十二月を迎え、街はすっかりクリスマスムード。
ふたたびカフェもにぎわうようになって、わたしは忙しいながらも充実した毎日を過ごしていました。
【ゴメン、末来。テストが重なったから、今日バイト休む】
スマホの画面。片桐くんからこんなメッセージ。
【もう、遊んでばっかいるからだよ。しっかり勉強してね】
【ありがとう。今ちょっとバタバタしてるけど、イヴはいっしょに過ごそう】
ふふっ、しょうがないなぁ。片桐くんの分まで頑張ろう。
ふたりでクリスマス過ごすの楽しみだな――。
と、はりきってバイトにはげんでいたときです。
「いらっしゃいませー」
入店してきたお客さんを、わたしはいつものように笑顔で迎えたのですが……。
「あ……」
目が合ったとたん、わたしたちは、お互い凍りつきました。
若い女性でした。年齢は二十代くらい。髪の毛は肩まで伸びた茶色のセミロング。
きゃしゃな体つきで、大きくはっきりとした茶色い目。
その表情はずいぶん疲労の色がにじみ出ていましたが、どことなく似ているのです。
わたしに――彼の言っていた運命のひとに。
「ブレンドコーヒーのホット……Sをひとつ。テイクアウトで」
彼女はささやくような声で告げました。
「かしこまりました」
わたしは動揺を悟られないよう、平静を装いながら応対しました。
「ありがとう」
彼女はそう言って、わたしのほうへスマホをかざします。
あれ、決済ならもう終わったのに……と画面をのぞきこんだ瞬間、わたしの目に飛びこんできたのは。
【もしあなたが実樹人と付き合っているなら、すぐに彼から離れなさい。ぜったいに彼の運命のひとにならないで。さもないと、あなたに大きな災いが降りかかる】



