僕と悠はずっと親友。この関係は変わることは無いと思っていた。
「おはよう悠!」
「おはよう凪。今日も眠そうだね」
「うん。昨日遅くまでゲームしてて。気づいたら日またいでた!」
「またか。ほんと相変わらずだな」
そう言って微笑む悠の笑顔が僕は大好きだ。
僕と悠は中学からの親友だ。中学の時に友達になって以来僕にとって悠は誰よりも特別で大事な存在になった。悠を守りたい、笑顔にしたい。悠が笑って過ごせたらそれだけで...。悠の幸せを誰よりも願っていた。
学校への通学路を二人並んで歩いていると後ろから元気な挨拶が飛んできた。
「おはよう!凪!悠!」
「ナナミ!おはよう」
「おはよう」
「相変わらず仲良しだね」
彼女は今井ナナミ。悠と同じく中学からの友達だ。悠とナナミは成績優秀、スポーツ万能、おまけに見た目も性格も良い。だから二人は学校中でモテていた。そんな二人がなぜ僕なんかと仲良くしてくれているのか未だに謎だ。それに二人は以前「付き合っている」という噂があった。
「どうした凪?」
「え?あ、ううん。そういえば二人付き合ってるって噂あったよなぁって思い出してて」
「あぁ。そういえばそんな事もあったっけ?そもそも私たちお互いに特別なんて思ってないし付き合うなんてありえないよ。ただの友達にすぎないし。ちなみに凪はその噂聞いてどう思った?」
「え?二人なら付き合っててもおかしくないしお似合いだと思ったよ!」
「...。」
「?」
悠はたまにすごく切なそうな顔をする時がある。理由は分からないが僕何か変なこと言ったかな?
「おはようさん凪」
「おはよう啓太」
彼は巴山啓太。彼も同じく中学の友達で何かと僕と悠の事を気にかけてくれる。基本誰とも話さない悠も僕以外で唯一話す友達みたいだった。
「今日の数学の小テストの勉強してきた?」
「あれ?それって今日だっけ?」
「そうだよ。昨日言われただろ?」
「忘れてた。悠助けて!」
「これで何回目?まぁ別にいいけど」
「ありがとう!」
少し遅れて教室に来た悠に助けを求めた。呆れながらも嫌な顔せずいつも僕を助けてくれる。悠は一見無愛想でぶっきらぼうに見えるけど本当はすごく優しい子。男子から疎まれる事が多い悠は昔から根も葉もない噂を流される事が多かった。最近は悠に対する変な噂もなくなって平和に過ごしていた。
そんな時だ。あの噂を聞いたのは……。
「凪!」
その声に振り向いた先には慌てた様子の啓太が走ってこちらに向かってきていた。
「お、おはよう啓太。どうしたの?」
「掲示板見た?この噂本当?」
「噂?え...なにこれ?」
うちの学校には生徒が匿名で書き込める掲示板があった。そこに書かれていたのは『桐谷悠と砂山凪は付き合っている』というものだった。なぜこんな噂が流れるのか検討もつかなかった。
「なんでこんなの...。そんなわけないじゃん!僕たちはただ仲が良いだけで、ただの親友だよ」
きっと悠をよく思わない人の仕業だろう。
(悠に知られる前になんとかしなきゃ!)
そう思ったはいいものの。一切検討がつかず頭を悩ませていたら四限になっていた。体育でバスケをして女子から黄色い声援を集めてる悠の姿をボーッと眺めながら噂について考えていた。
(やっぱり悠はモテるなぁ。悠が僕を好きになるなんてありえないよ)
そう気持ちを打ち消していると啓太に声をかけられた。
「何親友に見とれてるんだよ!」
「啓太。別に見とれてないよ」
「なに?もしかして噂の事気にしてんの?」
「うーん。あれ以来女子からの視線は痛いし、悠に知られる前になんとかしたいしでどうしようかずっと悩んでるんだよ。悠が僕を好きになるわけないって啓太も思うよね!」
「なるほどね。でも意外にそう思ってるのは凪だけかもよ?」
「え?」
「だって桐谷、凪にだけは優しいじゃん。凪にだけは心を許してるっていうか。特別扱いって感じ?」
「悠が優しいのは僕にだけじゃないよ。悠は元から優しいし、気配り上手だし、困ってる人放っておけないし。うまく表に出せないだけで悠はいつだって皆に優しいよ?」
「まぁ凪がそう言うならそういう事でいいか。とにかく早くどうにかしなきゃって思うかもだけどこういうのは波風たてずにじっとしてるのが一番よ!そうすれば噂なんて消えてくって!」
「そうかな?」
(まぁ確かにそっとしておくのが一番?)
「何話してるの?次凪のチーム」
「お!ありがとう悠。いやぁ悠がどれだけ優しい人かを熱弁してただけ!」
「なんだそれ?あんま恥ずいから褒めんなよ」
「えへへ。ごめんて。じゃあ行ってきます!」
「おう。頑張れよ」
凪のチームが試合中...
「何?嫉妬しちゃいましたかな桐谷くん?」
「別に。凪が人と仲良いのはいつもの事だし。お前が凪に特別な感情を抱いてないのも知ってるから」
「わかんないよ〜?あいつ本当人たらしだし気持ちが変わる時もあるかもよ〜?」
「ニヤニヤするな。もしそうなったとしても凪の隣は譲らない」
「...あなたも相変わらずの重さですね〜。言わないの?自分の気持ち」
「...言えるわけないだろ。言ったって困らせるだけなら言わない方がいい」
「凪ならきっと受け止めてくれると思うけど?」
「俺もそう思う。だからこそ言えない。あいつに無駄に気を遣わせたくないんだ」
「ふ〜ん。お前の気持ち分からなくもないけどあいつにもいつか特別な人が出来る。そん時お前は後悔しないわけ?」
「...。」
「まぁ、無理強いはしねぇけど」
(俺自身が重いのも凪にもいつか彼女が出来る事もそんなの俺が一番分かってる...だから苦しいんだよ、行き場をなくしたこの想いは...)
もう昼休みか。考え事しすぎて授業全然集中出来なかった。やっぱり放っておくのが良いのかな?
「ねぇ、砂山くんちょっといい?」
「うん」
そんなことを考えていたらクラスの女子に呼び止められた。僕になんの話だろう?
「あの噂本当?」
噂とはきっと僕たちが付き合っているということだろう。
「いや、付き合ってない。僕たちはただの親友だよ」
「でも桐谷くんって砂山くんにだけは特別優しいからもしかしたらって思っちゃうだよね」
そういえば啓太にも同じこと言われたな。僕からしたらこれが普通だけど他の人からしたらそう見えちゃうのかな?
「悠はみんなに平等に優しいよ。ただ僕には心を許してくれてるだけで特別扱いされてるわけじゃないと思う」
「そうなんだ」
「この噂変に広めないでね。この事知ったらきっと悠が傷つくから」
「うん」
「ありがとう」
お礼を言ってその場を去った。
その後も教室に帰るまで何人もの女子から同じような事を聞かれた。しかもみんな口を揃えて「悠は僕には特別優しいから」と言っていた。ここまで言われるとそうなのかなって思っちゃうよ。
「今日はモテモテだな凪」
「人生で一度きりのモテ期だね!ってそうじゃなくて!」
「噂の事だろ?試しにこの噂本当にしてみれば」
「というと...?」
「だから本当に付き合ってみればって言ってんの」
「そんなのありえないよ!だって悠は僕なんかには勿体ないような人だよ!なんの取り柄もない僕と付き合ってるなんて悠の印象に傷をつけちゃうよ!悠にはもっとお似合いな人がいるって!」
「気にするとこそこ?」
「え?」
「いや、普通先に男同士だからとか気にするのかと思ってたから」
「言われてみれば。でも僕そういうのに偏見とかなくて。悠が男の人を好きでも好きなら応援するよ。だって悠が誰を好きでも他人が否定する権利なんてないし。誰が誰を好きになるかなんてその人の自由じゃん?」
「お前まじで良い奴だな!なんでモテないんだよ」
「僕がモテると思う?」
「思う!お前みたいな奴を放っておくなんて!まぁでも凪がモテると嫉妬するやつもいるけど...」
「え?そんな物好きな人いないと思うけど」
「お前自分の事下げすぎ。もっと自信持てよ!」
「自信って言われても...」
僕は顔や性格が良い訳でも勉強やスポーツが出来るわけでもない。何の特技もないのに自信を持てと言うほうが難しいよ。
「砂山くん!ちょっといい?」
そんな事を話していると先生に声をかけられた。
「昼休み中にごめんね。次の授業までにこのプリント運んで欲しいのよ」
「分かりました」
「ありがとう。じゃあお願いね」
目の前には大量のプリントの山があった。束になっているからかなりの量に見えて重さもありそうだった。一人で運ぶなら何往復もしないといけなそう。でも他の人に迷惑はかけられないし...。
「よし、頑張ろう!」
『試しにこの噂本当にしてみれば』
プリントを運んでる最中ふと啓太の言葉が頭をよぎった。確かに悠と付き合ったら幸せになれるし、楽しいとも思う。でも...
「悠が僕の事なんか好きになるわけないよ」
「俺がなんだって?」
「え!悠!」
悠の事を考えていたら目の前に現れてびっくりした。心の声が出てしまった。悠に聞こえてたかな?
「俺になんか用だった?」
あれ、聞こえて無さそう...?なら大丈夫か。
「ううん。なんでもないよ」
「そう?てかそのプリントどうした?」
「あ、これ次の授業までに運んで欲しいらしくて」
「じゃあ俺も手伝う。どうせ大量にあるのに一人でやろうとしてるんだろ?」
「なんで分かるの!」
「図星か。お前は分かりやすいの。で、残りのプリントは?」
結局悠にも一緒にプリントを運んでもらう事にした。にしても悠って僕の事よく分かってるんだ。まさか見抜かれると思ってなかったからびっくりしてしまった。
「これで全部!ありがとう悠。助かったよ〜」
「役に立てたなら何より」
「じゃ、そろそろ戻ろっか」
そう言って歩き出そうとすると急に腕を引っ張られた。
「え...?」
気づくと教室にあるカーテンの裏に隠れて悠に抱きしめられていた。
(ん?これは...どういう状況?)
一人頭がパニックになっていると教室の外から声が聞こえた。
「あれ。砂山くんさっきこっちに来たと思ったんだけど」
「聞きたいことあったのにどこ行っちゃったんだろう?」
女子の声だ。きっとまた噂のことだろう。でも隠れる意味あったのかな?
「ね、ねぇ、悠?」
「しっ。静かに」
この状況について説明を求めようと思ったら悠が片手で僕の口を押さえてきた。
「一旦教室戻ってみる?」
「そうだね」
女子たちはもうどこかへ行ったみたいだ。すると僕の口から悠の手が離れた。
「悪い急に。でも今日ずっと女子から呼び出されてただろ?もしかしたら困ってないかなって思って」
だからわざわざ隠してくれたのか。本当に悠は優しいな。
「ありがとう。確かに少し疲れてたから助かったよ」
「何話してたの?まさか告白...?」
「そんなわけないでしょ!ただ少し相談に乗ってあげてただけ?」
「なら良いけど...」
そういう悠は少し拗ねたような顔をしてるように見えた。
『凪がモテると嫉妬するやつもいるけど』
まさかね...。悠が僕に嫉妬するわけ。
「お!二人とも帰ってきた。移動教室行こうぜ」
手伝いを終え教室へ戻るともう昼休みが終わりに迫った時間だった。
「そういえばさ。俺の友達が最近彼女出来たらしくてずっと惚気話聞かされてまじでうざい」
3人で移動中啓太がそんな話をし始めた。
「彼女か〜。いいね幸せそうで」
「あっちはいいかもしんねぇけど、聞かさせるこっちの身にもなって欲しいよな。てか、凪も彼女とか欲しいんだ?」
「そりゃあね。だって自分だけの特別な人が出来るってだけで人生楽しくなりそうじゃん!憧れるよね!」
「まぁ確かに。てか凪って好きな子とかいんの?」
「それが聞いて!今まで出来たことないんだ!」
「そんな自慢げに言うことか?じゃあ凪に彼女が出来るのはまだまだ先か。出来たら教えろよ!」
「そうだね。出来たらね!」
そういえば悠さっきからずっと無言だな。そう思って悠の方を見ると目を逸らされた。
「凪も彼女とか欲しいんだ」
「うん!」
「そっか」
そう言う悠の顔はすごく辛そうで教室につくまで目が合うことがなかった。不思議に思いながらも何も聞くことが出来なかった。もしかしたら言いたくない事かもしれないし。
その日の帰り道ふと気になっていた事を悠に聞いていた。
「ねぇ。そういえば聞いた事なかったけど、悠モテるのになんで誰とも付き合わないの?もしかして好きな人がいるとか?」
「なんで急にそんな事?」
「えっと...それはその...」
今日の噂といい『そう思ってるのは凪だけかもよ』という啓太の言葉といい、いろいろ気になりすぎて少し探りを入れてみたかった。
「あ、ほら!誰かと付き合ってる事が分かれば妙な噂も流されなくて済むと思うし!それに悠の好きなタイプも純粋に気になる!」
「俺のタイプかぁ。別にないな」
「ないの?」
「うん。ありきたりだけど好きになった人がタイプ。好きな人はいるよ。ずっと片思いだけど...」
「え!悠好きな人いたの!初耳...。しかも片思いなんて。でも悠なら大丈夫だよ!自信もって!」
「ふっ。ありがとう。ねぇ、凪は俺に彼女が出来るの嫌?」
「え?嫌なわけないじゃん。嬉しいよ。悠が幸せになってくれるなら、僕応援するから!」
「...そっか」
あ、また悲しそうな顔。どうしてそんな顔するの?そんな顔させたい訳じゃないのに。
「でも、俺は嫌だよ。凪に彼女ができるの」
「え?それってどういう……」
「だって彼女が出来たらこうして一緒にいられなくなるだろ。友達としての独占欲、的な」
そう微笑む悠の笑顔はいつもよりぎこちなくて何かを隠しているように見えた。
「そういう事。それなら大丈夫だよ!当分彼女できる予定ないし。それに何があっても僕が悠から離れるなんてありえないよ!」
その言葉を聞いて悠は驚いていた様子だがすぐに安心したように微笑んでいた。そう、ありえるわけないんだ。僕が悠から離れる事も、僕たち二人が付き合う事も。
「おはよう悠!」
「おはよう凪。今日も眠そうだね」
「うん。昨日遅くまでゲームしてて。気づいたら日またいでた!」
「またか。ほんと相変わらずだな」
そう言って微笑む悠の笑顔が僕は大好きだ。
僕と悠は中学からの親友だ。中学の時に友達になって以来僕にとって悠は誰よりも特別で大事な存在になった。悠を守りたい、笑顔にしたい。悠が笑って過ごせたらそれだけで...。悠の幸せを誰よりも願っていた。
学校への通学路を二人並んで歩いていると後ろから元気な挨拶が飛んできた。
「おはよう!凪!悠!」
「ナナミ!おはよう」
「おはよう」
「相変わらず仲良しだね」
彼女は今井ナナミ。悠と同じく中学からの友達だ。悠とナナミは成績優秀、スポーツ万能、おまけに見た目も性格も良い。だから二人は学校中でモテていた。そんな二人がなぜ僕なんかと仲良くしてくれているのか未だに謎だ。それに二人は以前「付き合っている」という噂があった。
「どうした凪?」
「え?あ、ううん。そういえば二人付き合ってるって噂あったよなぁって思い出してて」
「あぁ。そういえばそんな事もあったっけ?そもそも私たちお互いに特別なんて思ってないし付き合うなんてありえないよ。ただの友達にすぎないし。ちなみに凪はその噂聞いてどう思った?」
「え?二人なら付き合っててもおかしくないしお似合いだと思ったよ!」
「...。」
「?」
悠はたまにすごく切なそうな顔をする時がある。理由は分からないが僕何か変なこと言ったかな?
「おはようさん凪」
「おはよう啓太」
彼は巴山啓太。彼も同じく中学の友達で何かと僕と悠の事を気にかけてくれる。基本誰とも話さない悠も僕以外で唯一話す友達みたいだった。
「今日の数学の小テストの勉強してきた?」
「あれ?それって今日だっけ?」
「そうだよ。昨日言われただろ?」
「忘れてた。悠助けて!」
「これで何回目?まぁ別にいいけど」
「ありがとう!」
少し遅れて教室に来た悠に助けを求めた。呆れながらも嫌な顔せずいつも僕を助けてくれる。悠は一見無愛想でぶっきらぼうに見えるけど本当はすごく優しい子。男子から疎まれる事が多い悠は昔から根も葉もない噂を流される事が多かった。最近は悠に対する変な噂もなくなって平和に過ごしていた。
そんな時だ。あの噂を聞いたのは……。
「凪!」
その声に振り向いた先には慌てた様子の啓太が走ってこちらに向かってきていた。
「お、おはよう啓太。どうしたの?」
「掲示板見た?この噂本当?」
「噂?え...なにこれ?」
うちの学校には生徒が匿名で書き込める掲示板があった。そこに書かれていたのは『桐谷悠と砂山凪は付き合っている』というものだった。なぜこんな噂が流れるのか検討もつかなかった。
「なんでこんなの...。そんなわけないじゃん!僕たちはただ仲が良いだけで、ただの親友だよ」
きっと悠をよく思わない人の仕業だろう。
(悠に知られる前になんとかしなきゃ!)
そう思ったはいいものの。一切検討がつかず頭を悩ませていたら四限になっていた。体育でバスケをして女子から黄色い声援を集めてる悠の姿をボーッと眺めながら噂について考えていた。
(やっぱり悠はモテるなぁ。悠が僕を好きになるなんてありえないよ)
そう気持ちを打ち消していると啓太に声をかけられた。
「何親友に見とれてるんだよ!」
「啓太。別に見とれてないよ」
「なに?もしかして噂の事気にしてんの?」
「うーん。あれ以来女子からの視線は痛いし、悠に知られる前になんとかしたいしでどうしようかずっと悩んでるんだよ。悠が僕を好きになるわけないって啓太も思うよね!」
「なるほどね。でも意外にそう思ってるのは凪だけかもよ?」
「え?」
「だって桐谷、凪にだけは優しいじゃん。凪にだけは心を許してるっていうか。特別扱いって感じ?」
「悠が優しいのは僕にだけじゃないよ。悠は元から優しいし、気配り上手だし、困ってる人放っておけないし。うまく表に出せないだけで悠はいつだって皆に優しいよ?」
「まぁ凪がそう言うならそういう事でいいか。とにかく早くどうにかしなきゃって思うかもだけどこういうのは波風たてずにじっとしてるのが一番よ!そうすれば噂なんて消えてくって!」
「そうかな?」
(まぁ確かにそっとしておくのが一番?)
「何話してるの?次凪のチーム」
「お!ありがとう悠。いやぁ悠がどれだけ優しい人かを熱弁してただけ!」
「なんだそれ?あんま恥ずいから褒めんなよ」
「えへへ。ごめんて。じゃあ行ってきます!」
「おう。頑張れよ」
凪のチームが試合中...
「何?嫉妬しちゃいましたかな桐谷くん?」
「別に。凪が人と仲良いのはいつもの事だし。お前が凪に特別な感情を抱いてないのも知ってるから」
「わかんないよ〜?あいつ本当人たらしだし気持ちが変わる時もあるかもよ〜?」
「ニヤニヤするな。もしそうなったとしても凪の隣は譲らない」
「...あなたも相変わらずの重さですね〜。言わないの?自分の気持ち」
「...言えるわけないだろ。言ったって困らせるだけなら言わない方がいい」
「凪ならきっと受け止めてくれると思うけど?」
「俺もそう思う。だからこそ言えない。あいつに無駄に気を遣わせたくないんだ」
「ふ〜ん。お前の気持ち分からなくもないけどあいつにもいつか特別な人が出来る。そん時お前は後悔しないわけ?」
「...。」
「まぁ、無理強いはしねぇけど」
(俺自身が重いのも凪にもいつか彼女が出来る事もそんなの俺が一番分かってる...だから苦しいんだよ、行き場をなくしたこの想いは...)
もう昼休みか。考え事しすぎて授業全然集中出来なかった。やっぱり放っておくのが良いのかな?
「ねぇ、砂山くんちょっといい?」
「うん」
そんなことを考えていたらクラスの女子に呼び止められた。僕になんの話だろう?
「あの噂本当?」
噂とはきっと僕たちが付き合っているということだろう。
「いや、付き合ってない。僕たちはただの親友だよ」
「でも桐谷くんって砂山くんにだけは特別優しいからもしかしたらって思っちゃうだよね」
そういえば啓太にも同じこと言われたな。僕からしたらこれが普通だけど他の人からしたらそう見えちゃうのかな?
「悠はみんなに平等に優しいよ。ただ僕には心を許してくれてるだけで特別扱いされてるわけじゃないと思う」
「そうなんだ」
「この噂変に広めないでね。この事知ったらきっと悠が傷つくから」
「うん」
「ありがとう」
お礼を言ってその場を去った。
その後も教室に帰るまで何人もの女子から同じような事を聞かれた。しかもみんな口を揃えて「悠は僕には特別優しいから」と言っていた。ここまで言われるとそうなのかなって思っちゃうよ。
「今日はモテモテだな凪」
「人生で一度きりのモテ期だね!ってそうじゃなくて!」
「噂の事だろ?試しにこの噂本当にしてみれば」
「というと...?」
「だから本当に付き合ってみればって言ってんの」
「そんなのありえないよ!だって悠は僕なんかには勿体ないような人だよ!なんの取り柄もない僕と付き合ってるなんて悠の印象に傷をつけちゃうよ!悠にはもっとお似合いな人がいるって!」
「気にするとこそこ?」
「え?」
「いや、普通先に男同士だからとか気にするのかと思ってたから」
「言われてみれば。でも僕そういうのに偏見とかなくて。悠が男の人を好きでも好きなら応援するよ。だって悠が誰を好きでも他人が否定する権利なんてないし。誰が誰を好きになるかなんてその人の自由じゃん?」
「お前まじで良い奴だな!なんでモテないんだよ」
「僕がモテると思う?」
「思う!お前みたいな奴を放っておくなんて!まぁでも凪がモテると嫉妬するやつもいるけど...」
「え?そんな物好きな人いないと思うけど」
「お前自分の事下げすぎ。もっと自信持てよ!」
「自信って言われても...」
僕は顔や性格が良い訳でも勉強やスポーツが出来るわけでもない。何の特技もないのに自信を持てと言うほうが難しいよ。
「砂山くん!ちょっといい?」
そんな事を話していると先生に声をかけられた。
「昼休み中にごめんね。次の授業までにこのプリント運んで欲しいのよ」
「分かりました」
「ありがとう。じゃあお願いね」
目の前には大量のプリントの山があった。束になっているからかなりの量に見えて重さもありそうだった。一人で運ぶなら何往復もしないといけなそう。でも他の人に迷惑はかけられないし...。
「よし、頑張ろう!」
『試しにこの噂本当にしてみれば』
プリントを運んでる最中ふと啓太の言葉が頭をよぎった。確かに悠と付き合ったら幸せになれるし、楽しいとも思う。でも...
「悠が僕の事なんか好きになるわけないよ」
「俺がなんだって?」
「え!悠!」
悠の事を考えていたら目の前に現れてびっくりした。心の声が出てしまった。悠に聞こえてたかな?
「俺になんか用だった?」
あれ、聞こえて無さそう...?なら大丈夫か。
「ううん。なんでもないよ」
「そう?てかそのプリントどうした?」
「あ、これ次の授業までに運んで欲しいらしくて」
「じゃあ俺も手伝う。どうせ大量にあるのに一人でやろうとしてるんだろ?」
「なんで分かるの!」
「図星か。お前は分かりやすいの。で、残りのプリントは?」
結局悠にも一緒にプリントを運んでもらう事にした。にしても悠って僕の事よく分かってるんだ。まさか見抜かれると思ってなかったからびっくりしてしまった。
「これで全部!ありがとう悠。助かったよ〜」
「役に立てたなら何より」
「じゃ、そろそろ戻ろっか」
そう言って歩き出そうとすると急に腕を引っ張られた。
「え...?」
気づくと教室にあるカーテンの裏に隠れて悠に抱きしめられていた。
(ん?これは...どういう状況?)
一人頭がパニックになっていると教室の外から声が聞こえた。
「あれ。砂山くんさっきこっちに来たと思ったんだけど」
「聞きたいことあったのにどこ行っちゃったんだろう?」
女子の声だ。きっとまた噂のことだろう。でも隠れる意味あったのかな?
「ね、ねぇ、悠?」
「しっ。静かに」
この状況について説明を求めようと思ったら悠が片手で僕の口を押さえてきた。
「一旦教室戻ってみる?」
「そうだね」
女子たちはもうどこかへ行ったみたいだ。すると僕の口から悠の手が離れた。
「悪い急に。でも今日ずっと女子から呼び出されてただろ?もしかしたら困ってないかなって思って」
だからわざわざ隠してくれたのか。本当に悠は優しいな。
「ありがとう。確かに少し疲れてたから助かったよ」
「何話してたの?まさか告白...?」
「そんなわけないでしょ!ただ少し相談に乗ってあげてただけ?」
「なら良いけど...」
そういう悠は少し拗ねたような顔をしてるように見えた。
『凪がモテると嫉妬するやつもいるけど』
まさかね...。悠が僕に嫉妬するわけ。
「お!二人とも帰ってきた。移動教室行こうぜ」
手伝いを終え教室へ戻るともう昼休みが終わりに迫った時間だった。
「そういえばさ。俺の友達が最近彼女出来たらしくてずっと惚気話聞かされてまじでうざい」
3人で移動中啓太がそんな話をし始めた。
「彼女か〜。いいね幸せそうで」
「あっちはいいかもしんねぇけど、聞かさせるこっちの身にもなって欲しいよな。てか、凪も彼女とか欲しいんだ?」
「そりゃあね。だって自分だけの特別な人が出来るってだけで人生楽しくなりそうじゃん!憧れるよね!」
「まぁ確かに。てか凪って好きな子とかいんの?」
「それが聞いて!今まで出来たことないんだ!」
「そんな自慢げに言うことか?じゃあ凪に彼女が出来るのはまだまだ先か。出来たら教えろよ!」
「そうだね。出来たらね!」
そういえば悠さっきからずっと無言だな。そう思って悠の方を見ると目を逸らされた。
「凪も彼女とか欲しいんだ」
「うん!」
「そっか」
そう言う悠の顔はすごく辛そうで教室につくまで目が合うことがなかった。不思議に思いながらも何も聞くことが出来なかった。もしかしたら言いたくない事かもしれないし。
その日の帰り道ふと気になっていた事を悠に聞いていた。
「ねぇ。そういえば聞いた事なかったけど、悠モテるのになんで誰とも付き合わないの?もしかして好きな人がいるとか?」
「なんで急にそんな事?」
「えっと...それはその...」
今日の噂といい『そう思ってるのは凪だけかもよ』という啓太の言葉といい、いろいろ気になりすぎて少し探りを入れてみたかった。
「あ、ほら!誰かと付き合ってる事が分かれば妙な噂も流されなくて済むと思うし!それに悠の好きなタイプも純粋に気になる!」
「俺のタイプかぁ。別にないな」
「ないの?」
「うん。ありきたりだけど好きになった人がタイプ。好きな人はいるよ。ずっと片思いだけど...」
「え!悠好きな人いたの!初耳...。しかも片思いなんて。でも悠なら大丈夫だよ!自信もって!」
「ふっ。ありがとう。ねぇ、凪は俺に彼女が出来るの嫌?」
「え?嫌なわけないじゃん。嬉しいよ。悠が幸せになってくれるなら、僕応援するから!」
「...そっか」
あ、また悲しそうな顔。どうしてそんな顔するの?そんな顔させたい訳じゃないのに。
「でも、俺は嫌だよ。凪に彼女ができるの」
「え?それってどういう……」
「だって彼女が出来たらこうして一緒にいられなくなるだろ。友達としての独占欲、的な」
そう微笑む悠の笑顔はいつもよりぎこちなくて何かを隠しているように見えた。
「そういう事。それなら大丈夫だよ!当分彼女できる予定ないし。それに何があっても僕が悠から離れるなんてありえないよ!」
その言葉を聞いて悠は驚いていた様子だがすぐに安心したように微笑んでいた。そう、ありえるわけないんだ。僕が悠から離れる事も、僕たち二人が付き合う事も。
