わたしは祈るような気持ちで、バイト先のカフェに向かいました。
 今日は片桐くんといっしょの日。
 大丈夫、見えない恐怖におびえることなんかない。
 ずっとそんなふうに心の中で自分に言い聞かせていました。

 「末来、どうかしたのか……?」
 わたしの様子に片桐くんはすぐに気づいてくれました。
 わたしは思わず片桐くんにしがみついて、
「怖いの。わたしもいつか、殺されちゃうんじゃないかって――」
「殺されるって? なにをバカなことを。いったいどうしたんだよ」
「ニュース観てない? さいきん、わたしと似たひとが次々に遺体で見つかってるの。だから、そのうちわたしも……」
 片桐くんはわたしの頭にやさしく手を置いて、
「大丈夫、そんなの気のせいだよ。安心して、未来はひとりじゃないんだから」
 と、なぐさめてくれました。
「でも、このあいだ薫さんが片桐くんとは離れてって……。ひょっとして、このままいっしょにいると、あのひとがわたしを――」
「心配ない、言ったろ? 未来は僕の『運命のひと』なんだ。薫になんか邪魔はさせない、絶対に」
 片桐くんは力強くわたしを抱きしめました。
「ありがとう……」
 しだいに、わたしを苦しめていた恐怖は消え去り、沈んでいた顔に生気が満ちあふれてきました。
 愛するひとがいると、なんて心強くなれるんだろう。
 もう迷わない。たとえどんな困難が襲ってきても、わたしは彼のそばにいる。
 わたしはそう固く心に誓いました。