夏休みに入り、俺はバイト、神星は部活に勤しむ日々が始まった。
普段に比べたら会える時間は減ったけど、夏休み前に決めた予定通り、週に二回くらいは一緒に昼ご飯を食べている。
正午頃に学校に行って、部活終わりの神星と合流して。
そのまま近くのファストフード店に行ったり、電車に乗ってショッピングモールに行ってみたり。
ご飯を食べた後は、課題を一緒にする日もあれば、ゲーセンで遊びまくる日もあった。
正直、俺の夏休み、めちゃくちゃ充実してる……!
神星との予定があるおかげで、バイトのやる気は爆上がりだし、家で一人のときだって課題に集中できるし。
好きな人の存在が、果てしないパワーに繋がるってこと、人生で初めて実感してる。
さて、そんな夏休み期間も、気づけばあと一週間を切っていた。
神星と遊ぶ予定も、明日が最後……つまり!
ついに……アレが来る。
そう、OTOMARI_____.
明日に向けて、俺は地道に準備をしてきた。
セットアップのおしゃれな部屋着を買い、スキンケアにより一層力を入れ、デートにピッタリ♡と噂の香水も手に入れた。
部屋着はともかく、外見や香りのブラッシュアップは、ミスターコンにも直結するしな!
そして、この一ヶ月弱、料理も練習したんだぜ。
普段も母さんが忙しいときは、たまに簡単なもの作ってるけど、神星に振る舞うとなれば、なんとなくで作るわけにはいかん。
神星には事前に、夕飯は任せとけ!と宣言して退路を断った。
結果、俺はこの夏休みで、最強のハンバーグ職人に成長を遂げたのだった……。
「えーまたハンバーグ?」
「兄ちゃん、さすがに飽きたよ」
「んなこと言うなよ!それに、今日で最後だから、な?」
弊害はこの通り、家族がみんなハンバーグに飽きてしまったことだ。
最初こそ喜んでくれたものの、二週間目あたりからは視線が冷たくなった。
母さんと父さんは気を遣って、後半も美味しいって食べてくれたけどね……。
付き合わせて悪かったなと思ってます。反省してます。
「でも、翠、すごく上達したんじゃない?」
「確かに、飽きたけど最初よりは美味しい!」
「うん、美味い!」
「みんなぁ……ありがとよ……」
家族からの温かい言葉を受けて、自信が一気に湧き出してきた。
きっと、これなら大丈夫。
神星に、美味しいハンバーグを作ってあげられる!
◇
◇
◇
「……よし!準備完了!」
着替えやスキンケアグッズなどを詰め込んだトートバッグ。
いつもはスクールバッグに付けているお揃いのキーホルダーも、忘れずにこっちに付け替えた。
明日の服も用意したし……これで、あとは寝るだけだ。
「って言っても、寝れるかな……」
とりあえずベッドに横になってみたけど、色んな緊張感のせいで全然眠くない。
……神星は、もう寝たのかな。
明日会うって分かってる。
もう寝なきゃって分かってる。
なのに……ほんの少しだけでいいから、話したくなってしまう。
『準備終わった』
『明日楽しみ』
『おやすみ』
それだけ送ってスマホの画面を暗くして、頭から布団をすっぽり被った。
ずっと心がジンジンしてるんだ、神星のことを考えてると。
ため息を吐くと幸せが逃げるとか言うけれど、俺は胸に渦巻くバカみたいに甘い熱を逃してるんだ。
そうしなきゃ、きっと、身体も心もおかしくなってしまうから。
ぎゅっと目を瞑っていたら、
「!」
ピコン、と音が鳴って、画面がふわりと光る。
『俺も楽しみだよ』
『おやすみ』
ああ、好き。大好きだな。
絵文字もない無機質なデジタルテキストに、体温すら感じてしまうなんて……どうしてくれるんだ、本当にさ。
砂糖漬けにされた心臓は、次第に緩やかなペースで拍動する。
やがて眠気で希釈された甘さに、ゆっくりと夢へ誘われた。
普段に比べたら会える時間は減ったけど、夏休み前に決めた予定通り、週に二回くらいは一緒に昼ご飯を食べている。
正午頃に学校に行って、部活終わりの神星と合流して。
そのまま近くのファストフード店に行ったり、電車に乗ってショッピングモールに行ってみたり。
ご飯を食べた後は、課題を一緒にする日もあれば、ゲーセンで遊びまくる日もあった。
正直、俺の夏休み、めちゃくちゃ充実してる……!
神星との予定があるおかげで、バイトのやる気は爆上がりだし、家で一人のときだって課題に集中できるし。
好きな人の存在が、果てしないパワーに繋がるってこと、人生で初めて実感してる。
さて、そんな夏休み期間も、気づけばあと一週間を切っていた。
神星と遊ぶ予定も、明日が最後……つまり!
ついに……アレが来る。
そう、OTOMARI_____.
明日に向けて、俺は地道に準備をしてきた。
セットアップのおしゃれな部屋着を買い、スキンケアにより一層力を入れ、デートにピッタリ♡と噂の香水も手に入れた。
部屋着はともかく、外見や香りのブラッシュアップは、ミスターコンにも直結するしな!
そして、この一ヶ月弱、料理も練習したんだぜ。
普段も母さんが忙しいときは、たまに簡単なもの作ってるけど、神星に振る舞うとなれば、なんとなくで作るわけにはいかん。
神星には事前に、夕飯は任せとけ!と宣言して退路を断った。
結果、俺はこの夏休みで、最強のハンバーグ職人に成長を遂げたのだった……。
「えーまたハンバーグ?」
「兄ちゃん、さすがに飽きたよ」
「んなこと言うなよ!それに、今日で最後だから、な?」
弊害はこの通り、家族がみんなハンバーグに飽きてしまったことだ。
最初こそ喜んでくれたものの、二週間目あたりからは視線が冷たくなった。
母さんと父さんは気を遣って、後半も美味しいって食べてくれたけどね……。
付き合わせて悪かったなと思ってます。反省してます。
「でも、翠、すごく上達したんじゃない?」
「確かに、飽きたけど最初よりは美味しい!」
「うん、美味い!」
「みんなぁ……ありがとよ……」
家族からの温かい言葉を受けて、自信が一気に湧き出してきた。
きっと、これなら大丈夫。
神星に、美味しいハンバーグを作ってあげられる!
◇
◇
◇
「……よし!準備完了!」
着替えやスキンケアグッズなどを詰め込んだトートバッグ。
いつもはスクールバッグに付けているお揃いのキーホルダーも、忘れずにこっちに付け替えた。
明日の服も用意したし……これで、あとは寝るだけだ。
「って言っても、寝れるかな……」
とりあえずベッドに横になってみたけど、色んな緊張感のせいで全然眠くない。
……神星は、もう寝たのかな。
明日会うって分かってる。
もう寝なきゃって分かってる。
なのに……ほんの少しだけでいいから、話したくなってしまう。
『準備終わった』
『明日楽しみ』
『おやすみ』
それだけ送ってスマホの画面を暗くして、頭から布団をすっぽり被った。
ずっと心がジンジンしてるんだ、神星のことを考えてると。
ため息を吐くと幸せが逃げるとか言うけれど、俺は胸に渦巻くバカみたいに甘い熱を逃してるんだ。
そうしなきゃ、きっと、身体も心もおかしくなってしまうから。
ぎゅっと目を瞑っていたら、
「!」
ピコン、と音が鳴って、画面がふわりと光る。
『俺も楽しみだよ』
『おやすみ』
ああ、好き。大好きだな。
絵文字もない無機質なデジタルテキストに、体温すら感じてしまうなんて……どうしてくれるんだ、本当にさ。
砂糖漬けにされた心臓は、次第に緩やかなペースで拍動する。
やがて眠気で希釈された甘さに、ゆっくりと夢へ誘われた。



