けれども、翌朝になっても彼からの連絡はありませんでした。
 メッセージも未読のまま。
 片桐くん、どうしたんだろう。スマホ見る余裕もないほど忙しいのかな。
それとも、まさかあの女のひとと何かトラブルがあったとか――!?
 わたしはずっと落ち着かないでいました。胸には不安がつのり、次から次へとよくない想像ばかりが浮かんできます。
 ですが、その日の午後。わたしの心を覆っていた暗い雲は、ようやく晴れわたりました。
「末来! ゴメン、すぐに駆けつけてやれなくて――」
 片桐くんが私の家に来てくれたのです。
 彼はそう言って頭を下げましたが、わたしは彼の姿を見るだけで充分でした。
「よかった、片桐くんが無事で……」
「末来のほうこそ。薫が店に来たんだって?」
「薫、さん?」
 あの女のひとのこと?
 片桐くんの横顔に暗い影がよぎります。
「薫とは、以前付き合ってたんだ」
 やっぱり……。いやな予感が当たりました。
「だけど、薫は僕の『運命のひと』じゃなかった。今はもう彼女には――なんの感情も抱いてないんだ」
 彼ははっきりとそう言いました。
「彼女はどうしてわたしにあんなメッセージを?」
「……おそらく、僕ときみに嫌がらせをしたいんだろう。僕が、運命のひとを探してることを彼女も知っているから、自分と似ているきみのことが許せないんだ」
 その言葉に思わず背筋がぞくりとしました。
「でも、信じてほしい。僕が今想っているのは、未来、きみだけだ。どんな手を使っても、薫の脅迫から絶対にきみを守ってみせるから」
「片桐くん……」
 その言葉でどんなに心が軽くなったでしょうか。
 わたしはほんとうにうれしかったんです。
 彼に大切に想ってもらえることが。
 彼の『運命のひと』としてそばにいられることが。