それから、しばらくたった後のことです。
「なんか最近、ヒマですね」
夕方のこの時間、カフェの店内はいつもなら中高生のお客さんでにぎわっているのに、このところ来るひとはまばら。どうしちゃったんだろう。
「最近変な事件多いからねぇ」
店長が顔を曇らせました。
「物騒っていうと」
「末来ちゃん、知らない? 女の子が……」
「ああ――」
このごろ、この地域で十代~二十代の女の子が相次いで行方不明になっている、そんなニュースが報道されていました。
「事件なのか、単なる家出なのか分かんないけど、みんな警戒してんだろうな。未来ちゃんも気をつけてね」
「はい」
行方不明事件か――そう言われると、ひとりで帰るのちょっと怖いな。
でも、今日片桐くんバイト休みの日だし……。
どうしよう、甘えてるって思われるかもしれないけど、迎えに来てもらおうかな?
【あのね、片桐くん……】
「末来!」
私からのメッセージを見た片桐くんは、わたしのバイトが終わった後、すぐに駆けつけてくれました。
「ゴメンね、急に迎えに来てなんて頼んで」
すると、片桐くんは、
「いいよ。不安なときはいつでも頼ってくれていいから」
と穏やかな笑顔を浮かべました。その笑顔にどれだけ気持ちが軽くなったことでしょう。
冬の足音が間近に迫ってきた冷たい夜道を、わたしたちはしっかりと手をつないで歩きました。
空には、真珠のような小さな一番星がきらめいています。
「ねぇ、片桐くん」
「なに?」
わたしは、片桐くんにずっと気になっていたことをたずねました。
「どうして、わたしのこと好きになったの?」
片桐くんは、意外そうに片眉を上げて、
「どうしてって……?」
「だってわたし、特に美人ってわけでもないし、すごくいいところがあるわけでもないのに」
ほんとうにそう思っていました。子どものころから、とくに秀でたところもないわたしに、なぜ片桐くんはこんなによくしてくれるんだろうと、ずっと不思議だったんです。
片桐くんは、少しの間だまったあと、
「笑わないで聞いてくれるかな?」
と、わたしの顔を見つめました。
そして、こう言ったのです。
「僕は、運命のひとを信じてるんだ」
「なんか最近、ヒマですね」
夕方のこの時間、カフェの店内はいつもなら中高生のお客さんでにぎわっているのに、このところ来るひとはまばら。どうしちゃったんだろう。
「最近変な事件多いからねぇ」
店長が顔を曇らせました。
「物騒っていうと」
「末来ちゃん、知らない? 女の子が……」
「ああ――」
このごろ、この地域で十代~二十代の女の子が相次いで行方不明になっている、そんなニュースが報道されていました。
「事件なのか、単なる家出なのか分かんないけど、みんな警戒してんだろうな。未来ちゃんも気をつけてね」
「はい」
行方不明事件か――そう言われると、ひとりで帰るのちょっと怖いな。
でも、今日片桐くんバイト休みの日だし……。
どうしよう、甘えてるって思われるかもしれないけど、迎えに来てもらおうかな?
【あのね、片桐くん……】
「末来!」
私からのメッセージを見た片桐くんは、わたしのバイトが終わった後、すぐに駆けつけてくれました。
「ゴメンね、急に迎えに来てなんて頼んで」
すると、片桐くんは、
「いいよ。不安なときはいつでも頼ってくれていいから」
と穏やかな笑顔を浮かべました。その笑顔にどれだけ気持ちが軽くなったことでしょう。
冬の足音が間近に迫ってきた冷たい夜道を、わたしたちはしっかりと手をつないで歩きました。
空には、真珠のような小さな一番星がきらめいています。
「ねぇ、片桐くん」
「なに?」
わたしは、片桐くんにずっと気になっていたことをたずねました。
「どうして、わたしのこと好きになったの?」
片桐くんは、意外そうに片眉を上げて、
「どうしてって……?」
「だってわたし、特に美人ってわけでもないし、すごくいいところがあるわけでもないのに」
ほんとうにそう思っていました。子どものころから、とくに秀でたところもないわたしに、なぜ片桐くんはこんなによくしてくれるんだろうと、ずっと不思議だったんです。
片桐くんは、少しの間だまったあと、
「笑わないで聞いてくれるかな?」
と、わたしの顔を見つめました。
そして、こう言ったのです。
「僕は、運命のひとを信じてるんだ」



