なにこれ……。
 衝撃で二の句が継げないでいるわたしの顔を無言で見すえて、彼女は店をあとにしました。
「末来ちゃん、どしたの? 具合悪い?」
 わたしに気づいた同僚の子が声をかけてくれました。
 そのときのわたしは、傍から見てもそうとうひどい顔色をしていたんでしょう。
「ちょっと……立ちくらみしたみたい」
「少し休んでたほうがいいよ。店長にはあたしから言っておくから」
「ごめんね」

 休憩室でも、わたしの震えはなかなかおさまりませんでした。
 あのひとは誰なの?
 片桐くんと離れろってどういうこと?
 運命のひとにならないで。さもないと、あなたに大きな災いがふりかかる、って……。
 あのひとは、わたしのことが邪魔なの? わたしをどうするつもりなの?
 片桐くん……!
 わたしは、すぐさまスマホで片桐くんに助けを求めようとしました。
 ですが、恐怖は指の先まで浸透し、うまく文字を打つことができません。
 やっとのことでメッセージを送信すると、ふっと全身の力が抜け、その場にうずくまってしまいました。
 結局その日、わたしの体調はもどらず、同僚の子に車で家まで送ってもらいました。
 片桐くんに送ったメッセージは「既読」になっていません。
 電話してみようかな? だけど、テスト勉強で忙しいとき邪魔になってもいけないよね。 
 不安は募るばかりですが、片桐くんからの連絡を待つことにしました。