――わたしは誤ったことをしたのでしょうか。
 もうすぐ、わたしも、他のひとたちと同じように見るも無残な遺体となって、うち棄てられてしまうのでしょうか。

 いいえ、片桐くんがそんなことをするはずがありません。
 だって、だってあんなに言ってくれたんです。
「末来こそが『運命のひと』だ」
 と。
 だから、こうして、彼への気持ちを形に残すことに決めたんです。
 もう、彼のことを、悪く言うひとがひとりもいなくなるように。

 彼はいつも優しい笑みを浮かべて、どんなときもわたしを守ってくれて。
 大切な花を育てるかのように、惜しみなく愛を注いでくれています。
 わたしが、わたしこそが彼の運命のひとなんです。
 今までのまがいものの彼女とはちがいます。
 彼が……片桐くんがウソを言うはずがないんです。わたし……わたしこそが本物。
 そう。そうに、決まってるんです! あんな粗悪なニセモノたちとはちがいます!!

 わたしは彼を信じています……信じています……信じています!!!


 ……頭が、ぼうっとする。

 だけど、一時的な、ものでしょう。

 わたしは、今から、こうして、深い、眠りについて、ゆっくりと……夜が、明けるのを、待っています。

 そして、黄金色の朝の光が、差しこんできて、わたしは、彼の、口づけで、目覚める、んです。
 晴れやかな、わたしの、顔を見て、彼は、きっと、心の底から、喜んでくれるに、ちがい、あり、ません。

 
 
 あ……あ、たの、しみです。
 朝が来るのが 待ち ど おし い。

 わた
 し こそが

 か れの
 うん め
 いの

 ひと 
 なの だ
 から――。

【以上、警察が発見した神庭 末来のスマートフォンに残された音声メッセージより】


終わり