ゲーム世界の悪役貴族に転生した俺、最弱の【闇魔法】が実は最強だったので、破滅回避の為に死ぬ気で鍛えまくっていたら、どうやら鍛えすぎてしまったようです~なぜかメインイベントを俺がクリアしてしまうのだが~

 「うぉおおおお!!
 ――――――王家の赤い炎槍(ロイヤルファイアースピア)!!」

 デゴン次男は、わたしの放った炎の突きをギリギリで回避しようとするが、完全には避けきれずその左腕に直撃する。
 その衝撃で、後方へ吹っ飛ぶ魔族。

 「グガっ!―――あっちぃいい! 痛てぇええええ!」

 寸前で致命傷を避けたか。

 だが―――

 わたしは再度スピアを構える。

 全身の魔力をスピアに充填。

 腰を落として、足に力を入れる。


 致命傷を回避しようが同じこと。
 討ち果たすまで、何度でも攻撃するまでだ!


 「ヒャハハハ~~弟よ~~!!」

 三男に【超回復】とやらをかけてもらう気か?

 「ヒャハ? おい? なにやてんだ! そんな小娘さっさと始末しろよ!」

 無駄だ。ステラと戦っている以上、三男はおまえのサポートなどする暇はない。
 あの聖女をただの小娘だと思ったら、大間違いだ。


 「チッ、使えねぇ弟だなぁあ! なら~~おまえも痛みを共有しろやぁあああ~~
 ――――――悪魔損害共有魔法(デーモンダメージシェア)!」


 「ウグッ……これは……」

 左腕に強烈な痛みが走ると同時に、血がにじみ出してくる。


 「ヒャハハハ~~俺のダメージはおまえに共有されたぜぇええ! しかも倍返しだぁ~~さあさあ、こいよ! 自慢の突きを繰り出して来いよ~~すべて倍返しにしてやる、ヒャハハハ~~」


 ダメージを共有か……
 なるほど、こんな魔法は初めてだ。それにこいつらは様々な特殊能力を持っている。


 だが、それがどうしたというのだ。

 こいつらは上位魔族。人智を超えた存在だ。
 だから、いかなる想定外なことも起こり得る。

 ダメージを共有したから、わたしが攻撃を躊躇するとでも思ったのか?

 わたしはそれも織り込み済みで、この戦いに挑んでいるんだ。


 エリスの中に魔族が封印されていることを聞かされたのは、わたしが幼少の頃だ。

 ある日エリスは一緒に寝て欲しいと、わたしの手を握ってきた。
 寝ている時に、内なる悪魔が自分をいじめるのだと。

 わたしはエリスの小さな手をギュッと握り返して「わかった」と言った。
 目を輝かして、喜びを漏らすかわいい妹。

 それからというもの、私はエリスと一緒に寝るようになった。

 わたしが横にいると安心して眠るエリス。
 束の間の心地よい日々が続いた。

 そんな日々が少しばかり続いたのち。
 エリスがある日わたしに言ったんだ。

 「お姉さま、今日からわたくし一人で寝ますね」
 「ど、どうしたんだエリス! わたしのことが嫌いになったのか? そうか! 匂いか? 鍛錬後に汗をもっと流し落とせばいいんだな。よし、もう一回風呂に入っていくる!」
 「フフフ、違いますよ。わたくしお姉さまの匂いも、汗も大好きです」
 「んん? ではなぜだ?」
 「だって、わたくしもう子供じゃないんですよ。そろそろ一人で寝ないと。それに最近魔族の声が聞こえなくなりました。わたくしも成長しているんですよ」

 そう言って、エリスは小さな笑みをこぼした。

 その時は、エリスも大人に向かって成長しているのか? 魔族の声もいったんは収まったのだな。などと思って素直に引き下がった。

 が、1年後に真実を知ることになる。

 ある日エリスの部屋に入ろうとドアに手を掛けた時だった。偶然にもエリスと侍女の会話を聞いてしまったのだ。

 わたしの知るエリスの声とは違う、酷く怯えた声。
 盗み聞きするつもりはなかったが、わたしはその場から離れられなかった。そして、その真実を知って愕然とした。

 そう、エリスに巣食う魔族はその力をより強めていたのだ。

 毎日うなされ続ける夜をすごしていると……


 わたしはエリスが一緒に寝なくなった理由をようやく理解した。


 わたしがその苦しむ姿を見てしまうと、心配を掛けるから。
 そしてその苦しみが原因で、わたしがさらに無茶な鍛錬に没頭してしまうから。


 その日からわたしの心には一つの挫けないスピアが宿った。

 その日からわたしの鍛錬はさらに熱が入る。


 妹は絶対に守る。何があっても守ると。

 上位魔族の恐ろしさなんて、はじめからわかっている。

 それでも守ると決めたんだ。わたしに隠れて苦しむエリスを見て決めたんだ。

 この心のスピアは誰にも崩させない。



 だから魔族よ、いかなる攻撃を仕掛けてこようが――――――わたしの心は絶対にブレないぞ。



 「ヒャハハハ~~もう諦めろよ~~赤毛の女~~~そうだ~おまえも仲良くエリスと食ってやるよ~ヒャハハハ!!」

 諦めるだと?

 エリスとはずっと一緒だった。

 そして――――――

 これからも一緒でいるんだ!

 「ふぅう―――」

 わたしは深く息を吸い、己の精神を統一する。

 わたしの力のすべてを―――
 わたしの魔力のすべてを―――

 相棒のスピアに注ぎ込む。

 何度も放ってきた突きを放つために。

 動けなくなってもいい。一撃であの魔族を葬り去る最高の突きを繰り出す!
 ダメージを共有するというのならば、その前に消滅させればいいだけの話だ。


 ここで全力を出し切ってやる!


 「最大出力だぁあああ! うぉおおおおおおおお!!
 ―――――――――王家の赤い炎槍(ロイヤルファイアースピア)!!」


 赤い閃光が魔族の体を貫いた。そして王家の炎が魔族を焼き尽くしていく。


 「ヒャハぁああああ!! こ、こんな……小娘にいいぃぃ……ぃ」

 深紅の炎をまとった突きが、エリスを苦しめていた魔族を粉々にする。


 「―――おまえなんぞにエリスは渡さん!!」


 完全に塵と化したデゴン次男。

 ふぅ……やったぞ。エリス。


 この大一番で、全力を出し切る事ができた。

 まだ魔族は残っているが、まったく不安などない。

 わたしには頼りにできる奴が出来たからな。


 ――――――あとは任せたぞ、アビ。