したと思った教科でしっかり赤点を取ってしまった。という事で今回は一切自信がなかった。
「凪なら大丈夫だよ、ちゃんと頑張ってたんだから」
「ふふっ。なんか悠に言われると大丈夫な気がする!」
キーンコーンカーンコーン。
「あ、チャイム。じゃあ悠また後でね!」
「うん」
「砂山くん」
「はい!」
今回も赤点取ると補習まっしぐらだ...!不安を胸に渡されたテストを1枚ずつ見ていく。
「赤点なし...!」
「凪どうだった?」
「悠、見て!赤点無かったよ!」
様子を見に来てくれた悠に嬉しさのあまり報告をした後に手を握っていた。
「ほんと悠のおかげ!ありがとう〜!」
「別に俺は何もしてないだろ。凪が頑張ったからだよ。よく頑張ったな」
そう言って手を握り返してくれた。そんな他愛もない会話をしていると啓太が悠に突進してきていたが悠は綺麗に避けたため啓太が転ぶ羽目に...。
「って避けんなよ!」
「ぶつかりそうだったから避けただけだろ」
「凪なら受け止めるのに?」
「凪は特別」
「ん?特別...?」
「あ、いや、なんでもない。忘れて」
悠は慌てて訂正していた。僕が一番の友達っていう意味だよね。そんなに慌てなくてもいいのに。
「まったく。目の前でイチャつくなよな」
「どこをどう見たらイチャついてるように見えるの?」
「ま、そんな事より。桐谷!テスト無事赤点回避出来たわ!ほんと桐谷のおかげ。あんがとさん!」
「別に。凪に頼まれたからやっただけ」
「ほんと凪の頼みだけは快く引き受けるよなぁ。そんな桐谷と凪にお願いがある!」
「「お願い?」」
二人揃って首を傾げた。
「そう!今週末に推しのライブがあるんだけどさ、連番予定の奴が来れなくなっちゃって。チケット取ってるから二人も行かね?ほら、二人とも推しとかいねぇじゃん!いい機会だと思ってさ!」
「ライブか〜?確かに行く機会ないかも。試しに行ってみるのもありかもね!」
「え?凪行くの?」
「うん?貴重な経験ということで!」
僕がライブに行くことがそんなにびっくりしたのかな?悠は黙りこくってしまった。
そして少しの沈黙の後...
「じゃあ、俺も行く」
「おっしゃ!じゃあ二人とも予定空けといてなー!」
その日の帰り道、ライブという未知の世界に心躍らせながら帰路についていた。
「ライブってどんな感じなんだろう?なんかワクワクするね!」
「そうだね」
「でも悠が行くなんて珍しい。人混み苦手なのに」
「まぁ...俺は気が気じゃないんで」
「え?なんで?」
「....。」
悠は気まずそうに顔を逸らした。また少し耳が赤くなってるのは気のせいだろうか?
ライブ前に僕たちは勉強という名の啓太主催の推しの鑑賞会をしていた。啓太の推しは今中高生に人気の三人組グループらしい。おすすめの歌や動画を悠と並んで見ていた。
「二人はどの子が好み?俺の推しはやっぱセンターの瑞希ちゃんかな!」
「うーん。皆可愛くていい人そうだけど、好きになるならやっぱり内面までしっかり知ってからじゃないと...」
「真面目か!じゃあ俺が一人一人魅力を語ってやんよ!」
「あ、ありがとう。それはまたの機会に...!」
啓太は推しの話をし出すと止まらなくなるし、僕の知識不足でいつも途中からついていけなくなってしまう。だから僕は動画を見て彼女たちの事を知ることにした。
「そう?じゃあ桐谷は?」
そういえば悠は以前『好きになった人がタイプ』って言ってたなぁ。という事は誰を選ぶかによって好みが分かるのでは!僕も興味津々で悠の言葉に耳を傾けていた。
「いないな。やっぱ俺にとって今好きな人以上はいない」
そう即答で言い放っていた。
「ほんと相変わらずだな」
「え?驚かないの?」
「え?だってこいつ分かりやすいじゃん!な!」
「うるさい」
肩を組もうとする啓太とそれを呆れた顔で振りほどいている悠。てっきり驚くとばかり思っていたからさも当然のように言われて驚いた。気づいてないのはもしかして僕だけ?悠ってそんなに分かりやすいのかな?僕が知らない悠を他の人が知っている。その事実にまたモヤッとしてしまった。
悠にここまで言わせて好きにさせるなんて一体どんな人なんだろう?
(悠にそこまで好かれるなんて羨ましい)
なんて思ってしまった。
啓太と別れた後近くの海に寄ることにした。そこでは小さなお祭りをやっていたらしくいろんな屋台が並んでいるのが見えた。いつもなら屋台に夢中になるのに僕はそれ所ではなく今は悠をただ凝視していた。
「さっきから何見てんの?俺、顔になんかついてる?」
「え?あ、いやごめん。そうじゃなくて、悠分かりやすいって言われてたから悠の事ずっと見てたら何か分かるかなって」
「ずっと見てたって分かんねぇよ。てかあんま見ないで...」
「あ、ごめん!まじまじ人に見られるのは嫌だよね」
「そうじゃなくて!こっちの話。それに凪は俺が落ち込んだ時いつも気づいてくれんじゃん」
「それとこれとは別じゃない?その時は悠顔に書いてるもん」
「なんて?」
「俺、今、辛いって」
「ふっ。またそれかよ」
「笑わないでよ〜」
「ごめん。でもそんな事気づいてくれんのはいつも凪だけだからすげぇ嬉しい。ほんとお前は変わんないよな」
「そ、そう?」
「うん。だからそれだけで充分だよ」
悠が落ち込んでる時に気づくのって僕だけなんだ。なんかそれは嬉しいかも。そう思ってる時悠が辺りをキョロキョロし始めた。
「どうしたの?」
「いや、なんか声聞こえね?」
「声?」
そう言われて耳をすませてみると確かに遠くから泣き声が聞こえてきた。
「ほんとだ!どこだろ?」
「行ってみよ」
声のする方へと向かうと女の子が一人でうずくまっていた。
「どうした?」
「ママ...どこ?」
「迷子みたいだね。さっき本部テントがあったから一旦そこまで連れてってみる?」
「だな」
そうして悠は女の子に向き直り
「一人で怖かったよな。でももう俺らがいるから一人じゃない、大丈夫。俺らがお母さん見つけるから、もう泣くな」
そう優しく頭を撫でながら話しかけていた。女の子は安心したのか泣きやみ悠に甘えていた。
(ふふっ。可愛い。悠といると安心するの分かるなぁ〜)
そう思いながら女の子をおんぶした悠と一緒に本部テントまで歩き出した。
本部テントへ到着してから数時間後。
「ママ!」
「良かった無事で!ご迷惑をおかけしてすみません。ありがとうございました。お詫びに何か...」
「別に良いですよ。良かったなお母さん見つかって。もう迷子になんなよ」
「ありがとうお兄ちゃん達!バイバイ!」
「「バイバイ」」
「悠ってやっぱかっこいいね」
女の子達を見送りながらふと思った事を口にしていた。
「え?何急に?」
「だって誰も気づかなかった声に気づいてサラッと助けてあげたり、不安そうだった女の子の事泣き止ませて安心させてて。そんな事簡単に出来るような事じゃないから惚れ直しちゃう」
「は?それどういう...」
「ん?あ、変な意味とかじゃなくて!改めて尊敬しちゃうなぁって意味で!」
「....お前...あんまそういう事誰にでも言うなよ」
「言わないよ、悠にしか思わないし」
「....あっそ」
悠は落ち込んだかと思うと今度は少し嬉しそうにでも照れくさそうにしていた。
(悠もこんな表情するんだ...!)
初めて知る悠の一面を見れるのって嬉しいなぁ。
そして迎えたライブ当日。ライブ会場の場所が分からず迷子になっていて5分ほど遅れてしまった。急がなきゃ!
「おーい!凪、桐谷!こっちこっち!」
「ごめん遅くなった!」
「良いってことよ。今日は来てくれてありがとな!はいこれ、ペンライト」
そう言って差し出されたのは三本のペンライト。
「え?三本?」
てっきりペンライトは1本が当たり前なのかと思っていたから少し驚いた。
「おう!俺の推しグルは三人組のグループでお前たちは初めてだから箱推しって事で!あ!俺は別に同担拒否とかじゃないから誰に沼ってくれても良いぜ!」
「は、箱推し...?同担拒否?沼?」
アイドル業界の言葉だろうか?そこら辺に疎い僕には何を言ってるのかよく分からなかった。横にいた悠を盗み見したが悠もあまり理解してないようだった。だが楽しそうな啓太のテンションを損ねてはいけないと思い分からない事はそっと胸に閉まっておくことにした
ライブが始まると最初からすごい盛り上がりでその熱気に圧倒される。この場にいる誰もがステージ上の彼女達に釘付けで楽しそうに笑っていた。彼女達自身もキラキラしていて歌や演出でその場にいる全員を楽しませていた。アイドルって凄いなぁ。僕もその瞬間は一人のファンとして目一杯楽しんでいた。横にいる悠に視線を向けるといつもみたいなクールな表情で彼女達を見ていた。
(悠がアイドルだったらきっとかっこいいんだろうなぁ)
悠を見ながらそんな事まで考え出していた。
「ライブどうだったよ?」
「すっごい楽しかったよ!ライブってあんなに盛り上がるんだね。今もまだあの熱気が冷めないよ!」
「だろ〜!また呼んでやるから。でその時は完全に沼らせてやるからな、覚悟しとけ!」
「うん、またね」
まだ少し余韻というものが抜けない状態の僕に反して悠は少し疲れているのかいつもより元気がないように見えた。
「悠はライブどうだった?」
「楽しかったよ。凪はあの子達の事好きになった?」
「え?ううん。楽しかったけど沼る?まではなかったかな」
「そうなんだ」
そう言う悠の表情は少し安心しているように見えて明るくなったようにも思えた。
「でもね、悠がアイドルだったらなぁって想像しちゃったかな」
「俺がアイドル...?絶対ねぇな」
「ですよね〜」
想像通りの返答につい笑ってしまった。
「もし俺がアイドルだったら凪は俺の事好きになってくれた?」
「うん!悠だったら推してたかも!悠の美貌とイケメンすぎる性格を併せ持ってたら世界中虜になること間違いなし!めちゃめちゃ応援する!」
「大袈裟。俺そこまで魅力的じゃねぇよ。凪は俺を買い被りすぎ」
「そんな事ないよ!悠は逆に自己肯定感低すぎるよ!もっと自信もって!悠の良さも凄さも僕が保証する!」
「じゃあその凪が保証してくれた美貌とイケメンすぎる性格で他の誰にも目移り出来なくなるくらい凪を俺の虜にしてあげる」
人差し指を口元に当て優しい声でウインクしながらそう言う悠が本当にアイドルみたいにかっこよくてつい本気にしてしまいそうになる。
「そ、そういう事いうと変に勘違いしちゃう人いるかもよ!」
ついぎこちなくなってしまった。
「ふっ。凪は勘違いしてくれるの?凪になら俺は大歓迎」
「ど、どういう意味?」
「さぁね」
そうからかう様に微笑む悠から目が離せなかった。もし悠がアイドルだったらって話だよね?冗談だって分かっててもドキドキしてしまう。
(今日はライブを見に来たはずなのに、なんで彼女たちより悠にドキドキさせられてるの!)
あの噂以来妙に悠を意識してしまう。今までこんな事なかったのになんでこんな気持ちになるんだろう?
「テストどうだった?」
「出来たとは思う。でも前回のトラウマが...!」
前回の中間では絶対赤点回避したと思った教科でしっかり赤点を取ってしまった。という事で今回は一切自信がなかった。
「凪なら大丈夫だよ、ちゃんと頑張ってたんだから」
「ふふっ。なんか悠に言われると大丈夫な気がする!」
キーンコーンカーンコーン。
「あ、チャイム。じゃあ悠また後でね!」
「うん」
「砂山くん」
「はい!」
今回も赤点取ると補習まっしぐらだ...!不安を胸に渡されたテストを1枚ずつ見ていく。
「赤点なし...!」
「凪どうだった?」
「悠、見て!赤点無かったよ!」
様子を見に来てくれた悠に嬉しさのあまり報告をした後に手を握っていた。
「ほんと悠のおかげ!ありがとう〜!」
「別に俺は何もしてないだろ。凪が頑張ったからだよ。よく頑張ったな」
そう言って手を握り返してくれた。そんな他愛もない会話をしていると啓太が悠に突進してきていたが悠は綺麗に避けたため啓太が転ぶ羽目に...。
「って避けんなよ!」
「ぶつかりそうだったから避けただけだろ」
「凪なら受け止めるのに?」
「凪は特別」
「ん?特別...?」
「あ、いや、なんでもない。忘れて」
悠は慌てて訂正していた。僕が一番の友達っていう意味だよね。そんなに慌てなくてもいいのに。
「まったく。目の前でイチャつくなよな」
「どこをどう見たらイチャついてるように見えるの?」
「ま、そんな事より。桐谷!テスト無事赤点回避出来たわ!ほんと桐谷のおかげ。あんがとさん!」
「別に。凪に頼まれたからやっただけ」
「ほんと凪の頼みだけは快く引き受けるよなぁ。そんな桐谷と凪にお願いがある!」
「「お願い?」」
二人揃って首を傾げた。
「そう!今週末に推しのライブがあるんだけどさ、連番予定の奴が来れなくなっちゃって。チケット取ってるから二人も行かね?ほら、二人とも推しとかいねぇじゃん!いい機会だと思ってさ!」
「ライブか〜?確かに行く機会ないかも。試しに行ってみるのもありかもね!」
「え?凪行くの?」
「うん?貴重な経験ということで!」
僕がライブに行くことがそんなにびっくりしたのかな?悠は黙りこくってしまった。
そして少しの沈黙の後...
「じゃあ、俺も行く」
「おっしゃ!じゃあ二人とも予定空けといてなー!」
その日の帰り道、ライブという未知の世界に心躍らせながら帰路についていた。
「ライブってどんな感じなんだろう?なんかワクワクするね!」
「そうだね」
「でも悠が行くなんて珍しい。人混み苦手なのに」
「まぁ...俺は気が気じゃないんで」
「え?なんで?」
「....。」
悠は気まずそうに顔を逸らした。また少し耳が赤くなってるのは気のせいだろうか?
ライブ前に僕たちは勉強という名の啓太主催の推しの鑑賞会をしていた。啓太の推しは今中高生に人気の三人組グループらしい。おすすめの歌や動画を悠と並んで見ていた。
「二人はどの子が好み?俺の推しはやっぱセンターの瑞希ちゃんかな!」
「うーん。皆可愛くていい人そうだけど、好きになるならやっぱり内面までしっかり知ってからじゃないと...」
「真面目か!じゃあ俺が一人一人魅力を語ってやんよ!」
「あ、ありがとう。それはまたの機会に...!」
啓太は推しの話をし出すと止まらなくなるし、僕の知識不足でいつも途中からついていけなくなってしまう。だから僕は動画を見て彼女たちの事を知ることにした。
「そう?じゃあ桐谷は?」
そういえば悠は以前『好きになった人がタイプ』って言ってたなぁ。という事は誰を選ぶかによって好みが分かるのでは!僕も興味津々で悠の言葉に耳を傾けていた。
「いないな。やっぱ俺にとって今好きな人以上はいない」
そう即答で言い放っていた。
「ほんと相変わらずだな」
「え?驚かないの?」
「え?だってこいつ分かりやすいじゃん!な!」
「うるさい」
肩を組もうとする啓太とそれを呆れた顔で振りほどいている悠。てっきり驚くとばかり思っていたからさも当然のように言われて驚いた。気づいてないのはもしかして僕だけ?悠ってそんなに分かりやすいのかな?僕が知らない悠を他の人が知っている。その事実にまたモヤッとしてしまった。
悠にここまで言わせて好きにさせるなんて一体どんな人なんだろう?
(悠にそこまで好かれるなんて羨ましい)
なんて思ってしまった。
啓太と別れた後近くの海に寄ることにした。そこでは小さなお祭りをやっていたらしくいろんな屋台が並んでいるのが見えた。いつもなら屋台に夢中になるのに僕はそれ所ではなく今は悠をただ凝視していた。
「さっきから何見てんの?俺、顔になんかついてる?」
「え?あ、いやごめん。そうじゃなくて、悠分かりやすいって言われてたから悠の事ずっと見てたら何か分かるかなって」
「ずっと見てたって分かんねぇよ。てかあんま見ないで...」
「あ、ごめん!まじまじ人に見られるのは嫌だよね」
「そうじゃなくて!こっちの話。それに凪は俺が落ち込んだ時いつも気づいてくれんじゃん」
「それとこれとは別じゃない?その時は悠顔に書いてるもん」
「なんて?」
「俺、今、辛いって」
「ふっ。またそれかよ」
「笑わないでよ〜」
「ごめん。でもそんな事気づいてくれんのはいつも凪だけだからすげぇ嬉しい。ほんとお前は変わんないよな」
「そ、そう?」
「うん。だからそれだけで充分だよ」
悠が落ち込んでる時に気づくのって僕だけなんだ。なんかそれは嬉しいかも。そう思ってる時悠が辺りをキョロキョロし始めた。
「どうしたの?」
「いや、なんか声聞こえね?」
「声?」
そう言われて耳をすませてみると確かに遠くから泣き声が聞こえてきた。
「ほんとだ!どこだろ?」
「行ってみよ」
声のする方へと向かうと女の子が一人でうずくまっていた。
「どうした?」
「ママ...どこ?」
「迷子みたいだね。さっき本部テントがあったから一旦そこまで連れてってみる?」
「だな」
そうして悠は女の子に向き直り
「一人で怖かったよな。でももう俺らがいるから一人じゃない、大丈夫。俺らがお母さん見つけるから、もう泣くな」
そう優しく頭を撫でながら話しかけていた。女の子は安心したのか泣きやみ悠に甘えていた。
(ふふっ。可愛い。悠といると安心するの分かるなぁ〜)
そう思いながら女の子をおんぶした悠と一緒に本部テントまで歩き出した。
本部テントへ到着してから数時間後。
「ママ!」
「良かった無事で!ご迷惑をおかけしてすみません。ありがとうございました。お詫びに何か...」
「別に良いですよ。良かったなお母さん見つかって。もう迷子になんなよ」
「ありがとうお兄ちゃん達!バイバイ!」
「「バイバイ」」
「悠ってやっぱかっこいいね」
女の子達を見送りながらふと思った事を口にしていた。
「え?何急に?」
「だって誰も気づかなかった声に気づいてサラッと助けてあげたり、不安そうだった女の子の事泣き止ませて安心させてて。そんな事簡単に出来るような事じゃないから惚れ直しちゃう」
「は?それどういう...」
「ん?あ、変な意味とかじゃなくて!改めて尊敬しちゃうなぁって意味で!」
「....お前...あんまそういう事誰にでも言うなよ」
「言わないよ、悠にしか思わないし」
「....あっそ」
悠は落ち込んだかと思うと今度は少し嬉しそうにでも照れくさそうにしていた。
(悠もこんな表情するんだ...!)
初めて知る悠の一面を見れるのって嬉しいなぁ。
そして迎えたライブ当日。ライブ会場の場所が分からず迷子になっていて5分ほど遅れてしまった。急がなきゃ!
「おーい!凪、桐谷!こっちこっち!」
「ごめん遅くなった!」
「良いってことよ。今日は来てくれてありがとな!はいこれ、ペンライト」
そう言って差し出されたのは三本のペンライト。
「え?三本?」
てっきりペンライトは1本が当たり前なのかと思っていたから少し驚いた。
「おう!俺の推しグルは三人組のグループでお前たちは初めてだから箱推しって事で!あ!俺は別に同担拒否とかじゃないから誰に沼ってくれても良いぜ!」
「は、箱推し...?同担拒否?沼?」
アイドル業界の言葉だろうか?そこら辺に疎い僕には何を言ってるのかよく分からなかった。横にいた悠を盗み見したが悠もあまり理解してないようだった。だが楽しそうな啓太のテンションを損ねてはいけないと思い分からない事はそっと胸に閉まっておくことにした
ライブが始まると最初からすごい盛り上がりでその熱気に圧倒される。この場にいる誰もがステージ上の彼女達に釘付けで楽しそうに笑っていた。彼女達自身もキラキラしていて歌や演出でその場にいる全員を楽しませていた。アイドルって凄いなぁ。僕もその瞬間は一人のファンとして目一杯楽しんでいた。横にいる悠に視線を向けるといつもみたいなクールな表情で彼女達を見ていた。
(悠がアイドルだったらきっとかっこいいんだろうなぁ)
悠を見ながらそんな事まで考え出していた。
「ライブどうだったよ?」
「すっごい楽しかったよ!ライブってあんなに盛り上がるんだね。今もまだあの熱気が冷めないよ!」
「だろ〜!また呼んでやるから。でその時は完全に沼らせてやるからな、覚悟しとけ!」
「うん、またね」
まだ少し余韻というものが抜けない状態の僕に反して悠は少し疲れているのかいつもより元気がないように見えた。
「悠はライブどうだった?」
「楽しかったよ。凪はあの子達の事好きになった?」
「え?ううん。楽しかったけど沼る?まではなかったかな」
「そうなんだ」
そう言う悠の表情は少し安心しているように見えて明るくなったようにも思えた。
「でもね、悠がアイドルだったらなぁって想像しちゃったかな」
「俺がアイドル...?絶対ねぇな」
「ですよね〜」
想像通りの返答につい笑ってしまった。
「もし俺がアイドルだったら凪は俺の事好きになってくれた?」
「うん!悠だったら推してたかも!悠の美貌とイケメンすぎる性格を併せ持ってたら世界中虜になること間違いなし!めちゃめちゃ応援する!」
「大袈裟。俺そこまで魅力的じゃねぇよ。凪は俺を買い被りすぎ」
「そんな事ないよ!悠は逆に自己肯定感低すぎるよ!もっと自信もって!悠の良さも凄さも僕が保証する!」
「じゃあその凪が保証してくれた美貌とイケメンすぎる性格で他の誰にも目移り出来なくなるくらい凪を俺の虜にしてあげる」
人差し指を口元に当て優しい声でウインクしながらそう言う悠が本当にアイドルみたいにかっこよくてつい本気にしてしまいそうになる。
「そ、そういう事いうと変に勘違いしちゃう人いるかもよ!」
ついぎこちなくなってしまった。
「ふっ。凪は勘違いしてくれるの?凪になら俺は大歓迎」
「ど、どういう意味?」
「さぁね」
そうからかう様に微笑む悠から目が離せなかった。もし悠がアイドルだったらって話だよね?冗談だって分かっててもドキドキしてしまう。
(今日はライブを見に来たはずなのに、なんで彼女たちより悠にドキドキさせられてるの!)
あの噂以来妙に悠を意識してしまう。今までこんな事なかったのになんでこんな気持ちになるんだろう?
